一人親方が小規模企業共済に入るとき|掛金は月1,000円〜7万円で全額が所得控除、12か月未満でやめると何も戻りません
確定申告の書類を広げて、控除の欄を上から見ていく。社会保険料控除は国民年金と国保の領収書で埋まった。その下に「小規模企業共済等掛金控除」という欄があって、ここだけ毎年0円のまま。独立して3年目、所得が少し増えてきて、この欄が気になり始めた。
結論からお伝えすると、一人親方は小規模企業共済に入れます。掛金は月1,000円から7万円までの500円刻みで(小規模企業共済法4条2項)、払った掛金は全額がその年の所得から差し引かれます(所得税法75条)。ただし、加入して12か月未満で自分からやめると、戻ってくるお金は1円もありません(小規模企業共済法12条1項)。「節税になるから」だけで月7万円にすると、手元の運転資金が足りなくなります。

一人親方は、そもそも入れるのか?
入れます。小規模企業共済法2条1項1号は、加入できる「小規模企業者」を次のように決めています。
- 常時使用する従業員の数が20人以下の個人
- 工業、鉱業、運送業その他の業種に属する事業を主たる事業として営むもの
商業とサービス業は「5人以下」(同2号)ですが、建設の請負は1号の側に入ります。従業員がいない一人親方は、人数の条件をそのまま満たします。奥さんが事業を手伝っている場合も、「事業の経営に携わる個人」として別に入れることがあります(同4号)。どこまでが該当するかは、窓口の金融機関や中小企業基盤整備機構で確かめてください。
掛金はいくらで、何が戻ってくるのか
条文で決まっている数字を並べます。
- 掛金:月1,000円以上・500円単位・1人につき月7万円まで(4条2項)
- 増やす・減らす:申し込めば機構は承諾しなければならない(8条1項)
- 共済金が出るとき:事業をやめたときなど。掛金を6か月以上払っていることが条件(9条1項)
- 自分からやめるとき:いつでも解約できる(7条3項)。ただし払った月数が12か月未満なら解約手当金は出ない(12条1項)
- 12か月以上でやめたとき:払った掛金の合計に「80%を下らない政令で定める割合」を掛けた額(12条3項1号)
いちばん大事なのは最後の2行です。廃業したときに受け取る「共済金」と、途中で自分からやめたときの「解約手当金」は別物で、解約のほうは払った額を下回ることがあります。積み立てたお金を、仕事が減った月に崩す口座として使うと、その分だけ目減りします。
全額が所得控除、とはどういうことか
所得税法75条1項は、小規模企業共済の掛金を「その支払つた金額を、その者のその年分の総所得金額……から控除する」と書いています。上限の金額は決まっておらず、払った全額です。
たとえば課税される所得が300万円前後の人が、月1万円(年12万円)を掛けたとします。一般的には、所得税(税率10%)と住民税(10%)を合わせて、年2万4,000円ほど税金が軽くなる計算です。月7万円なら年84万円が所得から引かれます。ただし、税率は所得の段で変わり、復興特別所得税もあるので、実際の金額は税務署や税理士に確かめてください。
注意したいのは、この控除は12月31日までに払った分で数えることです。年末にまとめて払うつもりなら、払い方(月払い・半年払い・年払い)を早めに決めておきます。確定申告の準備の流れは、一人親方の確定申告は12月に準備するにまとめています。
建退共とは、何が違うのか
同じ「共済」でも、建設業退職金共済(建退共)は仕組みがまったく違います。一人親方が建退共に入る場合、掛金は必要経費にならないという落とし穴がありました(一人親方も建退共に入れるのか)。小規模企業共済は、事業の経費ではなく「本人の所得控除」として引かれます。どちらに入るかではなく、何のためのお金かで分けて考えると整理しやすくなります。

都合の悪いことも書いておきます
- 12か月未満で解約すると何も戻らない。最初の1年は、やめない金額で始める
- 途中解約は元本を割ることがある。運転資金のかわりにはならない
- 受け取るときにも税金がかかる。受け取り方(一括・分割)で扱いが変わるので、一般的には税務署か税理士に確認が要る
- 法人にするときは扱いが変わる。同じ事業を続ける会社を作るために個人事業をやめた場合、契約は解除されたものとみなされます(7条4項1号)。法人化を考えているなら、先に窓口で引き継ぎ方を確かめる
まとめ
小規模企業共済は、従業員20人以下の建設の個人事業主が入れる制度で、一人親方も対象です。掛金は月1,000円〜7万円、払った全額がその年の所得から引かれます。一方で、12か月未満の解約では1円も戻らず、途中でやめると目減りすることもあります。最初は「1年間やめずに払える額」から始め、所得が安定してから増やすのが無理のない入り方です。加入できるかどうか、税金がいくら軽くなるかは、金融機関の窓口や税務署・税理士にご確認ください。条文は2026年10月11日にe-Gov法令検索で確認しました。
(出典:小規模企業共済法2・4・7・8・9・12条、所得税法75条(e-Gov法令検索の現行条文))
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