職人チームを作るときのメンバーの選び方|人を出す形にすると、呼んだ側も罰せられます

結論からお伝えすると、チームのメンバーを選ぶ基準は、腕の良し悪しの前に「その人が請負として入れる形かどうか」です。職業安定法施行規則4条2項が4つの条件を並べていて、これを全部満たさない形で人を入れると、契約書に「請負」と書いてあっても法律は労働者供給として扱います。

そして罰せられるのは、送り出した側だけではありません。職業安定法44条は「供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない」と、受け入れた側も名指ししています。

まず、建設業には「派遣」という逃げ道がない

人が足りないとき、他業種なら派遣という選択肢があります。建設にはありません。労働者派遣法4条1項2号が、派遣事業を行ってはならない業務として「建設業務(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務をいう。)」を挙げています。

同条3項は受け入れ側も縛っていて、「労働者派遣の役務の提供を受ける者は、その指揮命令の下に当該労働者派遣に係る派遣労働者を第一項各号のいずれかに該当する業務に従事させてはならない」。罰則は59条1号の1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。

だから建設で人を増やす道は、条文の上では自分で雇うか、請負で頼むかの2本しかありません。この前提を外すと、以下の話が全部ずれます。

請負になる4つ。職業安定法施行規則4条2項が定める完成の責任、指示を出すこと、雇う側の決まりを負うこと、体だけを出すのではないことを並べた図

請負として認められる4つの条件

職業安定法施行規則4条2項は、こう書き出します。「労働者を提供しこれを他人の指揮命令を受けて労働に従事させる者は、たとえその契約の形式が請負契約であつても、次の各号の全てに該当する場合を除き、法第四条第八項の規定による労働者供給の事業を行う者とする。」

  1. 作業の完成について事業主としての財政上及び法律上の全ての責任を負うものであること
  2. 作業に従事する労働者を、指揮監督するものであること
  3. 作業に従事する労働者に対し、使用者として法律に規定された全ての義務を負うものであること
  4. 自ら提供する機械、設備、器材(業務上必要なる簡易な工具を除く)もしくは材料、資材を使用し、または企画もしくは専門的な技術もしくは専門的な経験を必要とする作業を行うものであって、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと

4号の最後の一文が、職人の世界にそのまま刺さります。「単に肉体的な労働力を提供するもの」は請負にならない。手だけを出す形、頭数だけを合わせる形は、条文が名指しで請負から外しています。

そして3項が逃げ道を閉じています。4つを満たしていても、「それが法第四十四条の規定に違反することを免れるため故意に偽装されたものであつて、その事業の真の目的が労働力の供給にあるとき」は、やはり労働者供給だとされます。4項と5項は、「個人、団体、法人又はその他いかなる名称形式であるとを問わない」と念を押しています。一人親方だから対象外、という読み方はできません。

違反したときに誰が罰せられるか

職業安定法44条は「何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない」。罰則は64条10号で1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。

読み落としやすいのは「又は」から後ろです。人を集めて送り出す側だけでなく、集まった人を自分の指揮命令で働かせた側も、同じ条文で禁止されています。チームの頭になるということは、この後ろ半分の位置に自分が立つということです。

なお45条は例外を1つだけ置いています。「労働組合等が、厚生労働大臣の許可を受けた場合は、無料の労働者供給事業を行うことができる」。許可を受けた労働組合が無料で行う形だけが合法で、手数料を取る形は組合でもできません。有料の職業紹介そのものが建設業務で禁じられている点は一人親方が使う仕事サイトと求人サイトの違い|建設の有料職業紹介は条文で禁止されていますで扱いました。

使える形と使えない形。自分で雇うか請負で頼むかの2つに対し、建設業務への派遣と人だけを出す形が禁止されていることを左右で比べた図

4つの条件を、人選の質問に置き換える

条文のままでは現場で使えないので、声をかける段階で確かめられる形に直します。

  • 段取りを自分で決められる人か(2号・4号)。毎朝こちらが割り振らないと動けない人は、条文上は請負の形になりません。雇う前提で考える相手です
  • 道具を自分で持ってくるか(4号)。ただし条文は「業務上必要なる簡易な工具を除く」と書いています。インパクトとカッターを持ってくるだけでは4号を満たしません。機械や設備、あるいは材料資材、もしくは専門的な技術・経験のどれかが要ります
  • 仕上がりの責任を負う気があるか(1号)。手直しが出たときに「言われたとおりにやっただけ」と返る相手は、財政上の責任を負っていません
  • その人が誰かを連れてくるなら、その誰かの使用者は誰か(3号)。連れてきた人の社会保険や労災を誰が見るのかが決まっていないと、3号で落ちます

この4つで見ると、選ぶべきなのは「腕がいい人」ではなく「一件を任せられる人」だと分かります。腕は同じでも、任せられる単位が違えば入れ方が変わります。

常用と応援は、どちらの箱に入るのか

日当でその日だけ入ってもらう形は、4号の「単に肉体的な労働力を提供する」に近づきます。ここを整理せずに続けると、人数が増えたときにまとめて問題になります。

実務的な逃げ方は2つです。ひとつは、工区や部屋を切って「この範囲を仕上げる」という単位で出すこと。完成の責任と段取りが相手側へ移り、1号と2号が立ちます。もうひとつは、素直に雇うことです。拘束時間と残業の扱いは一人親方が常用で入るときの拘束時間と残業|9月1日から監督署の指導が変わるに、雇う側に回ったときの最初の手続きは一人親方が初めて人を雇うとき|10日以内に出す届が2つあるにまとめています。

人の探し方そのものは急に人手が足りないとき、応援職人を最短で見つける方法で扱っています。探すのが先ではなく、入れる形を決めるのが先です。形が決まっていれば、声をかけるときの一言も変わります。「明日1人ください」ではなく「2階の3部屋、クロスまでお願いできますか」。この言い換えが、そのまま条文の要件を満たす方向へ動きます。

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