一人親方がハウスメーカーの下請けに入る前に|丸投げは受けた側も処分の対象です
請書に「内装仕上工事一式」と1行だけ書かれて届く。金額は悪くない。ところが着工の前日になって、自分は別の現場に行くことになり、この現場には知り合いの2人だけが入る——。こういう回し方をしたときに、条文の上で何が起きるのかという話です。
結論からお伝えすると、丸投げは、出した側だけでなく受けた側も禁止されています。しかも禁止の対象は「建設業を営む者」なので、建設業許可を持っていない一人親方も、そのまま対象に入ります。

建設業法22条は、2つの項で別々の人を縛っている
条文はこうなっています(e-Gov法令検索・2026年9月13日時点)。
- 22条1項:建設業者は、その請け負つた建設工事を、いかなる方法をもつてするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない
- 22条2項:建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負つた建設工事を一括して請け負つてはならない
1項が出す側、2項が受ける側です。国土交通省の通知「一括下請負の禁止について」(別紙2)は、この点をはっきり書いています。「同条第2項の禁止の対象となるのは、『建設業を営む者』であり、建設業の許可を受けていない者も対象となります」。
「丸投げは元請が悪い」で終わる話ではない、ということです。
許可がなくても、処分の条文が用意されている
建設業法28条1項4号は、22条1項または2項に違反したときを、指示処分の理由として名指ししています。指示に従わなければ、28条3項で1年以内の営業停止です。
許可を持っていない人はどうか。28条2項が、都道府県知事は「許可を受けないで建設業を営む者」にも必要な指示ができると定めていて、この場合も3項の営業停止につながります。許可の有無は、入口の話であって、免除の話ではありません。
発注者の承諾があれば外れるのか?
民間工事なら、22条3項で外れる場合があります。元請負人があらかじめ発注者の書面による承諾を得たときです。ただし「多数の者が利用する施設又は工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるもの」は除かれます。
ここで1つ、気をつけたいところがあります。この「政令で定めるもの」を建設業法施行令6条の3と書いている資料が今もよく出回っています。上に挙げた国交省の通知も、そう書いています。ところが現行の施行令をe-Gov法令検索で開くと、6条の3は「保証人を必要としない軽微な工事」で、共同住宅の新築を定めているのは6条の4です(正式な見出しは「一括下請負の禁止の対象となる多数の者が利用する施設又は工作物に関する重要な建設工事」)。中身は変わっていませんが、番号だけがずれています。
つまり共同住宅の新築工事は、発注者が承諾しても丸投げできません。ハウスメーカーの仕事には共同住宅の新築が普通に含まれます。
どこからが「丸投げ」になるのか
国交省の通知は、「実質的に関与」していなければ一括下請負にあたるとしています。実質的に関与とは、施工計画の作成・工程管理・品質管理・安全管理・技術的指導等を自ら行うことです。
一人親方に直接効いてくるのは、通知の次の一文です。請け負った建設工事と同じ種類の工事について、単一の業者と下請契約を締結する場合には、次の3つを全て行うことが必要とされています。
- 請け負った範囲の工事に関する、現場作業に係る実地の技術指導
- 自らが受注した工事の請負契約の注文者との協議
- 下請負人からの協議事項への判断・対応
「同じ職種の知り合い1人に、そのまま回す」がこれに当たります。現場に顔を出さず、元請からの連絡も相手に直接つながせているなら、3つとも欠けています。通知は「単に現場に技術者を置いているだけでは上記の事項を行ったことにはならない」とも書いています。

「応援」「業務委託」と呼べば別ものになるか
なりません。建設業法24条は「委託その他いかなる名義をもつてするかを問わず、報酬を得て建設工事の完成を目的として締結する契約は、建設工事の請負契約とみなして、この法律の規定を適用する」と定めています。
22条1項の「いかなる方法をもつてするかを問わず」も同じで、通知は「契約を分割し、あるいは他人の名義を用いるなどのことが行われていても、その実態が一括下請負に該当するものは一切禁止する」と説明しています。呼び名ではなく、誰が施工に関与したかで判断されます。
ハウスメーカーの下請けに入る前に決めておく3つ
- 自分が手を動かす範囲を、請書の中で分けて書いてもらう。「一式」1行だと、あとから関与を説明する材料が残りません(一人親方の見積書の書き方も参考にしてください)。
- 人手が足りない日は、自分も現場に入る前提で組む。回すこと自体は禁じられていません。禁じられているのは、関与しないまま丸ごと渡すことです。
- 契約書面は許可の有無に関係なく交わす。この点ははじめての元請けと組む前に確認する5つにまとめています。
発注する側が施工体制をどう見ているかは、工期を延ばされたときに聞くことのほうが分かりやすいかもしれません。
なお、許認可の適用範囲や処分の判断は個別の事情で変わります。迷うときは都道府県の建設業許可の窓口に、工事の中身を伝えて確認してください。
同じような回し方で困った経験や、うまくいった分担の仕方があれば、仕事を探している方の掲示板で聞かせてください。
出典:e-Gov法令検索「建設業法」「建設業法施行令」(2026年9月13日確認)/国土交通省「一括下請負の禁止について」(別紙2)


