一人親方がはじめての元請けと組む前に確認する5つ|建設業法19条は許可がなくても効く
結論からお伝えすると、はじめての元請けと組むときに確認すべきことの大半は、建設業法にそのまま書かれています。そして重要なのは、この法律の契約に関する条文が建設業の許可を持っていない一人親方にも効くということです。「許可がないから関係ない」と思っていると、自分を守る根拠を1つ落とすことになります。
紹介で電話がかかってきて、来週から入ってほしいと言われる。金額は「だいたいいつもの単価で」。契約書の話は出ない。よくある入り方ですが、ここで確認を1つも入れないと、揉めたときに立つ場所がなくなります。

契約書面は、許可の有無に関係なく交わすもの
建設業法19条1項は、こう始まります。「建設工事の請負契約の当事者は、(中略)契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない」。
主語が「建設業者は」ではなく「請負契約の当事者は」である点が大事です。許可業者だけの義務ではありません。工事を請け負う以上、無許可の一人親方も当事者に含まれます。そして「交付」ではなく「相互に交付」です。元請けから一方的に渡されて終わりではなく、双方が持つ形が法律の想定です。
書面に記載する事項は16号まで並んでいます。一人親方の実務で効いてくるのは、たとえば次のものです。
- 工事内容/請負代金の額/着手と完成の時期(1号〜3号)
- 設計変更や工事中止があったときの工期・代金の変更と、その算定方法(6号)
- 天災など不可抗力による工期変更・損害の負担(7号)
- 価格等の変動に基づく工事内容や代金の変更と、その算定方法(8号)
- 注文者が資材を提供したり機械を貸したりするときの内容と方法(10号)
- 完成確認の検査の時期と方法、引渡しの時期(11号)
- 工事完成後の代金の支払時期と方法(12号)
- 紛争の解決方法(15号)
材料を誰が持つのか(10号)、追加が出たらどう精算するのか(6号・8号)は、あとで一番揉めるところです。法律が「書け」と言っている項目が、そのまま揉めやすい項目の一覧になっています。電子契約でもかまいません(19条3項)。
「安くても受けるのは自分の自由」ではない
建設業法19条の3は不当に低い請負代金を禁止する条文です。1項は注文者側、つまり「取引上の地位を不当に利用して、通常必要と認められる原価に満たない金額で契約してはならない」という発注側への禁止です。
見落とされやすいのは2項です。「建設業者は、(中略)その請け負う建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならない」。自分が保有する低廉な資材を使えるなど、国土交通省令で定める正当な理由がある場合を除きます。
つまり原価を割る金額で受けること自体が、受注する側にも禁じられています。「安く受けるかどうかは自分の勝手」という前提が、いまの条文では成り立ちません。値切られたときに引く根拠として使えます。
見積りには法律で決まった期間がある
「明日の朝までに出して」と言われることがあります。建設業法20条3項は、注文者に対して、契約や入札までの間に見積りのための期間を設けなければならないと定めています。その期間は建設業法施行令5条の9に具体的に書かれています。
- 工事1件の予定価格が500万円未満:1日以上
- 500万円以上5,000万円未満:10日以上
- 5,000万円以上:15日以上
やむを得ない事情があるときは、2号と3号の期間を5日以内に限って短縮できます。500万円未満の工事でも「1日以上」は必要という点は覚えておいてください。今日聞いて今日中、は法律の想定の外です。
見積書の中身についても、20条1項が定めています。工事の種別ごとの材料費、労務費、適正な施工の確保に不可欠な経費、その他必要な経費の内訳、そして工事の工程ごとの作業と準備に必要な日数を書いた見積書を作るよう努めること、とされています。そして20条4項では、注文者から請求があったときは、契約が成立するまでに、この見積書を交付しなければならないと義務になっています。
「一式」でまとめて出すより、内訳を割って出すほうが法律の形に合っています。労務費の額を著しく下回るものであってはならないとも書かれています(20条2項)。
入金はいつ来るのか
建設業法24条の3は、元請負人の支払いについて定めています。「元請負人は、請負代金の出来形部分に対する支払又は工事完成後における支払を受けたときは、(中略)当該支払を受けた日から一月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払わなければならない」。
基準になるのは元請けが施主から入金を受けた日です。だから初回の取引で聞くべきなのは「支払いは何日締めの何日払いですか」だけでなく、「元請けさんへの入金はいつですか」までです。ここがずれていると、こちらの締め日を守っても入金は来ません。
同条2項には、下請代金のうち労務費に相当する部分は現金で支払うよう適切な配慮をしなければならないとあります。手形での支払いを提示されたときに、確認する材料になります。
相手が許可業者かどうかは、無料で調べられる
初回の取引で一番不安なのは、そもそも相手がどういう会社なのかです。建設業の許可を受けている業者であれば、国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で、商号や所在地から許可の有無と許可番号を確認できます。誰でも無料で使えます。
あわせて確認しておくとよい点を挙げます。
- 許可の業種と有効期間(許可は5年ごとの更新制)
- 現場に置かれる現場代理人と、その権限の範囲。建設業法19条の2は、現場代理人を置く場合、その権限に関する事項を書面で注文者に通知することを定めています。逆に注文者が監督員を置く場合も同様です
- 誰の指示に従うのか。指示を出す人と、代金を決める人が別なら、その両方の名前
建設業法18条は「各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し」と書いています。下請けだから言えない、という前提を法律は置いていません。

まとめ
- 契約書面は許可の有無に関係なく、相互に交付するもの(19条)
- 原価割れの契約は受ける側も禁止されている(19条の3第2項)
- 見積りには期間がある。500万円未満でも1日以上(施行令5条の9)
- 支払いは元請けが入金を受けた日から1か月以内。労務費相当分は現金払いに配慮(24条の3)
- 相手の許可は国のシステムで無料で引ける
条文の当てはめは個別の事情で変わります。実際に揉めたとき、契約の扱いに迷ったときは、許可行政庁である都道府県の建設業担当課や、各地の建設業取引適正化に関する相談窓口に確認してください。
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