職人の電動工具の手入れと寿命の見極め|替え時は省令の点検項目で決まります

朝8時、搬入を終えて最初の作業。ディスクグラインダーの砥石が薄くなっていたので、新品に替えてそのまま鉄の端材に当てる。いつもの手順です。ところが労働安全衛生規則には、砥石を替えたら「3分間以上」試運転をしろ、と分単位で書いてあります。替えた直後の砥石は、割れていれば回し始めに飛ぶからです。

結論からお伝えすると、電動工具の手入れと寿命の見極めは、労働安全衛生規則が事業者に求めている点検の項目を、自分の道具にそのまま当てはめると決まります。砥石なら覆い・試運転・最高使用周速度・側面を使わないの4つ(117条〜120条)、電気で動く工具なら漏電しゃ断装置・二重絶縁・使う前の点検(333条・334条・352条)です。「まだ使えそう」という感覚ではなく、この項目に1つでも引っかかったら手入れか交換、と決めておくと迷いません。

砥石は、4つの条文で見る

  • 覆い:回っている砥石が危ないときは覆いを付ける。直径50ミリ未満の砥石は除く(117条)。覆いを外したまま使っているなら、まずそこを戻します
  • 試運転:その日の作業を始める前に1分間以上、砥石を替えたときは3分間以上(118条)
  • 最高使用周速度:砥石に表示されている最高使用周速度を超えて使わない(119条)。回転数の高い機械に、低い速度の砥石を付けないということです
  • 側面:側面を使う目的の砥石以外は、側面を使わない(120条)

ここから寿命の見極めが出てきます。表示が擦れて最高使用周速度が読めない砥石は、119条を確かめようがないので使いません。側面を当て続けて片減りした砥石は、120条の使い方をしてきた結果なので替え時です。落とした砥石やひびの入った砥石を使わないのは、一般的な扱いとして現場で共有されていることですが、118条の試運転はそれを確かめる場でもあります。

なお、人に雇われて砥石の取替えや取替え時の試運転をする見習いは、事前に特別教育を受けることになっています(36条1号)。見習いのうちに覚える安全のルールは見習いが先に覚える安全のルールにまとめています。

電動工具の替え時を見る5点(覆い・毎朝の試運転・砥石の表示・側面を使わない・しゃ断器の試験)

電気で動く工具は、何を見ればいいのか?

丸のこ・インパクト・ハンマードリルなど、コードで電気をとる工具は、感電の条文で見ます。

  • 漏電しゃ断装置:対地電圧150ボルトを超える移動式・可搬式の電動工具、または水で濡れている場所や鉄骨の上などで使う移動式・可搬式の電動工具は、感電防止用の漏電しゃ断装置をつないだ電路で使う(333条1項)
  • 二重絶縁は除外:電気用品安全法の特定電気用品で、表示が付いた二重絶縁構造の工具には、333条はかからない(334条3号)。四角が二重になった印がそれです
  • 使う前の点検:その日の使用を始める前に、漏電しゃ断装置は作動状態を、濡れた場所で使う延長コードなどの移動電線は被覆や外装の損傷の有無を点検し、異常があればすぐ直すか取り替える(352条・337条)。乾いた場所でも、人が触れる配線や移動電線は、被覆の損傷や老化で感電しないようにする決まりがあります(336条)

寿命の見極めに直すと、こうなります。延長コードの被覆が破れて中の線が見えていたら、テープで巻いて使い続けずに取り替える。漏電しゃ断器は、テストボタンを押して落ちなければ使わない。二重絶縁の印が付いていない古い工具を濡れた場所で使うなら、漏電しゃ断器を必ず間に入れる。どれも「壊れるまで使う」の反対側にある判断です。

充電式の工具のバッテリーは、別の話になります。互換品の扱いが変わった件は職人が電動工具のバッテリーでメーカーを揃えるかを見てください。

毎朝の手入れは、この順番で

  1. コードと延長コードの被覆を手でなぞる。破れ・つぶれ・プラグの根元の割れを見る
  2. 漏電しゃ断器のテストボタンを押す。落ちることを確かめてから戻す
  3. 砥石と刃の表示を見る。最高使用周速度が読めるか、機械の回転数に合っているか
  4. 砥石は1分回す。替えた日は3分。回している間は正面に立たない
  5. 引っかかった道具は、その日は使わない。現場で直せないものは持ち帰る
毎朝の点検で電動工具を使い続けてよい場合とその日は使わない場合を分けた図

都合の悪いことも書いておきます

  • ここで挙げた条文の宛先は「事業者」です。人を1人でも雇えば、あなたが守る義務そのものになります。一人で作業している一人親方にそのまま罰則がかかる書き方ではありませんが、点検の中身は自分の身を守るのにそのまま使えます
  • いちばん確かなのは、その工具の取扱説明書です。刃や砥石の交換の目安、使ってはいけない条件はメーカーごとに書かれています
  • 税金の上の耐用年数と、道具が実際に使える年数は別物です。経費の話は一人親方の車と工具はいつ経費になるかで扱っています

まとめ

  • 砥石は覆い・試運転(毎日1分、交換時3分)・最高使用周速度・側面使用の禁止で見る(労働安全衛生規則117条〜120条)
  • 電気で動く工具は、漏電しゃ断装置と二重絶縁、使う前の点検で見る(333条・334条・352条)
  • 表示が読めない砥石、被覆の破れたコード、テストボタンで落ちないしゃ断器は、使い続けずに替える
  • 条文は事業者宛てだが、点検の項目は自分の道具の寿命を決める物差しになる

自分の道具で「ここを見たら替え時」と決めている点があれば、相談・雑談の掲示板で教えてください。

※ 本文の条文は2026年9月27日時点の e-Gov 法令検索で確認しています。

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