職人が電気の止まった空室で作業するとき|発電機は室内に入れず、明かりは投光器で

11月の夕方4時、退去したばかりの1Kに入る。玄関のスイッチを押しても明かりはつかず、分電盤のブレーカーを上げても変わらない。電気の契約が止まっている部屋です。窓を閉め切ったまま、車から小型の発電機を下ろそうとして、手が止まります。

結論からお伝えすると、電気の止まった空室に発電機を持ち込むのは、窓を開けても避けるのが基本です。労働安全衛生規則578条は、自然換気が不十分な場所で内燃機関を持つ機械を使うことを禁じており、製品評価技術基盤機構(NITE)も携帯発電機を室内で絶対に使わないよう呼びかけています。明かりはバッテリー式の投光器で取り、電気と水は作業日の前に管理会社へ手配を頼む。この順番で段取りを組むと、当日に困りません。

電気のない空室で作業するときの備え(発電機は室内に入れない、照度の目安、投光器は左右から、電気と水は元請けに頼む)

発電機を室内に入れてはいけないのはなぜか?

NITEは、携帯発電機の排ガスに含まれる一酸化炭素について「室内で使用した場合、短時間で急激に一酸化炭素の濃度が上昇し、知らぬ間に一酸化炭素中毒になり死亡事故に至るおそれがあります」と説明しています。一酸化炭素は色もにおいもありません。物置・倉庫・車内のように換気が悪い場所も同じ扱いです。

現場側の決まりでは、労働安全衛生規則578条が、坑やタンクの内部「その他の場所で、自然換気が不十分なところ」で内燃機関を持つ機械を使ってはならないと定めています。ただし書きで、排気ガスによる健康障害を防ぐために換気するときは使える、とされていますが、窓を1つ開けた程度でこの「換気」に当たると考えるのは危険です。閉め切った冬の空室は、条文が想定している「自然換気が不十分なところ」にかなり近い状態です。

どうしても発電機を使うなら、置き場所は屋外で、排気が窓や換気口から室内に入らない向きにする。これがNITEの説明どおりの使い方です。

明かりはどれくらい要るのか

労働安全衛生規則604条は、労働者を常時就業させる場所の作業面の明るさ(照度)を、作業の区分ごとに決めています。

  • 精密な作業:300ルクス以上
  • 普通の作業:150ルクス以上
  • 粗な作業:70ルクス以上

数日で終わる空室の現場がこの「常時就業させる場所」に当たるかどうかは別として、数字は目安になります。クロスの継ぎ目を合わせる、パテの段差を見る、といった作業は、明るさが足りないと仕上がりに出ます。同じ規則の605条1項は、照明は「明暗の対照が著しくなく、かつ、まぶしさを生じさせない方法」によるとしています。投光器1台を正面から当てるより、2台を左右から当てて影を消すほうが、この条文の考え方に沿います。

夕方の西日が入る時間は明るく見えますが、日が落ちると一気に手元が暗くなります。冬場は午後3時を過ぎたら、照明を先に据えておくと作業が止まりません。

電気と水は、誰に頼めば来るのか

空室の電気と水道は、部屋ごとの契約で止まっていることが多く、ブレーカーを上げても通電しないことがあります。職人が電力会社や水道局に直接申し込むものではなく、頼む先は発注してくれた元請けか、その先の管理会社です。

  1. 現地調査か見積の段階で、電気と水が使えるかを聞く。「使えます」と言われても、作業日までに止まることもあるので、前日にもう一度確かめる
  2. 使えないなら、開始の手配を頼む。手配に日数がかかることがあるので、作業日の数日前までに伝える
  3. 手配が間に合わないなら、段取りを変える。バッテリー式の工具と投光器でできる作業を先に回し、水を使う作業は後ろに回す
  4. 隣の部屋や共用部から電気や水を借りるなら、必ず許可を取る。黙って共用のコンセントを使うと、あとで揉める原因になります
空室の電気と水の手配の手順(見積のときに聞く、使えないなら開始を頼む、間に合わなければ順を変える、借りるなら許可を取る)

水回りでコードを使うときは、漏電に気をつける

電気が来て、浴室や洗面所で電動工具を使うときにも決まりがあります。労働安全衛生規則333条1項は、水などで湿っている場所で移動式・可搬式の電動機械器具を使うときは、感電防止用の漏電遮断装置を接続しなければならないと定めています。雇っている人に作業させるなら、これは事業者の義務です。

一人で作業する一人親方にこの条文が直接かかるわけではありませんが、濡れた床の上で延長コードをつなぐ危なさは同じです。漏電遮断器つきの延長コードを1本、車に積んでおくのが手間のかからない備えです。

都合の悪いことも書いておきます

  • バッテリー式の工具と投光器だけでは、長時間の作業で電池が足りなくなります。予備の電池と充電の段取り(車で充電できるか、前夜に満充電にしておくか)まで決めておかないと、午後に止まります
  • 電気と水の手配を頼んでも、間に合わないことはあります。その場合に工期をどうするかは、手配を頼んだ時点で元請けと話しておくと、あとで「遅れた」と言われずに済みます
  • ここで挙げた条文の多くは、人を雇っている事業者に向けたものです。自分の現場にどこまで当てはまるかは、迷ったら労働基準監督署に確認してください

まとめ

  • 電気の止まった空室に発電機は持ち込まない。使うなら屋外で、排気が入らない向きに
  • 照度の目安は、精密300・普通150・粗な作業70ルクス。投光器は左右2台で影を消す
  • 電気と水は、元請けか管理会社に作業日の数日前までに手配を頼む
  • 水回りでは漏電遮断器つきの延長コードを使う

冬の空室で体を冷やさない装備は未経験が冬の現場で揃える防寒装備|職人の寒さ対策は、法令では暑さと同じ列に並んでいるに、電動工具の電池を揃える話は職人が電動工具のバッテリーでメーカーを揃えるか|互換品は2025年12月から売る側の扱いが変わったにまとめています。

電気のない空室でどう段取りを組んでいるか。相談・雑談の掲示板に書き残してもらえると、同じ現場に入る人の材料になります。

※ 本文の条文は2026年9月25日時点の e-Gov 法令検索で確認しています。発電機の注意は製品評価技術基盤機構「携帯発電機『1.室内で使用して一酸化炭素中毒』」(同日確認)によります。

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