見習いが36協定を見せてもらうとき|掲示も交付もしていないなら、会社の側が条文に反しています

入社して3週目の金曜日、夕方5時。親方が「今日は8時までやるぞ」と言い、先輩たちは黙って照明を足しに行きました。事務所の壁には現場の工程表と安全標語が貼ってありますが、「36協定」という紙はどこにも見当たりません。聞いていいものか、見習いには分からないまま3時間が過ぎていきます。

結論からお伝えすると、36協定は「見せてください」と言ってよい書類です。会社は36協定を、作業場に掲示するか、書面で渡すか、いつでも見られるパソコン等に入れておくかのどれかで、働く人に知らせなければなりません(労働基準法106条1項・同法施行規則52条の2)。そして36協定を結んで監督署に届けていない会社は、1日8時間を超えて働かせること自体ができません(労働基準法32条・36条1項)。

36協定がないと、残業はさせられない

労働基準法32条は、休憩を除いて1週40時間・1日8時間を超えて働かせてはならないと定めています。これを超えてよいのは、会社が働く人の過半数を代表する者(または過半数で組織する労働組合)と書面で協定を結び、労働基準監督署に届け出たときだけです(36条1項)。条文の番号から「36(サブロク)協定」と呼ばれます。

協定に書くことも、条文で決まっています(36条2項)。

  • 残業や休日出勤をさせる人の範囲
  • 対象期間(1年に限る)
  • 残業させることができる場合
  • 1日・1か月・1年それぞれで延ばせる時間、働かせる休日の日数
  • 協定の有効期間、1年の起算日など(施行規則17条)

休日に働かせる日数もここに入ります。法律が求める休日の数は未経験で知っておく職人の休みに書いています。つまり36協定を見れば、自分がこの会社で「最大で何時間まで残業する前提になっているか」が分かります。

36協定で見るところ4つ(有効の日付・月と年の時間・特別条項の有無・置いてある場所)

建設業の上限は、いまはほかの業種と同じ

協定で決められる残業には上限があります。原則は1か月45時間・1年360時間です(36条3項・4項)。臨時の特別な事情がある場合に限って特別条項を付けられますが、それでも次の線は越えられません(36条5項・6項)。

  • 時間外と休日労働を合わせて、1か月100時間未満
  • 時間外と休日労働を合わせて、2〜6か月のどの平均も80時間以内
  • 時間外だけで1年720時間以内
  • 45時間を超えられるのは1年に6か月まで

建設業は長く、この上限の適用が猶予されていました。猶予を定めた附則139条2項の期限は令和6年3月31日で、すでに過ぎています。いま建設業に残っている例外は、災害時の復旧・復興の事業について、月100時間未満と2〜6か月平均80時間の線をかけない、という部分だけです(附則139条1項)。

見せてもらえないのは、会社の側の問題なのか?

はい。106条1項は、36協定を含む労使協定を働く人に周知させることを使用者の義務にしています。方法は施行規則52条の2に3つ書かれています。

  1. 作業場の見やすい場所に掲示するか、備え付ける
  2. 書面を交付する
  3. ファイルに記録し、作業場にいつでも見られる機器を置く

どれもしていなければ106条違反で、罰則は30万円以下の罰金です(120条1号)。ただ、事務所の棚にファイルで置いてあるのを見習いが知らないだけ、ということもよくあります。最初は責める言い方ではなく、「どこに置いてありますか」と聞くのが角が立ちません。

聞くときに見るとよいのは、次の3か所です。

  • 有効期間:切れていれば、その日から先の残業は協定がない状態です
  • 1か月・1年の時間:45時間・360時間の枠に収まっているか、特別条項が付いているか
  • 特別条項の中身:何か月まで、何時間まで、健康確保の措置は何か(施行規則17条1項5号)

残業した分の割増賃金は36協定とは別の話で、37条で決まっています。拘束時間や残業の線引きを一人親方の側から見た話は一人親方が常用で入るときの拘束時間と残業に書いています。

36協定を見せてもらうときの流れ(どこにあるかを聞く・有効の日付を見る・時間の枠を見る・答えがなければ相談)

都合の悪いことも書いておきます

  • 36協定の数字は「上限」であって、「その時間までは働かせてよい」という約束ではありません。ただ、協定に特別条項が付いている会社は、繁忙期に45時間を超える月があることを前提にしている、と読むのが自然です
  • 見習いの側から周知を求めたことで、居づらくなるのではと心配する人もいます。言いにくいときは、労働基準監督署の総合労働相談コーナーに先に相談するという手もあります
  • 協定の中身が適法かどうか、自分の働き方が上限を超えているかは、最終的には労働基準監督署が判断します。この記事は条文の読み方までです

まとめ

  • 1日8時間・週40時間を超える残業は、36協定を結んで届け出た会社でなければさせられない(労働基準法32条・36条1項)
  • 上限は原則月45時間・年360時間。建設業の猶予は令和6年3月31日で終わり、残る例外は災害の復旧・復興だけ(附則139条)
  • 36協定は、掲示・書面の交付・見られる機器のどれかで知らせる義務がある(106条1項・施行規則52条の2)
  • 見るのは有効期間、月と年の時間、特別条項の3か所

入社したときに36協定を見せてもらえたか、どう切り出したか。職人になりたい人の掲示板に書いてもらえると、これから入る人が聞きやすくなります。

(出典:労働基準法32条・36条・106条・120条・附則139条、労働基準法施行規則17条・52条の2。いずれもe-Gov法令検索の現行条文、2026年9月28日時点)

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