一人親方の請負代金はいつまで請求できるか|「工事代金は3年」は2020年3月までの話です

結論からお伝えすると、一人親方の請負代金は、2020年4月1日以降に結んだ契約なら「請求できると知った時から5年」か「請求できる時から10年」の、早いほうが過ぎるまで請求できます(民法166条1項)。現場でよく聞く「工事代金は3年で消える」は、改正前の民法170条2号の決まりで、2020年3月31日で終わっています。

3年前に納めた現場の残金が、まだ入っていない。元請けの担当は替わり、催促の電話も途切れたまま。「もう3年たったから無理だろう」と、請求書の控えを箱の底にしまう。その判断は、いまの民法では早すぎるかもしれません。

請負代金を請求できる期間の5年と10年、改正前の3年、古い契約の扱いを並べた図解

「工事代金は3年」は、どこから来たのか

改正前の民法170条は、3年で消える債権として「工事の設計、施工又は監理を業とする者の工事に関する債権」を挙げ、時効は「工事が終了した時から起算する」と書いていました。e-Gov法令検索の時点指定で2020年3月31日を開くとこの条文があり、2020年4月1日を開くと条文そのものがありません。職人の間に残っている「3年」は、この条文の記憶です。

いまは職種ごとの短い時効がなくなり、一般の債権と同じ166条1項で数えます。

  • 1号:権利を行使できることを知った時から5年
  • 2号:権利を行使できる時から10年

どちらか早いほうで終わります。一人親方が自分で請求書を出している代金なら、支払日を知っているのが普通なので、一般的には支払日から5年で考えることになります。

2020年3月より前の契約は、どう数えるのか?

民法改正法の附則10条4項は、改正前に生じた債権の時効の期間は「なお従前の例による」としています。しかも同条1項のかっこ書きで、債権が生じたのが改正後でも、その原因の契約が改正前なら、改正前に生じたものとして扱うと定めています。

つまり、2020年3月以前に結んだ契約の代金は、工事が終わってから3年という古い数え方のままです。いつの契約かで、使う物差しが変わります。

時効の期限が近いときに記録を残し書面で認めてもらい訴えなどへ進む手順の図解

期限が近いとき、止める方法はあるのか

  • 相手に認めてもらう:相手が支払う義務を認めると、そこから時効は新たに数え直しになります(152条1項)。一部でも入金があった、払うと書いた書面やメッセージが届いた、という記録は捨てないでください
  • 話し合いの合意を書面にする:協議を行う旨の合意を書面ですると、原則1年は時効が完成しません(151条1項)
  • 裁判所の手続きを使う:訴えや支払督促を出すと、その手続きが終わるまで時効は完成しません(147条1項)。判決などで確定すると、そこから10年になります(169条1項)
  • 内容証明で催告する:止まるのは6か月だけで、くり返しても延びません。詳しくは一人親方が相手に内容証明を送るときに書いています

都合の悪いことも書いておきます

時効は、期間が過ぎると自動で消えるわけではなく、相手が「時効です」と主張して初めて裁判で使われます(145条)。ただ、だからといって期限を過ぎた請求を当てにするのは危ういです。相手が主張すれば、それで終わります。

もう1つ、時効の期間を数える前に、そもそも支払日がいつだったのかが書面で残っていないと、起点の話ができません。注文書、請求書、入金の記録は、工事が終わってからも年単位で保管してください。支払いが遅れたときに動く順番は一人親方が支払いの遅い元請けに動く順番に、工事の不具合の期限との違いは一人親方が工事の保証を聞かれたときの答え方にまとめています。

まとめ

2020年4月以降の契約の代金は、知った時から5年・請求できる時から10年の早いほうまで請求できます。「工事代金は3年」は改正前の170条で、2020年3月までに結んだ契約にだけ残っています。期限が近いなら、一部入金や支払いを認める書面を残す、協議の合意を書面にする、裁判所の手続きを使う。個別の事情での判断は、弁護士や司法書士、法テラスなどにご相談ください。条文は2026年10月10日にe-Gov法令検索で確認しました。

(出典:民法145・147・151・152・166・169条、改正前の民法170条、民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)附則10条。いずれもe-Gov法令検索の条文)

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