一人親方が工事の保証を聞かれたときの答え方|「2年」は法律ではなく約款の数字です

結論からお伝えすると、工事の保証に法律が決めた年数はありません。民法が決めているのは年数ではなく、「不適合を知った時から1年以内に通知する」という期限だけです(637条1項)。現場でよく聞く「2年」は法律の数字ではなく、中央建設業審議会が決めた標準約款の数字です。ここを分けて覚えておくと、聞かれたときに詰まりません。

図解:工事の保証の期間を決めているもの5つ。知った時から1年の通知、時効は5年と10年、約款の2年、内装と機器は1年、新築住宅だけ10年

民法が決めているのは、年数ではなく通知の期限

民法637条1項はこう書いています。注文者が不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、追完の請求・報酬の減額・損害賠償・契約の解除ができない。起算点は「引き渡した日」ではなく「知った日」です。引渡しから5年たって見つかったものでも、知ってすぐ通知されれば入口は開きます。

では無期限かというと、そうではありません。債権の消滅時効(166条1項)が別に走っていて、権利を行使できると知った時から5年、行使できる時から10年で消えます。「知った時から1年」と「時効の5年・10年」の二階建て、これが法律側の形です。

なお、請求できる中身は559条を通じて売買の規定が準用され、修補などの追完請求(562条)、代金の減額(563条)、損害賠償と解除(564条)の4つになります。やり直し工事だけではない、ということです。

では「2年」は、どこから来たのか?

出どころは、中央建設業審議会が決定している民間建設工事標準請負契約約款(乙)です。個人住宅の建築など、民間の小規模工事の標準として作られたもので、直近の改正は令和7年12月2日。35条(契約不適合責任期間等)に、こう書かれています。

  • 引渡しを受けた日から2年以内でなければ、追完・損害賠償・減額・解除の請求等ができない(1項)
  • ただし建築設備の機器本体、室内の仕上げ・装飾、家具、植栽等は、引渡しの時に検査して直ちに追完を請求しなければ責任を負わない。検査で一般的な注意の下に発見できなかったものは、引渡しから1年まで(2項)
  • 期間内に不適合を知って通知していれば、通知から1年が経過する日までに根拠を示して請求すればよい(4項)
  • 民法637条1項は、この期間には適用しない(7項)
  • 受注者の故意または重過失によるものは、この期間の話ではなく民法どおり(6項)

内装や設備が1年側に置かれているのは、使えば減る物と、構造として残る物を分けているからです。クロスや床の仕上げ、換気扇や給湯器の機器本体は前者にあたります。聞かれたときに「内装は引渡しの検査で見てください、そこで見つからなかったものは1年です」と言えると、話が具体的になります。

契約書に書かなければ、どうなるのか

建設業法19条1項は、契約で書面に記載する事項を16個並べています。その13号がこれです。

工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容

語尾に注目してください。「するときは」です。保証の定めを置くこと自体は義務ではなく、置いたときに書面へ書け、という条文です。だから契約書に何も書かなければ「保証なし」になるのではなく、民法の形(知った時から1年の通知+時効)に戻ります。「うちは保証を付けていないので関係ありません」という説明は、条文とずれています。

10年になるのは、1つだけ

住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)94条1項は、住宅を新築する建設工事の請負契約について、引き渡した時から10年間、構造耐力上主要な部分または雨水の浸入を防止する部分の瑕疵について担保責任を負うと定めています。2項で、これに反する注文者に不利な特約は無効です。97条では、当事者の合意で20年まで伸ばせるとされています。

ここで押さえるべき線は2つあります。10年は「新築住宅」で「構造と雨水」の部分の話であって、リフォームや原状回復には当たりません。そしてもう1つ、住宅瑕疵担保履行法3条が供託または保険を義務づけている相手は「建設業者」=建設業法2条3項の許可を受けた者で、新築住宅を引き渡す場面の話です。改修専門の一人親方が「10年保証しないと違法」ということではありません。

指図どおりにやって出た不具合は、誰の責任か

民法636条は、注文者が供した材料の性質や、注文者が与えた指図によって生じた不適合については、注文者は追完・減額・賠償・解除を請求できないと定めています。ただし、請負人がその材料や指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは別です。

実務に直すと、材料支給で「これで貼ってくれ」と言われたとき、まずいと思ったらその場で伝えて、伝えた記録を残す。写真1枚とメッセージ1通で足ります。賠償の備え方は賠償の備えにまとめています。

図解:保証を聞かれたときの順番4段。年数は法律に無いと言う、自分の線を年数で言う、見つけたら連絡をと伝える、決めたことを書面に残す

聞かれたときに、何と言うか

  1. 「法律で何年と決まっているものではありません」と先に置く
  2. 「うちは引渡しから◯年、内装と機器は◯年で見ています」と自分の線を言う(標準約款の2年・1年が置きどころとして分かりやすい)
  3. 「見つかったら、まず連絡をください」と通知の話をする。637条も約款も、入口は通知です
  4. 決めたことは、その日のうちに書面かメッセージで残す(建設業法19条1項13号・2項)

見積の段階でここまで言えると、金額だけの比較から一段抜けます。見積書の組み立ては見積書の書き方を参照してください。

都合の悪いことも書いておきます

保証の年数を長く言えば仕事が取れる、という話ではありません。長く言った分は、そのまま自分が数年後に無償で動く約束になります。人を雇っていない一人親方にとって、3年後の無償の手直しは、その日の売上がゼロになるということです。言えない年数を言わないことも、信用の作り方です。

なお、ここに書いたのは条文と標準約款の一般的な説明で、個別の契約の結論ではありません。実際の契約書に特約がある場合はそちらが先に効きます。判断に迷う内容は、都道府県の建設業担当課や建設工事紛争審査会、弁護士など専門家に確認してください。

まとめ

  • 法律に「保証◯年」という定めはない。あるのは「知った時から1年以内の通知」(民法637条1項)と時効(166条1項)
  • 2年は民間建設工事標準請負契約約款(乙)35条の数字。内装・機器本体は1年側
  • 保証の定めは任意。書かなければ民法の形に戻る(建設業法19条1項13号)
  • 10年は新築住宅の構造と雨水の部分だけ(品確法94条)
  • 指図によるものは請求できない。ただし気づいて黙っていたら別(民法636条)

(出典:e-Gov法令検索 民法・建設業法・住宅の品質確保の促進等に関する法律・特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律/2026年9月16日時点、国土交通省 民間建設工事標準請負契約約款(乙)令和7年12月2日改正)

「保証は何年と言っていますか」は、人によって答えが違うところです。仕事を探している人の掲示板で、他の人の言い方を聞いてみてください。

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