一人親方が独立1年目に作る資金繰り表|売上は入金日ではなく引き渡した日に立ちます

12月25日、独立して最初の年に取った一番大きい現場が終わった。請求額は38万円。元請けの締めは月末、支払いは翌月末。通帳を見ると残高は12万円で、1月末までに国民年金と材料屋の掛けと車のローンが落ちる。帳簿の上では「今年の売上は順調」なのに、財布は1月に底をつく。

結論からお伝えすると、資金繰り表は「売上の月」と「入金の月」を別の列に書くところから作ります。国税庁の所得税基本通達36-8(4)は、物の引渡しを要する請負の収入は「その目的物の全部を完成して相手方に引き渡した日」に計上するとしています。入金の日ではありません。12月25日に引き渡した38万円は、入金が翌年でも今年の売上です。帳簿と通帳がずれるのは当たり前で、そのずれを月ごとに見えるようにするのが資金繰り表の役目です。

請負の売上は引き渡した日に立ち、入金日は元請けとの約束と建設業法の上限で決まることを示した図

売上は、いつの日付で立つのか

通達36-8(4)のただし書きには、同種の工事をまとめて請け負い、引き渡した量に応じて代金を受け取る特約や慣習がある場合、または1つの工事でも完成した部分を引き渡すたびに代金を受け取る特約や慣習がある場合は、その部分を引き渡した日でよい、とあります。

では「引き渡した日」はいつか。通達36-8の3は、建設工事等については、例えば作業を結了した日、相手方が検収を完了した日、相手方が使用収益できることになった日など、合理的と認められる日のうち、その人が継続して計上している日による、としています。一人親方なら「作業が終わった日」か「元請けの検収が終わった日」のどちらかに決めて、毎年同じ扱いにするのが一般的です。

入金の日は、何で決まるのか?

入金の日は、元請けとの約束(締め日と支払日)で決まります。法律が置いているのは上限です。

  • 建設業法24条の3第1項:元請けは、注文者から出来形部分や完成後の支払いを受けたら、その日から「一月以内で、かつ、できる限り短い期間内」に下請けへ払う
  • 建設業法24条の6第1項:元請けが特定建設業者の場合、下請代金の支払期日は、完成を確認したあと引渡しの申出をした日から起算して50日を経過する日以前に定める

支払いの時期を交渉する話は一人親方が前払金と出来高払いを交渉するときに書いています。資金繰り表では、交渉の前にまず「今の約束だと何日に入るか」をそのまま書き込みます。

表は、この順番で作る

  1. 横に12か月を並べる。1年目は開業した月から
  2. 1行目に前月の残高。通帳の実際の数字から始める
  3. 入金は現場ごとに1行ずつ。「引き渡した月」の欄に金額を小さく書き、「入る月」の欄に同じ金額を書く。前者が帳簿の売上、後者がお金です
  4. 出金は3つに分ける。毎月同じ額(家賃・車・携帯)、現場で変わる額(材料・ガソリン・駐車場)、決まった月に来る額(税・保険)
  5. 最後の行に月末の残高。ここがマイナスになる月が、先に手を打つ月です

決まった月に来る出金の代表が国民年金で、国民年金法91条は「毎月の保険料は、翌月末日までに納付しなければならない」としています。住民税や国民健康保険がいつ来るかは一人親方が独立1年目に払うお金のカレンダーに並べてあるので、その月をそのまま写してください。

1年目に表が効く場面

いちばん効くのは、年末に大きい現場が終わる年です。売上は今年に立つので確定申告の所得は増え、入金は翌年に入ります。申告の数字だけを見て「今年は余裕がある」と判断すると、1月の残高で足りなくなります。最初の入金までの3か月の動き方は一人親方として独立した最初の3か月をどう乗り切るかにまとめています。

一人親方の資金繰り表を作る5つの手順

都合の悪いことも書いておきます

  • 資金繰り表は予定表です。元請けの支払いが1週間遅れれば、その月の残高はそのままずれます。予定より遅れたときの動き方は一人親方が支払いの遅い元請けに動く順番を見てください
  • 入金と支払いの日付だけで申告できる「現金主義」という仕組みもありますが、使える人に条件があります。詳しくは一人親方が帳簿づけを月1時間で終わらせるで扱っています。自分がどちらで計上するかは、税務署か税理士に確認してください
  • 引き渡しの日をどれにするかは、毎年同じ扱いにすることが前提です。年ごとに都合のよい日を選ぶことはできません

まとめ

  • 請負の売上は、完成して引き渡した日に立つ(所得税基本通達36-8(4))
  • 建設工事の「引き渡した日」は、合理的な日のうち毎年同じものを使う(通達36-8の3)
  • 入金の上限は、元請けが受け取ってから1か月以内(建設業法24条の3)、特定建設業者なら引渡しの申出から50日以内(24条の6)
  • 資金繰り表は「売上の月」と「入る月」を分けて書き、月末残高がマイナスになる月を先に見つける

自分の資金繰り表でいちばん苦しかった月はいつだったか。相談・雑談の掲示板に書き残してもらえると、これから独立する人の材料になります。

※ 本文の条文は2026年9月26日時点の e-Gov 法令検索で、通達は国税庁「所得税基本通達 第36条・第37条共通関係」(同日確認)で確認しています。

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