見習いの給料から勝手に引かれるとき|引けるのは法令で決まったものと、労使協定があるものだけです
結論からお伝えすると、給料から会社が勝手に引いてよいのは、法律で決まっているものと、労使協定を結んだものだけです。労働基準法24条1項は、賃金は通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならないと定めています。例外は「法令に別段の定めがある場合」と、事業場の過半数の労働者を代表する組合や代表者との書面による協定がある場合です。親方の口約束や、「うちはそういう決まりだ」だけでは、引く根拠になりません。
引いてよいもの、協定が要るもの
所得税の源泉徴収や社会保険料、住民税の特別徴収は、それぞれの法令に根拠があるので、協定なしで引かれます。それ以外のものは、書面の協定があって初めて引けます。見習いの給料で引かれがちなものを分けると、次のようになります。
- 法令が根拠:所得税、健康保険・厚生年金・雇用保険の保険料、住民税(特別徴収)
- 協定が要る:寮費・社宅の家賃、作業着や道具の代金、親睦会費、財形などの積立金
- 引けないことが多い側:壊した道具の弁償を一方的に差し引くこと(24条の例外に当たらない限り不可)、前借りと賃金の相殺(17条で禁止)
同意書に署名したら、何でも引いてよいのか?
署名したから有効、とは限りません。24条1項の例外は、法令の定めか、過半数代表者などとの書面協定です。本人が書いた同意書があっても、その控除が自由な意思に基づくものと言えるかは、あとから争われることがあります。さらに、協定は「引ける項目」を決めるものなので、協定にない項目まで引いてよいことにはなりません。

制裁としての減給は、別の上限がある
遅刻や無断欠勤の罰として給料を引くときは、就業規則に減給の制裁が書かれていることが前提で、91条の上限があります。1回の額は平均賃金の1日分の半額まで、総額は1賃金支払期の賃金総額の10分の1までです。たとえば遅刻した時間に働いていない分を引くのは別の話ですが、「罰」として引くなら、この上限を超えられません。
給料明細で確かめる4つの点
- 引かれている項目の名前(控除欄の一つ一つ)
- その項目が、法令で決まっているものか、協定に書かれたものか
- 協定の中身を見せてもらえるか(労使協定は、会社が見やすい場所への掲示などで労働者に知らせる義務がある。106条)
- 引かれた額が、入社時に聞いた条件と合っているか
就業規則の見せてもらい方は見習いが就業規則を見せてもらうときの記事にまとめています。弁償をめぐる扱いは見習いが現場で失敗したときの報告の順番で書きました。

引かれるのを断りにくい雰囲気のとき
見習いの立場だと、親方に「寮費はここから引く」「作業着代は初月に全部引く」と言われて、断りにくいことがあります。24条2項は、賃金を毎月1回以上、一定の期日を定めて支払うことも求めています。給料日が不定だったり、「現場が終わったら渡す」と言われたりするときも、24条の問題として整理できます。まず金額と項目を言葉にして書き出し、根拠を尋ねる準備をしてください。
納得できないときの動き方
まず会社に、控除の根拠(法令か、協定か)を書面で尋ねてください。答えがなければ、労働基準監督署に相談できます。未払いになっている賃金については、請求できる期間が決まっているので、明細は捨てずに残しておいてください。税や社会保険の扱いは、税務署、年金事務所、社会保険労務士などにもご確認ください。
まとめ
給料から引いてよいのは、法令で決まったものと、書面の労使協定があるものだけです(労働基準法24条1項)。弁償や罰としての減給には別の制限があります。明細の控除欄を一つずつ確かめ、根拠が説明されないときは労働基準監督署に相談してください。
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