職人同士で組んで仕事を受ける前の約束事|口約束でも組合になり、借りは連帯になります
現場帰りのコンビニの駐車場。同い年のクロス屋と床屋の2人が、缶コーヒーを片手に話している。「アパート1棟まるごとの原状回復、2人でやれば取れるよな」「取り分は半々でいいだろ」。決まったのはそれだけで、翌週には2人で見積を出していた。
結論からお伝えすると、2人以上がそれぞれ出資して共同の事業をすると約束すれば、紙がなくても民法の「組合契約」になり得ます。民法667条は、出資は労務でもよいとしています。職人が腕を持ち寄るだけで、条文の形にそのまま当てはまります。そして建設工事の請負を営業としてするのは商法上の商行為なので、2人で負った借りは、一般的には商法511条1項により各自が連帯して負うと考えられています。取り分より先に決めておくことがあります。
「一緒にやろう」は、どの条文に当たるのか
民法667条1項は「組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる」とし、2項で「出資は、労務をその目的とすることができる」としています。書面で交わすことは要件になっていません。
組合になると、民法にはあらかじめ決まりがあります。
- 決め方:組合の業務は組合員の過半数で決める(670条1項)。ただし日常の細かいこと(常務)は各自が単独でできる(同条5項)
- 取り分:損益分配の割合を決めていなければ、各組合員の出資の価額に応じて決まる(674条1項)
- お金:組合の財産は全員の共有になり(668条)、清算の前に分割を求めることはできない(676条3項)
- 中身を見る権利:業務を任せていても、各自が業務と財産の状況を検査できる(673条)
674条の「出資の価額に応じて」は、労務を出資したときに厄介になります。クロス屋の5日と床屋の3日、どちらの労務がいくらか、条文は答えてくれません。だから取り分は、先に数字で決めておくことになります。
借りは誰に請求されるのか?
民法675条2項は、組合の債権者は、各組合員に対して損失分担の割合か、等しい割合で権利を行使できる、としています。そのうえで、建設工事の請負は、営業としてするときは「作業又は労務の請負」として商行為に当たり(商法502条5号)、商法511条1項は、数人の者がその一人又は全員のために商行為となる行為で債務を負担したときは「各自が連帯して負担する」と定めています。
現場に置き換えると、相方が材料屋に作ったツケも、2人で借りた道具のレンタル代も、相手は自分に全額を請求できる、ということです。払ったあとで相方に負担分を求めることはできますが、相方が払えなければそこで止まります。

組む前に決めておく6つ
- 誰の名前で元請けと契約するか。1人が受けてもう1人に出すなら、それは組合ではなく下請けの形になる
- 取り分の割合。日数で割るのか、工種ごとの金額で割るのか
- 材料と道具の負担。誰が立て替え、いつ精算するか
- 入金の口座と精算日。どちらの口座に入り、何日以内に分けるか
- 手直しとケガのとき。手直しの費用を誰が持つか、労災の特別加入を各自がしているか
- 抜けるときの精算。民法678条1項は、期間を決めていなければいつでも脱退できるが、やむを得ない事由がなければ組合に不利な時期には脱退できない、としています。脱退の計算は、脱退の時の財産の状況で行う(681条1項)
1人が受けて丸ごともう1人に回す形は、建設業法22条の一括下請負の問題になります。こちらは一人親方がハウスメーカーの下請けに入る前にで扱っています。契約書なしで始まった工事の扱いは契約書を交わさずに受けた工事はどうなるかにまとめています。

都合の悪いことも書いておきます
- 組合になるかどうかは、名前ではなく実態で判断されます。2人の関係が組合なのか、元請けと下請けなのかを、この記事だけで決めることはできません。揉めそうなときは弁護士などの専門家に確認してください
- 人を出す形で組むと、労働者供給の問題が出ることがあります。職人チームを作るときのメンバーの選び方を読んでください
- 6つを決めても、紙に残さなければ後で言った言わないになります。LINEの文面でも構わないので、2人とも見られる形で残すのが一般的です
まとめ
- 腕を持ち寄って共同で仕事をする約束は、紙がなくても組合契約になり得る(民法667条)
- 取り分を決めていなければ出資の価額で決まる(674条1項)。労務の出資は数字にしにくいので先に決める
- 建設工事の請負は商行為で(商法502条5号)、2人で負った借りは連帯になる(商法511条1項)
- 脱退は不利な時期にはできず、精算は脱退の時の財産で行う(民法678条・681条)
仲間と組んで仕事をして、うまくいった決め方、揉めたところ。相談・雑談の掲示板に書き残してもらえると、これから組む人の材料になります。
※ 本文の条文は2026年9月26日時点の e-Gov 法令検索で確認しています。


