一人親方が遅れた代金に遅延損害金を付けるとき|契約に利率が無ければ年3%、元請けが特定建設業者なら14.6%です

支払日は月末。通帳を見ても入っていない。元請けからは「来月まとめて」と一言だけ。結局入ったのは3か月後で、金額は請求書どおりの50万円。遅れた3か月分について何も付いていないけれど、こちらから言っていいものなのか。

結論からお伝えすると、お金の支払いが遅れたとき、受け取る側は遅れた日数に応じた遅延損害金を請求できます。損害が出たことを証明する必要はありません(民法419条2項)。利率は、契約に決めていればその利率、決めていなければ法定利率の年3%です(419条1項・404条2項)。2026年4月1日からの3年間も3%のまま据え置かれています。ただし相手が特定建設業者の元請けなら、建設業法で年14.6%の遅延利息になる場合があります。

遅れた代金の利率の決まり5点。契約に利率があればそれ、無ければ年3パーセント、2026年4月からの期も3パーセントのまま、元請けが特定建設業者なら年14.6パーセント、下請法の14.6パーセントは建設工事には使えない。

まず、契約書に利率が書いてあるか

民法419条1項は、お金の支払いが遅れたときの損害賠償の額を「債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める」とし、ただし書きで「約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による」としています。

注文書や請負契約書の条項に「遅延損害金は年◯%」とあれば、まずそれを見ます。書いていなければ法定利率です。見積書と請求書だけでやりとりしている場合は、多くは書いていません。

法定利率3%は、いつまで3%なのか?

民法404条は、法定利率を年3%としたうえで、3年を1期として見直す仕組みにしています(2項・3項)。法務省の案内では、2026年4月1日から2029年3月31日までの期の基準割合は年0.4%と告示され、変動の幅が1%未満だったため、法定利率は3%のまま変わりませんでした(令和7年法務省告示第73号)。

注意したいのは、使う利率は「遅れが始まった時点の法定利率」で固定されることです(419条1項)。途中で法定利率が変わっても、その遅れについては最初の利率のままです。

相手が特定建設業者なら、14.6%になる

建設業法24条の6は、特定建設業者が注文者になった下請契約について、支払期日を引渡しの申出の日から50日以内に定めることを求めています。期日までに払わなかったときは、申出の日から50日を経過した日から支払う日までの日数に応じて、遅延利息を払わなければなりません(同条4項)。その率は建設業法施行規則14条で年14.6%です。

ただし、受け取る側(下請け)が特定建設業者か、資本金が政令で定める額以上の法人の場合は対象外です(24条の6第1項のかっこ書き)。一人親方は通常これに当たらないので、元請けが特定建設業者かどうかが分かれ目になります。元請けの許可の種類は、許可通知書や国土交通省の建設業者検索で確かめられます。この条文の流れは一人親方が支払いの遅い元請けに動く順番にも書いています。

よく聞く「下請法の14.6%」は、建設工事の下請けには使えません。下請法(現在の題名は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」)は、建設業者が請け負った建設工事を他の建設業者に請け負わせることを、対象の「役務提供委託」から外しています(同法2条4項のかっこ書き)。契約に利率の定めがない建設工事の代金で、法律によって14.6%が付くのは、建設業法24条の6が当てはまるときだけです。

いくらになるのか、計算してみる

50万円の支払いが90日遅れた場合です。

  • 法定利率(年3%):50万円×3%×90日÷365日=約3,698円
  • 特定建設業者の遅延利息(年14.6%):50万円×14.6%×90日÷365日=1万8,000円

同じ遅れでも、相手によって5倍近く違います。3%だと金額は小さく、関係を考えて請求しない選択も十分にあります。一方で、遅れが繰り返される相手には「遅れたら付きます」と伝えること自体が意味を持ちます。

50万円が90日遅れた場合の比較。年3パーセントなら約3,698円、元請けが特定建設業者で年14.6パーセントなら1万8,000円。

いつから数えるのか

民法412条は、遅れの始まりを次のように決めています。

  • 支払日が決まっているとき:その日が来た時から(1項)
  • 「完成したら」「入金があったら」のように、いつ来るか分からない時を支払日にしたとき:その時が来た後に請求を受けた時か、来たことを知った時の早いほうから(2項)
  • 支払日を決めていないとき:請求を受けた時から(3項)

どの場合も、請求した日が起点になりうるので、請求の日付が分かる形で残しておきます。

都合の悪いことも書いておきます

  • 請求しないと払われないのが普通。元請けが自分から遅延損害金を付けてくることはまずない
  • 元の代金と一緒に請求する。代金だけ受け取って「残りは遅延損害金です」と後から言っても、相手がどこに充てたかでもめやすい
  • 相手が払わないなら、結局は手続きになる。支払督促や少額訴訟で、代金と遅延損害金をまとめて求めることになる
  • 元請けが特定建設業者かどうかは、こちらの思い込みで決めない。許可の種類を確かめてから書く

まとめ

代金の支払いが遅れたら、遅れた日数に応じて遅延損害金を請求できます。契約に利率があればその利率、なければ年3%(2026年4月からの3年間も据え置き)。元請けが特定建設業者なら、引渡しの申出から50日を過ぎた日から年14.6%の遅延利息が付きます。建設工事の下請けには下請法の14.6%は使えません。条文は2026年10月11日にe-Gov法令検索で、法定利率の告示は同日に法務省のウェブサイトで確認しました。個別の契約での判断は、許可行政庁の窓口や弁護士・司法書士にご相談ください。

(出典:民法404・412・419条、建設業法24条の6、建設業法施行規則14条、製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律2条(e-Gov法令検索の現行条文)/法務省「令和8年4月1日以降の法定利率について」)

代金のことで話したい方は、相談・雑談の掲示板もあります。請求できる期限は一人親方の請負代金はいつまで請求できるかにまとめています。

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