一人親方が資材置き場を借りる前に|条文が止めているのは「倉庫業を営む倉庫」だけです
軽バンの後ろが、いつからか元に戻らなくなります。脚立が2台、足場板、養生材のロール、使いかけのクロスが4本、パテの缶。道具を降ろさないと材料が積めず、材料を降ろさないと道具が積めません。そろそろ置き場所を借りるか、という話になります。月1万5千円から2万円台の物件が、駅から離れれば見つかります。
結論からお伝えすると、借りる前に見るのは家賃ではなく、その土地の用途地域です。建物を借りるのか、青空の土地を借りるのかで、かかる法律が変わります。そして建築基準法が住居系の地域で止めているのは、多くの場合「倉庫業を営む倉庫」であって、自分の資材を置くだけの倉庫は、その条文には当たりません。
条文が止めているのは何か
建築基準法48条は、用途地域ごとに建てられる建物・建てられない建物を、別表第二に投げています(出典:e-Gov法令検索「建築基準法」)。書き方が二通りあるのが要点です。
- 第一種・第二種低層住居専用地域 … 別表第二に掲げられた建築物「以外」は建ててはならない。つまり許可リスト方式
- 第一種住居地域より緩い地域 … 別表第二に掲げられた建築物を建ててはならない。禁止リスト方式
第一種低層住居専用地域の許可リストは、住宅、共同住宅、学校、神社、老人ホーム、診療所などが並んでいます。倉庫はここに入っていません。だから建てられません。
いっぽう第二種住居地域の禁止リストを見ると、そこに書かれているのは「倉庫業を営む倉庫」です。倉庫業とは、他人の荷物を預かって保管する事業のことです。自分の資材を自分で置くだけなら倉庫業ではないので、この項目には当たりません。ここを「倉庫はダメ」と読んでしまうと、借りられる物件をかなり落とします。

工業専用地域は、安いけれど住めない
賃料だけ見ていくと、工業地域や工業専用地域の物件が安く出てきます。ただし工業専用地域の禁止リストには、住宅、共同住宅、寄宿舎、物品販売業を営む店舗、飲食店が並んでいます。
つまりその土地に住むことはできません。自宅兼事務所兼資材置き場、という形を考えているなら、工業専用地域は外れます。事務所の置き場所をどう考えるかは一人親方の事業所は自宅でいいのかに整理しています。
青空の資材置き場なら、用途地域は関係ないのか?
建物を建てないなら、建築基準法48条の用途制限はかかりません。ただし、別の法律が出てきます。都市計画法です。
都市計画法43条1項は、市街化調整区域のうち開発許可を受けた区域以外では、都道府県知事の許可を受けなければ建築物を新築できない、と定めています。プレハブやコンテナを置くと、それが建築物に当たるかどうかという判断が出てきます。
さらに、土地の区画形質を変える行為(造成、盛土、砕石を敷いて固めるなど)は開発行為に当たることがあります。「更地を借りて砕石を入れただけ」で手続きが必要になる場合があるということです。市街化調整区域の物件は賃料が安く出てきますが、ここで止まります。
コンテナを置く場合、建築物として扱われるかどうかは置き方と使い方で変わります。判断するのは市区町村の建築指導課です。借りる前に、住所を持って窓口で聞いてください。契約してから聞くと、引き返せません。
借りる前に確かめる6つ
- 用途地域 … 市区町村の都市計画図で確認できる。多くは自治体のサイトで見られる
- 市街化調整区域かどうか … 同じ図で分かる。該当するなら先に建築指導課へ
- 前面道路の幅と、トラックが入れるか … 軽バンで見に行くと判断を誤る
- 夜間・土日に出入りしてよいか … 早朝の搬出を嫌がる貸主はいる
- 電気が引けるか … 充電器と照明で必要になる
- 近隣との距離 … 早朝のシャッターの音は、思うより通る
4番目と6番目は条文の話ではありませんが、実際に解約の理由になるのはこちらです。朝6時に出る仕事をしているなら、契約前に「何時から出入りするか」を貸主へ正直に伝えてください。

借りずに済ませる選択も残す
置き場所を借りると、固定費が毎月出ていきます。月2万円なら年24万円です。その金額を、道具を借りる側に回す選択もあります。使用頻度の低い機材を持たずにレンタルで回せば、置き場所そのものが要らなくなります。分かれ目の計算は一人親方の道具は買うか借りるかで扱っています。
貸す側がどういう事情で空きスペースを出しているかは、アパートの駐車場が空いたままのときを読むと分かります。アパートの空き区画を資材置き場として借りられることがあるのは、この事情によります。
都合の悪いことも書いておきます
資材置き場は、盗難の的になります。人が常駐しない、夜間は無人、中に金目のものがある、という条件が揃います。車上荒らしの対策と同じ考え方が要ります(工具の盗難を防ぐ)。施錠だけでなく、外から中が見えないこと、動きが記録に残ることの二つで考えてください。
もうひとつ。置き場所ができると、物が減らなくなります。車に積みきれないから捨てていたものが、置けるようになって残ります。1年後に、使っていない材料の在庫が積み上がっていることは珍しくありません。借りるなら、年に一度は処分の日を決めてください。
なお、用途地域の判断や、置くものが建築物に当たるかどうかは、同じ用途でも自治体ごとに運用が違います。ここに書いたのは条文の構造です。個別の土地については、必ず市区町村の建築指導課と都市計画課に確かめてください。
まとめ
- 第一種・第二種低層住居専用地域は許可リスト方式。倉庫は載っておらず建てられない
- 住居系でも、禁止リストに載っているのは「倉庫業を営む倉庫」。自分の資材倉庫は該当しない
- 工業専用地域は安いが、住宅が建てられない。住居兼用なら外れる
- 青空の置き場でも、市街化調整区域なら都市計画法43条が出てくる
- 契約前に、住所を持って建築指導課へ行く


