見習いが作業着と帽子を選ぶとき|回る刃物の前では、手袋を外すのが決まりです
作業場の卓上ボール盤で、金具に穴をあける順番が回ってきました。軍手をはめたまま材料を押さえようとした瞬間、先輩が「手袋は外せ」と短く言います。寒い朝で、指先はかじかんでいます。守るための手袋を、なぜ外すのか。見習いにはすぐには分かりません。
結論からお伝えすると、作業着と帽子は「回る機械に巻き込まれないか」で選び、回る刃物の前では手袋を外します。動力で動く機械に髪や服が巻き込まれるおそれがあるとき、会社は作業帽か作業服を着させなければなりません(労働安全衛生規則110条1項)。そしてボール盤・面取り盤などの回る刃物に手が巻き込まれるおそれがあるときは、手袋を使わせてはならないと決まっています(同規則111条1項)。どちらも、命じられた働く人の側にも守る義務があります(各条2項)。

作業着は「巻き込まれない形」かどうか
110条が見ているのは、色やブランドではありません。頭髪や被服が機械に巻き込まれるおそれです。現場で着る物を選ぶときは、次の場所を見ます。
- 袖口:手首で締められるか。だぶついた袖は、回転する刃や軸に一番先に触れます
- 裾とひも:パーカーのひも、ベルトの余り、上着の裾が垂れていないか
- 首まわり:首に掛けたタオルの端がぶら下がっていないか
- 髪:長い髪は帽子の中に入れる。作業帽の「帽」は、髪をまとめるための物でもあります
「おしゃれな作業着」が悪いわけではありません。ただ、垂れる・ふくらむ・ひもが出るの3つは、機械のそばでは減点になると考えておくと選びやすくなります。
手袋をしたほうが安全ではないのか?
ここがいちばん誤解されやすいところです。カッターを使う、材料を運ぶ、といった作業では、手袋はけがを減らします。ところが回る刃物は、手袋の布をつかんで、手ごと引き込みます。素手なら刃に当たった瞬間に手を引けても、布ごと巻かれると引けません。だから111条は、手袋の使用を「させてはならない」と、禁止の形で書いています。
条文が名指ししているのはボール盤と面取り盤で、そのあとに「等の回転する刃物」と続きます。手持ちの電動工具がどこまで含まれるかは、条文だけでは決まりません。現場の決まりと、工具の取扱説明書に従ってください。迷ったら「回る物に手を近づけて押さえる作業では手袋を外す」と覚えておくと外れません。
見習いのうちに受ける安全教育の項目は見習いが先に覚える安全のルールにまとめています。

ヘルメットと靴も、法律に出てくる
作業帽とは別に、保護帽(ヘルメット)の決まりもあります。上で別の人が作業している場所では、物が落ちてくる危険を防ぐため保護帽をかぶらせることになっています(労働安全衛生規則539条)。飛来・落下・墜落から守る保護帽は国の型式検定の対象で(労働安全衛生法施行令14条の2第12号)、合格の表示がないものは使ってはならないとされています(労働安全衛生法44条の2第7項)。量販店で買うときは、内側の検定合格の表示を見てください。
靴は、通路の構造や作業の状態に合わせて、会社が安全靴その他の適当な履物を決めて使わせることになっています(同規則558条1項)。決められた履物を命じられたら、働く人も使う義務があります(同条2項)。
作業着やヘルメットを会社が支給するのか、自分で買うのかは会社ごとに違います。確かめ方は未経験が最初に持つ道具袋の中身に書いています。
都合の悪いことも書いておきます
- 袖口を締めた長袖は、夏の現場では暑いです。暑さ対策と巻き込まれ対策はぶつかることがあり、どちらを優先するかは作業ごとに現場で決めることになります
- 手袋を外すと、材料のばりや切り口で手を切りやすくなります。111条は「回る刃物に巻き込まれるおそれがあるとき」の話で、すべての作業で素手にしろという意味ではありません
- 自分の作業がどの条文に当たるかで迷ったら、元請けの安全担当か労働基準監督署に確かめてください
まとめ
- 動力の機械に髪や服が巻き込まれるおそれがあるときは、作業帽か作業服を着る(労働安全衛生規則110条)
- ボール盤・面取り盤など回る刃物に手が巻き込まれるおそれがあるときは、手袋を使わない(同規則111条)
- 保護帽は型式検定の対象。合格の表示がないものは使えない(施行令14条の2第12号・労働安全衛生法44条の2第7項)
- 靴は会社が作業に合わせて決める(同規則558条)。命じられたら働く人も守る
現場で使っている作業着の工夫や、手袋を外す・外さないの決まりがあれば、職人になりたい人の掲示板で教えてください。
(出典:労働安全衛生規則110条・111条・539条・558条、労働安全衛生法44条の2、同法施行令14条の2。いずれもe-Gov法令検索の現行条文、2026年9月28日時点)


