一人親方が実印と認印を使い分けるとき|契約書に求められるのは署名または押印で、条文に「実印」の語はありません

結論からお伝えすると、一人親方の契約書に押す印は、法律の上では実印である必要がありません。民事訴訟法228条4項は、私文書に本人の署名または押印があれば、本人が作ったものと推定すると定めています。建設業法19条1項も、契約書に求めているのは「署名又は記名押印」です。どちらの条文にも、実印とは書かれていません。実印を求められたときは、それが相手の取り決めなのか、別の法令で必要なのかを、先に確かめることが大切です。

実印と認印は、何がちがうのか

実印は、市区町村に印鑑登録をした印です。登録すると、その印が本人のものであることを証明する印鑑証明書を取れます。認印は、登録していない、ふつうの印です。法律の条文に出てくる区別ではなく、登録という手続きがあるかどうかのちがいです。登録の窓口や手続きは、市区町村によって案内が異なるので、窓口で確かめてください。

  • 実印:市区町村に登録した印。印鑑証明書で本人だと示せる
  • 認印:登録していない印。屋号の入った角印もここに入る
実印と認印のちがいの比較図解

認印の契約書は、有効なのか?

有効です。民法522条2項は、法令に特別の定めがある場合を除き、契約の成立に書面の作成その他の方式は要らないと定めています。つまり、契約は口約束でも成り立ちます。ただし、建設工事の請負契約は、建設業法19条1項で、工事内容、請負代金の額、着工と完成の時期などを書面に書き、署名または記名押印をして相互に交付することが求められています。ここで求められるのは署名または記名押印で、実印とは限りません。書面を交わさずに受けた工事のリスクは、契約書を交わさずに受けた工事はどうなるか|一人親方が民法632条で押さえる3点にまとめています。

契約書の印と条文の言い方の図解

押した印は、あとで効いてくる

民事訴訟法228条4項により、本人の署名または押印がある私文書は、真正に成立したものと推定されます。争いになったとき、「自分は書いていない」と言うには、その推定を覆す必要があります。印を人に預けたり、白紙の書類に押したりすることが危ないのは、このためです。実印か認印かを問わず、印の保管と、押す前に中身を読むことが、いちばん効きます。

使い分けの目安

  1. 見積書・注文請書・請求書など、日々のやり取り:法律の上では認印で足りる
  2. 相手が実印と印鑑証明書を求めてきたとき:その理由と、何に使うかを聞いたうえで応じる
  3. 借入や保証が絡むとき:金額と、自分が背負う責任を読んでから押す

日々の書類の種類と使い分けは、一人親方が使い分ける見積書・注文請書・納品書・請求書|印紙が要るのは請書だけで扱っています。屋号を決める考え方は、一人親方の屋号の決め方|登記は要るのか、請求書と公表サイトに何を書くかにあります。

電子契約のときは、印がいらないのか

電子署名法3条は、電磁的記録に本人による電子署名が行われているとき、真正に成立したものと推定すると定めています。紙の押印にあたる位置づけです。電子契約サービスを使う元請が増えれば、印を押す場面は減っていきます。ただし、どのサービスのどの署名が3条に当たるかは、個別に確かめる必要があります。

まとめ

一人親方の契約書は、民事訴訟法228条4項と建設業法19条1項のとおり、法律の上では実印である必要がありません。実印を求められたら、相手の取り決めなのか法令で必要なのかを確かめ、理由と使い道を聞いてから応じてください。印鑑登録の手続きは市区町村の窓口で、契約の中身の判断は弁護士など専門家にご確認ください。

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