一人親方の確定申告は12月に準備する|控除は「12月31日までに払った分」で決まります
2月の夜、作業着のまま段ボール箱をひっくり返す。1年分の領収書とレシートが床に広がり、材料屋の納品書とガソリンの感熱紙と病院の領収書が混ざっている。去年の12月に何を払ったかを思い出そうとしても、通帳をさかのぼるしかありません。申告の期限まで残りは数週間です。
結論からお伝えすると、確定申告の準備を12月に始める理由は、年が明けると動かせなくなる数字がいくつもあるからです。社会保険料控除(所得税法74条)、小規模企業共済等掛金控除(75条)、医療費控除(73条)、寄附金控除(78条)は、どれも「その年中に支払った金額」で数えます。材料の在庫は12月31日に持っているもので計算します(47条)。申告そのものは翌年の2月16日から3月15日までですが(120条1項)、中身は12月31日で締まります。
12月31日で締まる4つの控除
- 社会保険料控除:自分や生計を一にする家族の社会保険料を支払ったとき、その支払った金額を差し引く(74条1項)。国民年金・国民健康保険・建設国保の保険料がここに入ります
- 小規模企業共済等掛金控除:小規模企業共済や個人型の確定拠出年金の掛金を支払ったとき、その支払った金額を差し引く(75条)
- 医療費控除:その年中に支払った医療費が、所得の5%(10万円を超えるときは10万円)を超えたとき、その超えた部分を差し引く。上限は200万円(73条1項)
- 寄附金控除:その年中に支出した特定寄附金の合計(所得の40%まで)が2,000円を超えたとき、その超えた部分を差し引く(78条1項)
共通しているのは「支払った」「支出した」という言葉です。12月に届いた国保の納付書を1月に払えば、その分は来年の控除になります。医療費も、12月に治療を受けて1月に窓口で払えば来年の分です。12月のうちに「今年払ったもの」と「来年に回るもの」を分けておくと、1月に通帳をさかのぼらずに済みます。
国民年金の備えについては一人親方の年金と将来の備えにまとめています。

12月31日の在庫を数える
所得税法47条は、事業所得の計算で必要経費に入れる売上原価の基礎を、その年12月31日に持っている棚卸資産で計算すると定めています。年末に材料屋でまとめ買いしたクロスやパテが、現場に使われずに倉庫や車に残っていれば、それは今年の経費ではなく在庫です。
どこまでを在庫として数えるか、刃やローラーのような消耗品の扱いは一人親方の刃・ローラー・パテはいつ経費になるかで扱っています。数えるのは31日なので、仕事納めの日に車の荷台と倉庫の写真を撮っておくと、あとで数え直せます。
12月に終わった工事は、今年の売上になるのか?
なります。請負の収入は、完成して引き渡した日に計上するのが原則です。12月25日に引き渡した工事の代金が翌年2月に振り込まれても、今年の売上です。入金の日で数えていると、申告の売上が通帳より少なく出ます。この考え方と資金繰りへの影響は一人親方が独立1年目に作る資金繰り表に書いています。
12月にやることは、この順番で
- 12月に引き渡した工事を書き出す。請求書を出したか、入金はいつかを1行ずつ。未入金でも今年の売上に入れる
- 保険料と掛金の払込額を確かめる。国民年金・国保・共済の、今年支払った分を通帳か領収書で合計する
- 医療費の領収書を1つの封筒にまとめる。家族の分も一緒に。合計が所得の5%か10万円を超えそうか見ておく
- 31日に在庫を数える。材料の残りを写真と数量で残す
- 経費の領収書を月ごとに分ける。保存のしかたは一人親方の領収書とインボイスの保存を見てください
- 年の途中で買った車や工具の、使い始めた日を書き留める。償却費は使い始めた月から月数で計算するので、日付がないと計算できません

都合の悪いことも書いておきます
- 12月に慌てて道具を買っても、手元のお金はその分減ります。10万円以上の道具は1年で経費にならないこともあります(一人親方の車と工具はいつ経費になるか)。税金を減らすために要らない物を買うのは、順番が逆です
- 国民年金を前納したとき、医療費を補てんする保険金が出たときなど、扱いが分かれるものがあります。青色申告の控除額の条件も年によって見直されます。自分の場合は税務署か税理士に確認してください
- 経費にできるものの考え方は一人親方の確定申告|経費にできるものにまとめています
まとめ
- 社会保険料・共済掛金・医療費・寄附金の控除は「その年中に支払った金額」で数える(所得税法73条・74条・75条・78条)
- 材料の在庫は12月31日に持っているもので計算する(47条)
- 12月に引き渡した工事は、入金が翌年でも今年の売上
- 申告は翌年2月16日〜3月15日(120条1項)。中身は12月31日で締まるので、準備は12月に始める
毎年どの時期に申告の準備をしているか、相談・雑談の掲示板に書いてもらえると、初めて申告する人の参考になります。
※ 本文の条文は2026年9月27日時点の e-Gov 法令検索で確認しています。


