見習いが就業規則を見せてもらうとき|契約の中身になるのは、周知された規則です

結論からお伝えすると、就業規則は「会社が労働者に周知していて、内容が合理的」なときに、労働契約の内容になります。労働契約法7条の文言は「使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする」です。入社した見習いが「見せてください」と頼むのは失礼なことではなく、周知は会社が果たす側の責任です。労働基準法106条1項も、就業規則を労働者に周知させることを使用者に求めています。

就業規則は、どの会社にもあるのか

作成と届出が法律で義務づけられているのは、常時10人以上の労働者を使用する使用者です(労働基準法89条)。パートやアルバイトも人数に含めて数えるのが一般的な扱いで、数える単位は会社全体ではなく事業場(事務所や店舗など)ごとです。10人未満の会社は義務がないので、就業規則がないこと自体は違法ではありません。その場合は、入社のときにもらう労働条件の書面(労働基準法15条の明示)が、働く条件を確かめる手がかりになります。

周知の方法は3つに決まっている

労働基準法106条1項は、周知の方法を厚生労働省令に委ねていて、労働基準法施行規則52条の2が次の3つを挙げています。

  1. 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること
  2. 書面を労働者に交付すること
  3. 電子ファイルに記録し、各作業場に労働者が常時確認できる機器を設置すること

共通するのは「見たいときに見られる状態」であることです。社長の机の引き出しにしまってあり、頼まないと出てこない状態は、周知に当たるかどうかが問われやすいところです。最高裁は2003年(平成15年)のフジ興産事件で、就業規則が労働者を拘束するには周知の手続きが必要だという考え方を示しています。現場が日ごとに変わる職人は、事務所に置いてあるだけで足りるのかが分かれやすいので、コピーをもらうか、写真に撮ってよいかを最初に聞いておくと安心です。

「就業規則を見せてください」と頼んでよいのか?

頼んでかまいません。周知は会社の側の責任なので、見せること自体は特別な好意ではありません。言い出しにくければ「賃金の締め日と休みの決まりを確認したいので、規則を見せてください」のように、知りたい中身を添えると話が進みます。それでも見せてもらえない場合は、労働基準監督署の総合労働相談コーナーに相談できます。

就業規則が効く条件を5つのポイントでまとめた図解

読むときは、この3か所から見る

就業規則には、必ず書かなければならない事項があります(労働基準法89条1号〜3号)。見習いがまず確かめるのは次の3つです。

  • 始業・終業の時刻、休憩、休日、休暇(1号)
  • 賃金の決定・計算・支払の方法、締め日と支払日、昇給(2号)
  • 退職に関する事項。解雇の事由を含みます(3号)

「日給はいつの分をいつ払うのか」「休みの日はどう決まるのか」「辞めるときは何日前に言うのか」は、この3か所で確かめられます。書かれていない、あるいは曖昧なときは、そのまま質問の材料になります。賃金の締め日と支払日の考え方は職人の給料はなぜ翌月払いなのかの記事でも扱っています。

就業規則より有利な合意と不利な合意で扱いが違うことを比較した図解

契約の中身と規則が食い違ったらどうなるか

就業規則と個別の約束が違うときは、労働契約法7条ただし書きと12条で整理されます。規則の内容と異なる条件を、労働者と使用者が個別に合意していた部分は、その合意が優先されます(7条ただし書き)。一方、規則で定める基準に達しない労働条件を定めた労働契約は、その部分が無効になり、無効になった部分は規則の基準になります(12条)。規則より有利な約束は生き、不利な約束は規則の基準まで引き上げられる、という向きです。

たとえば規則に日給の定めがあるのに、面接で口頭でそれより安い日給を言われても、その安い部分は12条により無効になり、規則の基準になります。逆に、規則より高い日給を書面で約束してもらったなら、その約束を根拠に確かめることができます。口約束は後で確かめにくいので、条件は書面やメールに残しておくのが確実です。

規則が途中で変わったとき

会社が就業規則を変えて労働条件を変える場合は、労働契約法10条により、変更後の規則を周知したうえで、変更が合理的であることが必要です。合理的かどうかは、労働者の受ける不利益の程度、変更の必要性、変更後の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況などから判断されます。変更後の規則が見られる状態になっているか、自分に知らされたかを確かめておきましょう。

まとめ

就業規則は、周知され、合理的であるときに労働契約の内容になります(労働契約法7条)。10人未満の会社には作成の義務がなく、その場合は労働条件の書面が手がかりです。具体的な判断が必要な場面は、労働基準監督署や社会保険労務士に確認してください。

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