一人親方が人を使ったときの支払い|雇うなら毎月の期日、頼むなら書面で決めます

自分の現場が詰まって、知り合いの職人に2日だけ手伝ってもらった。帰り際に「元請けから入ったら払うから」と言って別れる。元請けの支払いは翌々月末なので、相手の手元にお金が届くのは2か月以上先です。言った本人は普通のことだと思っていますが、相手が雇った人なのか、仕事を頼んだ職人なのかで、この一言が通るかどうかは法律の上でまったく違います。

結論からお伝えすると、人を使ったときの支払いは「雇ったのか、請負で頼んだのか」で決まるルールが別です。雇ったなら賃金なので、毎月1回以上、決まった期日に、通貨で、直接、全額を払います(労働基準法24条)。元請けの入金を待つ理由にはなりません。請負で頼んだなら、支払いの時期と方法を契約の書面に書く決まりがあり(建設業法19条1項)、何も決めていなければ民法633条のとおり「仕事の目的物の引渡しと同時」が支払いの時期です。

雇ったなら、賃金の決まりに従う

日当を決めて、自分の指示で作業してもらう形なら、それは雇用です。労働基準法24条は、賃金について次のことを決めています。

  • 通貨で、直接労働者に、その全額を支払う(1項)
  • 毎月1回以上、一定の期日を定めて支払う(2項)
  • 銀行振込で払うには、本人の同意が要る(労働基準法施行規則7条の2)

「元請けから入ったら払う」は、期日が相手の入金に左右されるので「一定の期日」になりません。雇うなら、締め日と支払日を先に決めて伝えます。締め日と支払日の関係は職人の給料はなぜ翌月払いなのかに書いています。人を初めて雇うときに出す届は一人親方が初めて人を雇うときを見てください。

一人親方が人を使ったときの払い方5点(雇えば賃金の決まり・振込は同意・頼めば時期を書面に・決めなければ引渡し時・許可業者は受取から1か月)

請負で頼んだら、いつまでに払えばいいのか?

相手も一人親方で、仕事の完成を請け負ってもらう形なら、請負です。ここは3つの条文を順に見ます。

1. まず書面に書く

建設業法19条1項は、建設工事の請負契約の当事者に、契約のときに決まった事項を書面に書いて署名か記名押印をし、交付し合うよう求めています。その中に、前金払や出来形部分に対する支払いを決めるならその時期と方法(5号)と、工事完成後の請負代金の支払いの時期と方法(12号)があります。この条文は「当事者」に向けたもので、建設業の許可があるかどうかを問いません。頼む側に立ったら、あなたも書く側です。

2. 何も決めていなければ、引き渡しと同時

支払いの時期を決めずに頼んだら、民法633条が効きます。「報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない」。つまり、口約束で「入ったら払う」と言っただけでは、相手は仕上げて引き渡した時点で払ってくれと言えるということです。元請けの入金に合わせたいなら、それを書面で約束しておく必要があります。

3. 許可のある建設業者なら、受け取ってから1か月以内

建設業法24条の3第1項は、元請負人が注文者から出来形部分や完成後の支払いを受けたら、その下請負人に、受け取った日から「一月以内で、かつ、できる限り短い期間内」に払うよう定めています。同条2項は、そのうち労務費に当たる部分を現金で払うよう適切な配慮を求めています。

ただし、この法律でいう「元請負人」は、下請契約の注文者で「建設業者」であるもの、つまり建設業の許可を受けた人です(建設業法2条3項・5項)。許可のない一人親方が頼む場合、24条の3がそのままかかるわけではありません。その代わり、上の2の民法633条がそのまま残ります。許可がないほうが、書面で決めておかないと支払いは早くなるという関係です。

支払いは、この順番で決める

  1. 雇うのか頼むのかを先に決める。日当で自分が指示するなら雇用、完成を任せるなら請負。形が混ざると両方の決まりにかかります
  2. 雇うなら、締め日と支払日を伝える。元請けの入金とは切り離して、毎月の決まった日に払う
  3. 頼むなら、支払いの時期と方法を書面に書く。「元請けからの入金の翌日から◯日以内に振込」のように、日付が決まる書き方にする
  4. 振込手数料をどちらが持つかも書く。書いていないのに差し引くと揉めます。差し引きの話は一人親方が請求額から引かれる4つで扱っています
  5. 自分の資金繰りに入れる。元請けの入金より先に払う月が来るなら、その分を残高に見ておく
人を雇う場合と請負で頼む場合の支払いの決まりのちがい

都合の悪いことも書いておきます

まとめ

  • 雇ったら賃金。毎月1回以上・一定の期日に、通貨で、直接、全額(労働基準法24条)。元請けの入金待ちは理由にならない
  • 請負で頼んだら、支払いの時期と方法を書面に書く(建設業法19条1項5号・12号)。許可の有無を問わない
  • 決めていなければ、引き渡しと同時に払う(民法633条)
  • 「受け取ってから1か月以内」(建設業法24条の3)は、許可を受けた建設業者が元請負人のときの決まり

人に手伝ってもらったとき、支払いをどう決めているか。仕事を頼みたい人の掲示板で共有してもらえると、頼む側・頼まれる側の両方の材料になります。

※ 本文の条文は2026年9月27日時点の e-Gov 法令検索で確認しています。

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