一人親方が少額訴訟を使うとき|60万円以下・審理は原則1回、2026年5月からはネットで出せます

結論からお伝えすると、一人親方が60万円以下の未払いを取り戻したいとき、簡易裁判所の少額訴訟は「原則1回の期日で審理を終える」手続きです(民事訴訟法368条1項・370条1項)。2026年5月21日からはインターネットで訴状を出せるようになり、手数料は郵便代込みで、訴える額が30万円までなら紙で5,500円、ネットで4,400円です。ただし、相手が通常の裁判を選べば1回では終わりません。

たとえば、クロスの張り替え3部屋分で28万円。請求書を送って2か月、電話はつながるのに「来月には」が3回続いた。弁護士に頼むと費用のほうが高くつきそうだ。そう考えたときに候補に上がるのが少額訴訟です。この記事では、条文と裁判所の案内で、できること・できないことを確かめます。

少額訴訟の金額の上限・審理の回数・証拠・控訴・通常の裁判への移行を並べた図解

少額訴訟は、どんな手続きなのか

  • 対象:60万円以下の金銭の支払の請求だけ(368条1項)。物を返せ、工事をやり直せ、という請求には使えません
  • 回数:同じ簡易裁判所で同じ年に使える回数に上限があり、裁判所の案内では1人年10回までです
  • 審理:特別の事情がなければ、最初の期日で審理を終える(370条1項)。言い分と証拠は、その期日までに全部出す(同条2項)
  • 証拠:その場ですぐに調べられるものだけ(371条)
  • 判決:原則として審理が終わったらすぐ言い渡す(374条1項)

申し立てる先は、原則として相手の住所地の簡易裁判所です。お金の請求なら、支払をすべき場所の簡易裁判所にも起こせると裁判所は案内しています。

紙の訴状とネットの電子申立てで手数料が違うことを比べた図解

2026年5月から、何が変わったのか?

裁判所の少額訴訟の案内には、令和8年5月21日以降は書面に加えてオンラインで提出できるようになったと書かれています。使うのは「mints」という民事裁判書類の電子提出システムで、アカウント登録が必要です。

もう1つの変化が費用です。これまで別に納めていた郵便費用は、申立手数料に一本化されました。裁判所の手数料額早見表では、訴えの提起の手数料(民事訴訟)は次のとおりです。

  1. 10万円まで:紙で3,500円/ネットで2,400円
  2. 30万円まで:紙で5,500円/ネットで4,400円
  3. 60万円まで:紙で8,500円/ネットで7,400円

この例の28万円なら、30万円までの段に入ります。納め方は原則として電子納付(ペイジー)です。

当日までに、何をそろえればいいのか

1回で終える手続きなので、期日に「後で出します」は通りにくいと考えてください。一人親方の請負代金なら、一般的には次のようなものが証拠になります。

  • 注文書・発注のメールやメッセージ(誰が、何を、いくらで頼んだか)
  • 請求書の控えと、送った日がわかるもの
  • 施工前後の写真や、引き渡しが済んだことがわかるやりとり
  • 相手が支払いを約束したメッセージ(「来月には」も記録として残します)

証人を連れていく場合も、その日にその場で話を聞ける人に限られます。

都合の悪いことも書いておきます

  • 相手は通常の裁判を選べる:被告は、最初の期日で弁論をするまでなら、通常の手続きに移すよう申し出られます(373条1項)。そうなると1回では終わりません
  • 分割や猶予の判決があり得る:請求が認められても、相手の資力などを見て、3年を超えない範囲で分割払いや支払猶予の判決がされることがあります(375条1項)
  • 控訴はできない:不服があっても控訴はできず(377条)、判決を受け取ってから2週間以内に同じ裁判所へ異議を出す形だけです(378条1項)
  • 判決が出ても、払われるとは限らない:払われなければ、強制執行を申し立てることになります

裁判の前の段階で動く順番は一人親方が支払いの遅い元請けに動く順番に、時効を止める催告は一人親方が相手に内容証明を送るときにまとめています。

まとめ

少額訴訟は、60万円以下のお金の請求を、原則1回の期日で決着させる手続きです。2026年5月21日からはネットで出せるようになり、手数料は郵便代込みで30万円までなら紙5,500円・ネット4,400円。証拠は当日その場で出せるものだけで、相手が通常の裁判を選べば長引きます。個別の事情での判断は、簡易裁判所の窓口や法テラス、弁護士・司法書士にご相談ください。条文は2026年10月10日にe-Gov法令検索で、手続きと手数料は同日に裁判所のウェブサイトで確認しました。

(出典:民事訴訟法368・370・371・373・374・375・377・378条(e-Gov法令検索の現行条文)/裁判所「少額訴訟」「手数料額早見表」)

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