一人親方が雇った人に労働条件を書面で渡すとき|口約束では足りず、書面で渡す事項は法律に決まっています
結論からお伝えすると、人を1人でも雇った一人親方は、雇い入れるときに、賃金や労働時間などの条件を本人に明示しなければなりません(労働基準法15条1項)。そのうち賃金・労働時間・契約の期間などは、書面で渡す決まりです(労働基準法施行規則5条3項・4項)。口約束だけで済ませると、15条1項に違反し、30万円以下の罰金の対象になります(120条1号)。渡すのは「雇用契約書」ではなく、条件を書いた「通知」で足ります。
雇うと、何が必要になるのか
労働基準法の「労働者」は、職業を問わず、事業に使用されて賃金を支払われる人です(9条)。アルバイトや日雇いも含まれます。使用者は事業主本人で(10条)、一人親方でも人を雇えば使用者になります。同居の親族だけを使う事業は、この法律の適用がありません(116条2項)。一方、外注として仕事を頼む相手は労働者ではないので、この明示の対象外です。ただし、実態が雇っているのと変わらなければ、外注と書いても労働者として扱われます。
- 雇う相手(アルバイト、日雇い、パートを含む):明示が必要
- 同居の親族だけ:労働基準法は適用されない
- 外注の職人:対象外。ただし実態が雇用なら対象

書面で渡す事項は、決まっている
書面で明示する事項は、施行規則5条3項が、同条1項の1号から4号までの事項(昇給を除く)と定めています。具体的には次のとおりです。
- 労働契約の期間。有期契約で更新する場合があるなら、更新の基準も書く(通算契約期間や更新回数に上限があれば、その上限も)
- 就業の場所と従事する業務(変更の範囲を含む)
- 始業と終業の時刻、所定時間を超える労働の有無、休憩、休日、休暇
- 賃金の決め方、計算と支払の方法、締切りと支払の時期
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
就業の場所・業務の「変更の範囲」と、更新回数などの上限の明示は、2024年4月1日から加わりました。e-Govの条文を前日と当日で比べると、この日に変更の範囲と無期転換の申込みに関する文言が増えています。
メールやLINEで送ってもいいのか?
原則は書面の交付です。ただし、働く本人が希望した場合に限り、ファクシミリや電子メールなどでもよいとされています。電子メールなどの場合は、本人が記録を出力して書面にできる形であることが条件です(施行規則5条4項ただし書)。一人親方の側が「メールで済ませたい」と決めることはできません。本人に希望を聞いて、希望があったときの方法です。
書面でなくてよい事項もある
退職手当、賞与、食費や作業用品の負担、安全衛生、職業訓練、災害補償、表彰・制裁、休職は、それに関する定めをする場合に明示が必要な事項です(施行規則5条1項4号の2から11号)。定めがなければ明示は要りません。書面である必要もありませんが、あとで言った言わないになるのを避けるために、同じ通知に書いておくのが安全です。

書いた条件が違っていたら
明示された労働条件が事実と違うときは、労働者は即時に労働契約を解除できます(15条2項)。就業のために住居を変えた人が、契約を解除した日から14日以内に帰郷するなら、使用者は必要な旅費を負担しなければなりません(15条3項)。求人で見せた条件と実際の条件がずれないようにしておくことが、いちばんの備えです。
初めて雇う日の準備
- 雇うのか、外注で頼むのかを決める(外注の条件は職人チームを作るときのメンバーの選び方で確認できます)
- 上の5つの事項を、1枚の通知にまとめる。厚生労働省が様式の例を公開しているので、それを土台にする
- 働き始める前に本人へ渡し、控えを残す
- 雇ったあとの届出や支払いは一人親方が初めて人を雇うときと一人親方が人を使ったときの支払いを見る
まとめ
人を雇ったら、契約のときに賃金・労働時間などを明示する必要があり、主な事項は書面で渡します。渡すのは雇用契約書ではなく条件の通知で足ります。メールでの交付は、本人が希望したときに限ります。個別の扱いは、労働基準監督署や社会保険労務士に確認してください。(出典:労働基準法、労働基準法施行規則、e-Gov法令検索、2026年10月1日時点の条文)
人の使い方の相談をしたい方は、職人向けの掲示板もご活用ください。


