見習いがつまずく単位と数え方|坪と畳だけで見積を書くと、法律のほうが先に止めます

朝、部屋に入ってすぐ先輩に聞かれます。「ここ、なんぼある?」。壁と天井を見渡して、こちらが返す言葉は三通りあります。「6畳です」「10坪くらいです」「28平米です」。三つとも同じ部屋を指していますが、紙に書いた瞬間、使ってよいものと、そうでないものに分かれます。

結論からお伝えすると、見積書や請求書に書いてよい単位は、計量法という法律で決まっています。面積なら平方メートル、長さならメートルです。坪・畳・才・間・尺は、この法律が並べている単位の中に入っていません。現場の会話で使うぶんには誰も止めませんが、取引の紙に単独で書くと、法律のほうが先に止めます。

現場で話す単位と、紙に書く単位は別のもの

計量法8条1項は、法定計量単位以外の単位を「取引又は証明に用いてはならない」と定めています。罰則もあり、173条1号で50万円以下の罰金です(出典:e-Gov法令検索「計量法」)。

ここで効いてくるのが「取引又は証明」という言葉です。見積書・請求書・契約書は取引の書面なので、この条文の対象に入ります。いっぽう、現場で「6畳の部屋」「4枚貼った」と話すのは取引ではありません。止まるのは口ではなく、紙のほうです。

法律が並べている単位はどれか

計量法3条は、法定計量単位を別表第一で示しています。内装の仕事で出てくるものだけ抜くと、こうなります。

  • 長さ … メートル
  • 面積 … 平方メートル
  • 体積 … 立方メートル、リットル
  • 質量 … キログラム、グラム、トン

この表に、坪も畳も才も間もありません。つまり非法定計量単位です。木材の体積で使う「才」、運送で使う「才」、床面積の「坪」、建具でいう「間」、いずれも同じ扱いになります。

では坪や畳は、いっさい書いてはいけないのか?

いいえ。実務では平方メートルを主にして、坪や畳をかっこ書きで添える形が広く使われています。条文が禁じているのは非法定の単位を「用いる」ことなので、法定計量単位で数量を示したうえで、読み手に分かりやすくするための補足を並べることまでは止めていません。

危ないのは逆の書き方です。「クロス張替え 10坪 ○○円」とだけ書いた見積は、数量を非法定の単位だけで示していることになります。しかも、坪は面積の単位なのに、クロスは壁と天井を貼るので床面積とは一致しません。法律の話を抜きにしても、この書き方は数量の根拠になりません。

内装の見積で使う5つの単位を並べた図。平方メートルは面で貼るクロスと床材、メートルは線で流す巾木と廻り縁、枚は建具、箇所は換気扇や水栓、人工は手間を日数で売るとき。

内装で実際に使う単位と、その数え方

現場で数量を出すとき、単位はだいたい次の五つに落ち着きます。

  1. 平方メートル … クロス、床材。面で貼るもの
  2. メートル … 巾木、廻り縁、コーキング。線で流すもの
  3. 枚 … 建具、扉、襖
  4. 箇所 … 換気扇、コンセントプレート、水栓
  5. 人工 … 手間だけを日数で売るとき

換算で覚えておくと早いのは二つです。6畳は約9.7平方メートル。そして6畳の部屋のクロスは、壁と天井を合わせて25〜30平方メートルになります。床の面積の約3倍です。「6畳だから10平米ぶん」と見積を出すと、実際の3分の1しか請求していないことになります。

量産クロスの手間請けは1平方メートル500円からが一つの目安で、500円は下限です。条件の良い空室で1日に貼れるのが50〜80平方メートルなので、6畳一部屋はだいたい半日の仕事、という見当が立ちます。数え方が分かると、単価と時間が同じ物差しの上に並びます。

数量を間違えると、単価ではなく数量で損をする

単価の交渉は相手がいる話ですが、数量の拾いはこちらの手元だけで完結します。拾い落としは、値切られたのと同じだけ手取りを削ります。しかも交渉と違って、相手は気づきません。

見積の数量を書くときは、単位を先に決めてから数えると取り違えが減ります。面で拾うのか、線で拾うのか、数で拾うのか。ここが混ざったままだと、同じ部屋を二度数えたり、天井を落としたりします。書き方の組み立ては一人親方の見積書の書き方で詳しく扱っています。図面から数量を読む順番は見習いが最初に覚える図面の見方が近い話です。

発注する側がこの数量をどう見ているかは、原状回復の見積書は「一式」の行から見るを読むと分かります。数量と単価に分かれていない行が、相手からどう見えているかが書かれています。

取引の紙に書いてよい単位とよくない単位を対比した図。非法定計量単位は坪・畳・間・尺・寸・才。法定計量単位は平方メートル・メートル・立方メートル・キログラム。計量法8条1項違反は50万円以下の罰金。

都合の悪いことも書いておきます

計量法の話は、現場で咎められることはまずありません。坪で書かれた見積は今も流通していますし、それで罰金を取られたという話も日常的には聞きません。ここを守る実益は、法律に触れないことより、数量の根拠がはっきりして揉めにくくなることのほうが大きいと考えたほうが実態に合います。

また、単位を平方メートルに揃えても、拾い方の基準(開口部を引くか引かないか、入隅の重ねをどう見るか)は会社ごとに違います。単位が同じでも数量が合わないことは普通にあります。最初の1件では、相手がどの基準で拾っているかを先に聞いてください。

なお、ここに書いたのは法律の条文と一般的な扱いです。実際の見積書の書式や税の扱いで迷ったら、取引先や税務署など、責任を持って答えられるところに確かめてください。

まとめ

  • 取引の紙に書く単位は計量法で決まっている。面積は平方メートル、長さはメートル
  • 坪・畳・才・間は非法定計量単位。平方メートルを主にして、添える形で使う
  • 6畳は約9.7平方メートル。クロスは壁と天井で25〜30平方メートル。床面積とは一致しない
  • 単価より先に、数量の拾い方を相手と揃える

\ 最新情報をチェック /