一人親方が車検の切れた車を工場まで運ぶとき|仮ナンバーは「ただの移動」では出ず、自賠責の紙の原本が要ります

現場が3つ重なった月の終わり。車検証を見たら、有効期間の満了日が先週の日付だった。軽バンは駐車場で動く。整備工場までは4キロ。「ちょっと走るくらいなら」と鍵を回しかけて、手が止まります。

結論からお伝えすると、車検の切れた車は、たとえ4キロでも公道を走らせてはいけません(道路運送車両法58条1項。違反は6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金=108条1号)。工場まで自走したいなら、市役所などで臨時運行の許可(いわゆる仮ナンバー)を受けます(34条)。ただし許可は「車検を受けるための回送」のような目的に限られ、単なる移動では出ません(35条1項と各自治体の運用)。そして申請には運行する日が期間に入っている自賠責の証明書が要ります。車検と一緒に自賠責も切れていれば、先に入り直すところからです。

仮ナンバー(臨時運行の許可)の決まり6点。車検切れは4キロでも不可、目的は検査のための回送、許可は5日まで、終わったら5日以内に返す、自賠責の紙の原本が要る、手数料は1台750円。

なぜ、4キロでも走れないのか?

道路運送車両法58条1項は、検査を受けて有効な自動車検査証の交付を受けているものでなければ「これを運行の用に供してはならない」と書いています。距離の例外はありません。軽自動車も、車検の対象になっている車(いわゆる黒ナンバーや黄色ナンバーの軽バン)は同じです。

もう1つ見落としやすいのが自賠責です。一般的に自賠責は車検の期間に合わせて入るので、車検が切れた車は自賠責も切れていることがあります。自賠責のない車を走らせると、自賠法の側でも1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です(自動車損害賠償保障法5条・86条の3)。事故を起こせば、相手のけがの補償も出ません。

仮ナンバーで走れるのは、どんなときか

臨時運行の許可を受けた車を、許可証に書かれた目的と経路のとおりに走らせるときは、58条1項などの規定が適用されません(34条1項)。許可を出すのは、地方運輸局長、市と特別区の長、政令で決めた町村の長です(34条2項)。

35条が決めている許可の条件は次のとおりです。

  • 目的:試運転、新規登録・新規検査、車検が切れた車の継続検査などのための回送、その他特に必要がある場合に限る(1項)
  • 有効期間:5日を超えてはならない(3項。長距離の回送などは例外あり)
  • 返納:期間が終わった日から5日以内に、許可証と番号標を返す(6項。違反は108条1号の罰則の対象)

走るあいだは、仮ナンバーを決められた位置に見えるように付け、許可証を車に備え付けておく必要があります(36条)。

窓口の運用は自治体ごとに少しずつ違います。たとえば仙台市の案内では、許可の対象になる目的を検査・登録・整備などのための回送と試運転に絞り、「単に車両の移動のみを目的とした運行は、許可の対象になりません」としています。許可期間も、車検や整備のための回送なら原則1日です。

窓口に持っていくもの

国土交通省の手続案内では、申請は運行する経路の最寄りの運輸支局・市・特別区などに出し、自賠責保険の証明書の提示も必要とされています。手数料は750円(市区町村は異なる場合あり)です。仙台市の案内をもとに並べると、次のとおりです。

  1. 臨時運行許可申請書(窓口でもらえる)
  2. 自賠責保険証明書の原本(運行する日が保険期間に入っているもの)
  3. 車検証など、車台番号が分かる書類(コピー可)
  4. 窓口に行く人の運転免許証などの本人確認書類
  5. 手数料(1台750円)

ここで引っかかりやすいのが2番です。仙台市は、保険会社から電子データで交付された自賠責の証明書は申請に使えないと明記しています(コピーも不可)。紙の原本が手元にあるか、出かける前に確かめてください。お住まいの市でも同じ扱いかどうかは、窓口に電話で聞いておくと二度手間になりません。

自分で走らせない、という選び方もある

仮ナンバーを取るには、平日の昼に市役所へ行き、走る日の自賠責をそろえ、走り終わったら返しに行く必要があります。現場を抜けるのが難しいなら、整備工場に積載車で引き取りに来てもらう方法もあります。車を荷台に載せて運ぶので、車検の切れた車が自分で道路を走ることにはなりません。費用は工場に見積もってもらい、許可を取る手間と比べて決めればよいと思います。

仮ナンバーで自走する場合と、工場に運んでもらう場合の比較。自走は平日に窓口へ行き、走る日の自賠責が要り、決めた道以外は走れない。運んでもらえば窓口に行かずに済み、現場を抜けなくてよい。

都合の悪いことも書いておきます

  • 仮ナンバーは「ついでの用事」に使えない。許可証の経路を外れて資材を取りに寄ると、許可の外で走ったことになる
  • 返し忘れにも罰則がある。5日の期限は、走った日ではなく有効期間が終わった日から数える
  • 自賠責を1か月だけ入り直すと、その分の保険料がかかる。車検を通すなら、車検の期間に合わせた自賠責を工場でまとめて入るのが一般的
  • 切れたまま仕事に使った期間があるなら、それ自体が違反です。気づいた日から走らせない

まとめ

車検が切れた車は、距離に関係なく公道を走れません(道路運送車両法58条1項)。工場まで自走するなら、臨時運行の許可を受け、許可証の目的と経路のとおりに走らせます(34・35条)。許可は検査のための回送などに限られ、有効期間は5日以内、返すのは期間満了から5日以内。申請には走る日が入った自賠責の証明書の原本が要り、電子交付の証明書を受け付けない市もあります。条文は2026年10月11日にe-Gov法令検索で、窓口の扱いは同日に国土交通省と仙台市の案内で確認しました。お住まいの市町村の窓口・手数料は、必ず各自治体にご確認ください。

(出典:道路運送車両法34・35・36・58・108条、自動車損害賠償保障法5・86条の3(e-Gov法令検索の現行条文)/国土交通省「臨時運行の許可」手続案内/仙台市「自動車臨時運行許可(仮ナンバー)制度」)

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