見習いが会社の不正に気づいたとき|通報を理由にした解雇は無効で、12月1日から罰則がつきます

結論からお伝えすると、会社の不正を会社の窓口や役所に知らせたことを理由に見習いを解雇しても、その解雇は無効です。公益通報者保護法3条がそう定めています。さらに2026年12月1日からは、解雇や懲戒に罰則がつき、「通報しない」と約束させる行為や、通報した人を探す行為も禁じられます。ただし守られるのは、法律が定めた「罪」や「過料」にあたる事実を、決められた相手に知らせた場合です。何でも通報すれば守られるわけではありません。

通報の対象になるのは「罪にあたる事実」

この法律が対象にする「通報対象事実」は、別表に載っている法律(刑法、食品衛生法、個人情報保護法ほか、政令で定めるもの)に規定する罪の犯罪行為の事実と、過料の理由になっている事実です(2条3項)。政令には、建設業法、労働基準法、労働安全衛生法、建築基準法、最低賃金法なども入っています。つまり、残業代を払わない、安全対策を取らずに高所作業をさせる、といった法律違反は対象になり得ます。

  • 対象になり得る例:賃金の未払い(労働基準法24条違反には罰金の定めがあります)、法令で決まった安全措置を取らない作業
  • 対象外になりやすい例:社内ルールに反しただけ、上司の態度が悪い、道義的にどうかという話
  • 通報する目的が、不正の利益を得ることや相手に損害を与えることだと保護されません(2条1項)
通報で守られる5つのポイントをまとめた図解

誰に知らせれば守られるのか

通報先は3つに分かれていて、先に進むほど条件が重くなります(3条)。

  1. 会社の窓口や、会社が決めた相手:不正が生じている、またはまさに生じようとしていると思う(思料する)だけで足ります
  2. 処分や勧告をする権限のある行政機関:そう信じるに足りる相当の理由があるか、または、氏名・住所、通報する事実、そう思う理由、必要な措置を書いた書面を出す場合です
  3. 報道機関など、被害を防ぐのに必要な人:相当の理由があり、そのうえで「行政に言えば解雇される」「証拠を消される」「書面で通報して20日たっても調査の通知がない」などの事情が必要です

自分の会社ではなく、元請けの不正でも通報できるのか?

できます。2条1項は、通報する人が自分の会社の労働者であるときのほか、自分の会社が請負契約で入っている別の事業者の事業に従事している労働者のときも、その別の事業者への通報を保護の対象にしています。元請けの現場で下請けの見習いが気づいた不正も、条文の上では対象です。また、退職してから1年以内であれば、通報の日の前1年以内に使用されていた会社への通報として扱われます。

守られるのは解雇だけではない

現行法では、通報を理由にした解雇は無効(3条)、降格・減給・退職金の不支給などの不利益な取扱いは禁止(5条1項)です。通報によって会社に損害が出たとしても、会社はその賠償を請求できません(7条)。ここまでは今日から使えます。

現行ルールと2026年12月1日からのルールを比べた図解

2026年12月1日から何が変わるのか

令和7年法律第62号による改正が、2026年12月1日に施行されます。e-Govの条文で確かめると、新しい条文では次のようになっています。

  • 解雇と、懲戒としてされた不利益な取扱いが無効になり、違反すると6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金。会社には3,000万円以下の罰金もあります(3条、21条、23条)
  • 通報から1年以内の解雇や懲戒は、通報を理由にされたものと推定されます(3条3項)
  • 正当な理由なく、通報しない約束を求めたり、通報すると不利益になると告げたりして通報を妨げてはいけません。そのような合意は無効です(11条の2)
  • 通報者だと明らかにするよう求めるなど、通報者を特定する目的の行為も禁止されます(11条の3)

あわせて、従業員を使わずに業務委託を受けて働く個人も、通報の対象者に加わります(2条1項3号)。一人親方がこれに当たるかどうかは、契約の形によって変わるので個別の確認が必要です。

気づいたときに、まずやること

  1. 日付、場所、何が起きたかを、自分のメモや写真に残す(会社の資料を持ち出す前に、持ち出してよいものか確かめる)
  2. それが「罪」や「過料」にあたる話か、社内ルールの話かを見分ける
  3. 社内の窓口があるか、就業規則で確かめる
  4. 迷ったら、労働基準監督署や総合労働相談コーナーで、通報の前に相談する

就業規則の見せてもらい方は見習いが就業規則を見せてもらうときにまとめています。けがや安全の問題が中心なら、見習いがけがをしたとき会社が負う配慮もあわせてどうぞ。

まとめ

通報を理由にした解雇は無効で、通報で会社に損害が出ても賠償は請求されません。2026年12月1日からは、解雇や懲戒に罰則がつき、通報の妨害や通報者探しも禁じられます。個別の判断は、労働基準監督署、社会保険労務士、弁護士に確認してください。(出典:公益通報者保護法、e-Gov法令検索、2026年10月1日時点の現行条文と同年12月1日施行分の条文)

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