一人親方が支払督促を使うとき|書類だけで進み、相手が2週間黙っていれば強制執行まで行けます

床の張り替えと巾木で45万円。請求書は5月に送った。内容証明も出したが、返事はない。相手の工務店は隣の市にあって、電話をかけると事務の人が「社長に伝えます」と言うだけ。裁判所に何度も通う時間はないけれど、このまま諦めるのも違う。

結論からお伝えすると、一人親方が未払いの代金を取り戻す方法の1つに、簡易裁判所の支払督促があります。書類の審査だけで進み、相手の言い分を聞かずに発付されます(民事訴訟法386条1項)。相手が受け取ってから2週間以内に異議を出さなければ、仮執行宣言を付けてもらえ、強制執行まで進めます(391条1項)。手数料は45万円の請求なら書面で5,200円・ネットで5,000円(郵便代込み)です。ただし、相手が異議を出した瞬間に普通の裁判に移ります(395条)。

支払督促の流れ5段階。書類を相手の地元の簡易裁判所へ出す、相手が2週間黙っていたら仮執行を30日以内に申し立てる、届けば強制執行ができ、さらに2週間で判決と同じ効力になる。

支払督促は、どんな請求に使えるのか?

民事訴訟法382条は、対象を「金銭その他の代替物又は有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求」としています。請負代金はお金の請求なので使えます。金額の上限はありません。60万円を超えると使えない少額訴訟とは、ここが違います(少額訴訟は一人親方が少額訴訟を使うとき)。

ただし、382条のただし書きで「日本において公示送達によらないでこれを送達することができる場合に限る」とされています。相手の居場所が分からず、書類を届けられない場合は使えません。

どこの裁判所に出すのか

申立ては、相手の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に出します(383条1項)。相手が事務所や営業所を持っていて、その営業所の仕事に関する請求なら、営業所の所在地の簡易裁判所にも出せます(同条2項1号)。自分の住所地の裁判所には出せません。

2026年5月21日からは、書面に加えて、裁判所の「mints(ミンツ)」というシステムでネットから出せるようになりました。従来の督促手続オンラインシステムを使う場合は、東京簡易裁判所に出すこともできます(397条、裁判所「支払督促」の案内)。

支払督促と少額訴訟の比較。支払督促は書類だけで進み金額の上限がなく50万円まで書面5,200円、争われれば裁判になる。少額訴訟は60万円以下に限られ原則1回の期日で、30万円まで書面5,500円。

手数料はいくらか

裁判所の手数料額早見表から、支払督促の申立ての手数料を抜き出します。これまで別に納めていた郵便費用は、申立手数料に一本化されています。

  • 10万円まで:書面3,200円/電子3,000円
  • 30万円まで:書面4,200円/電子4,000円
  • 50万円まで:書面5,200円/電子5,000円
  • 100万円まで:書面7,700円/電子7,500円

少額訴訟(訴えの提起)は30万円までで書面5,500円・ネット4,400円なので、支払督促のほうが安く済みます。相手が異議を出して裁判に移ったときは、訴えの手数料との差額を追加で納めます(早見表の注記)。

申し立ててから、何日で何が起きるのか

  1. 申立てを裁判所書記官が審査し、支払督促を発付。相手に送達される
  2. 相手は督促異議を出せる(386条2項)。異議が出ると普通の裁判に移る(395条)
  3. 相手が受け取ってから2週間、異議がなければ、こちらから仮執行宣言を申し立てる(391条1項)。申し立てられる時から30日以内に申し立てないと、支払督促そのものが効力を失う(392条)
  4. 仮執行宣言付きの支払督促が相手に届くと、強制執行を申し立てられる
  5. そこから2週間、相手が異議を出さなければ、確定判決と同じ効力を持つ(393・396条)

いちばん忘れやすいのは3番の30日です。「異議がなかったから終わり」ではなく、こちらから動かないと、出した書類がすべて無駄になります。

都合の悪いことも書いておきます

  • 相手が異議を出せば、相手の地元で裁判になる。支払督促を出した簡易裁判所か、その所在地の地方裁判所に訴えがあったものとみなされる(395条)。遠方の相手だと、期日のたびに出向くことになる
  • 「払う気はあるが金がない」相手には、紙が増えるだけのことがある。強制執行しても、差し押さえる財産がなければ回収できない
  • 請求の中身に争いがあるなら向かない。手直しの範囲や追加工事の金額でもめているなら、異議が出る前提で考える
  • 時効が迫っているなら急ぐ。請負代金の時効は、原則として請求できると知った時から5年です(一人親方の請負代金はいつまで請求できるか)

まとめ

支払督促は、相手の住所地の簡易裁判所に書類を出すだけで進む手続きです。相手が2週間黙っていれば仮執行宣言を付けてもらえ、強制執行まで行けます。手数料は郵便代込みで、50万円までなら書面5,200円・ネット5,000円。ただし異議が出れば普通の裁判に移り、仮執行宣言の申立てを30日以内にしないと失効します。条文は2026年10月11日にe-Gov法令検索で、手数料と手続きは同日に裁判所のウェブサイトで確認しました。個別の事情での判断は、簡易裁判所の窓口や法テラス、弁護士・司法書士にご相談ください。

(出典:民事訴訟法382・383・386・390・391・392・393・395・396・397条(e-Gov法令検索の現行条文)/裁判所「支払督促」「手数料額早見表」)

代金の回収について話したい方は、相談・雑談の掲示板もあります。その前の一手は一人親方が相手に内容証明を送るときにまとめています。

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