職人が電動工具のバッテリーでメーカーを揃えるか|互換品は2025年12月から売る側の扱いが変わった
現場の脚立の横に、色の違うバッテリーが3種類転がっている。インパクトはA社、丸ノコはB社、掃除機はC社。充電器も3台持ち歩いて、1本空になっても隣の工具のバッテリーは使えない。職人が「メーカーを揃えるか」を考えるのは、たいていこの場面からです。
結論からお伝えすると、メーカーを揃えるいちばんの理由はバッテリーと充電器を共用できることで、法律はどのメーカーを選べとも言っていません。ただ、揃えたあとに安い互換バッテリーへ手を伸ばすなら、知っておくことが2つあります。1つは、リチウムイオン蓄電池は電気用品安全法の対象で、PSEマークのない対象品は売ってはいけないこと。もう1つは、2025年12月25日から、海外の業者がネット通販で日本の客に直接売る場合も「輸入」として扱われるようになったことです。この記事では、バッテリーを軸にメーカーを揃えるかどうかの判断材料を並べます。

メーカーを揃えると何が変わるのか
- バッテリーの本数が減る:工具が5台でも、バッテリーは2〜3本を回せば足りる
- 充電器が1台で済む:車の積み込みとコンセントの口が減る
- 空になっても隣から借りられる:同じメーカーの職人が現場にいれば、融通がきく
一方で、揃えることの弱みもあります。
- ある工具だけ別メーカーのほうが優れていても、選びにくくなる
- メーカーが電圧の規格を変えると、手持ちが古い側に取り残される
- 純正バッテリーは1本あたりの値段が高い
判断の目安は、毎日使う工具が何台あるかです。2台までならメーカーがばらばらでも困りません。3台を超えたあたりから、バッテリーと充電器の数が効いてきます。道具を買うか借りるかの損益分岐は一人親方の道具は買うか借りるか|レンタルに法律の網がかかる7種類と、分かれ目の計算で計算しています。
互換バッテリーは、法律上どう扱われるのか
電気用品安全法2条1項3号は「蓄電池であつて、政令で定めるもの」を電気用品にしています。その政令(電気用品安全法施行令の別表第二)の12号が、次のリチウムイオン蓄電池です。
「リチウムイオン蓄電池(単電池一個当たりの体積エネルギー密度が四〇〇ワット時毎リットル以上のものに限り、自動車用、原動機付自転車用、医療用機械器具用及び産業用機械器具用のものを除く。)」
対象になる電気用品は、PSEマーク(法10条の表示)が付いていなければ、製造・輸入・販売の事業者は売ることも陳列することもできません(法27条1項)。違反すると1年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金、または両方です(法57条3号)。
電動工具のバッテリーは「産業用」なのか
ここが分かりにくいところです。条文は「産業用機械器具用」を対象から外しています。経済産業省の「リチウムイオン蓄電池に関するFAQ」(2026年8月7日更新)は、電安法の対象外の産業用機械器具用と、対象の機械器具用に兼用される電池には、どちらの用途でもPSEマークを付けてよいとしています。
つまり、「PSEが付いていない=違法品」とも、「PSEが付いている=純正と同じ品質」とも言えません。PSEは届出事業者が技術基準への適合を確認したという表示で、工具との相性や、保護回路が純正と同じ動きをするかまでは示していません。
2025年12月25日から、海外の通販業者も「輸入」になった
消費生活用製品安全法等の一部を改正する法律(令和6年法律第67号)により、2025年12月25日から電気用品安全法が変わりました。
- 2条5項:外国にいる者が、日本に持ち込ませて一般消費者に引き取らせる行為も「輸入」に含む
- 3条2号:外国にいる輸入事業者(特定輸入事業者)は、日本国内の責任者(国内管理人)の氏名と住所を届け出る
- 2条3項:ネット通販の場(取引デジタルプラットフォーム)についての定めが置かれた
それまでは、海外の業者から個人がネットで直接買うと、「輸入したのは買った本人」という形になりやすく、業者側に届出や表示の義務がかかりにくい状態でした。いまは海外の業者側が輸入事業者として扱われます。互換バッテリーを選ぶときは、商品ページや本体にPSEマークと届出事業者の名前があるかを見るのが最低限です。
中古のバッテリーを買うときも同じ
同じFAQは、電安法の対象のリチウムイオン蓄電池を中古品として売る場合も、販売事業者は表示を確認する必要があるとしています。電安法の対象品であれば、リサイクルショップの店頭でPSEの表示が見当たらないバッテリーは、店の側が売れないはずのものです。
使い終わったバッテリーはどこへ出すか
リチウム蓄電池を含む密閉形蓄電池は、資源有効利用促進法の「指定再資源化製品」です(同法2条14項・施行令7条・別表第六)。作った・輸入した事業者が自主回収をする前提の製品で、電動工具はそれを部品に使う製品として別表第八に並んでいます。
この別表第六には、2026年4月1日施行の政令改正(令和7年政令第412号)で、リチウム蓄電池を使った電源装置(モバイルバッテリー)、携帯電話用装置、加熱式たばこデバイスが加わりました。回収の網は広がる方向にあります。
実務では、使い終わった純正バッテリーはメーカーや販売店の回収に出すのが確実です。互換品の販売元が回収の仕組みに入っているとは限らないので、買う前に確かめておくと処分で困りません。仕事で出たものの扱いは一人親方が出した廃材は誰のゴミか|自分で運べるのは4つの条件を満たすときだけも参考にしてください。

選ぶ順番
- 毎日使う工具を書き出す。3台を超えるならメーカーを揃える価値が出る
- いちばん出番の多い工具で、メーカーを決める。残りはそのメーカーの中から選ぶ
- 電圧を1つに絞る。同じメーカーでも電圧が違うとバッテリーは共用できない
- 互換品を使うなら、PSEマークと届出事業者名を確認する。メーカーの保証の扱いも先に読んでおく
- 回収先を決めておく。膨らんだり熱を持ったりしたバッテリーは使わずに、メーカーか販売店に扱いを相談する
まとめ
- メーカーを揃える理由は、バッテリーと充電器の共用。3台を超えたら効いてくる
- リチウムイオン蓄電池は電安法の対象。PSEのない対象品は売れない(法27条)
- 電動工具用は「産業用」との兼用があり、PSEの有無だけで良し悪しは決まらない
- 2025年12月25日から、海外の通販業者も輸入事業者として扱われる
最初に揃える道具の話は見習いのうちに揃える道具にもまとめています。どのメーカーを選んでいるか、ほかの職人の実際を聞きたいときは相談・雑談の掲示板をのぞいてみてください。


