見習いがアーク溶接を習う前に受ける教育|特別教育は学科11時間・実技10時間で、ガスで切るのは別の資格です

結論からお伝えすると、見習いがアーク溶接機で金属を溶接したり切ったりする前には、会社が行う特別教育を受けることが必要です(労働安全衛生法59条3項、労働安全衛生規則36条3号)。時間は学科11時間・実技10時間です。一方、ガスと酸素の炎で切る作業は別の扱いで、技能講習の修了などの資格がないと就けません。

天井の下地に使う鉄の部材を、端だけ溶接で止めたい。先輩が溶接機のケーブルを伸ばして「ちょっとやってみるか」と言う。面を構えて10秒当てれば終わる作業に見えます。この記事では、その10秒の前に何が必要なのかを、規則の原文で順番に確かめます。

アーク溶接の前に確かめる教育・資格・保護具・光の区切りの4点を並べた図解

どの作業が「アーク溶接等」に入るのか

規則36条3号は、特別教育が要る業務として「アーク溶接機を用いて行う金属の溶接、溶断等」を挙げています。ここで押さえておきたいのは次の2点です。

  • 溶断も入る:くっつける作業だけでなく、アークで鉄を切る作業も同じ号に入ります
  • 短い作業でも入る:条文に「何分以上」「何か所以上」という線はありません。1か所の仮止めでも業務は業務です

教育を受けさせずに就かせた場合、罰則の対象は会社です(労働安全衛生法119条1号=6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)。

教育は何時間で、何を習うのか

厚生労働省が公表している特別教育の科目と時間の表では、アーク溶接等の業務は次のとおりです。

  1. アーク溶接等に関する知識:1時間
  2. アーク溶接装置に関する基礎知識:3時間
  3. アーク溶接等の作業の方法に関する知識:6時間
  4. 関係法令:1時間
  5. 実技(装置の取扱いと作業の方法):10時間

合わせて21時間です。学科の半分以上が「作業の方法」に充てられています。手を動かす前に、感電と火花の飛び方を頭に入れる時間が長く取られているということです。受け方と費用の考え方は見習い職人の特別教育の受け方と費用に、電気の教育は見習いが低圧の電気を扱う前に受ける教育にまとめています。

アーク溶接機とガスと酸素の炎で、必要な教育や資格が違うことを比べた図解

ガスで切るのは、同じ教育でいいのか?

よくありません。労働安全衛生法施行令20条10号は「可燃性ガス及び酸素を用いて行なう金属の溶接、溶断又は加熱の業務」を、資格のある人しか就けない業務に入れています(労働安全衛生法61条1項)。アーク溶接の特別教育を受けていても、ガスの炎で切る作業には就けません。

こちらは本人にも罰則があります。資格のない人がその業務をしてはならないと決められており(同法61条2項は条文上「当該業務を行なつてはならない」)、違反すると50万円以下の罰金です(労働安全衛生法120条1号)。「言われたからやった」は、本人の側の言い訳になりません。

溶接の煙は、何で防ぐのか

金属をアークで溶かすと出る細かい煙(溶接ヒューム)について、特定化学物質障害予防規則38条の21が会社の義務を並べています。この条文は2021年4月1日から置かれたもので、e-Gov法令検索の時点指定で2021年3月31日を開くと、条文が存在しません。

  • 呼吸用保護具を使わせる:作業に就かせるときは、有効な呼吸用保護具を使わせる(5項)
  • 請負の人にも伝える:作業の一部を請け負わせるときは、保護具が必要なことを請負人に知らせる(6項)
  • 屋内で続けて行う場所は測る:作業の方法を新しくするときは、体に付ける機器で煙の濃さを測る(2項)
  • 面体付きは装着を確かめる:1年以内ごとに1回、正しく着けられているかを確かめ、記録を3年残す(9項)

もう1つ、アークの光そのものにも決まりがあります。強い光が出て危ない場所は区切り、適当な保護具を備えることとされています(労働安全衛生規則325条)。隣で別の作業をしている人の目も守る、という考え方です。

まとめ

アーク溶接機で溶接・溶断をするなら、学科11時間・実技10時間の特別教育が先です。ガスと酸素の炎で切るのは別の業務で、技能講習の修了などがないと本人も罰金の対象になります。煙には呼吸用保護具、光には区切りと保護具。言われてすぐ面を構える前に、「教育はまだです」と言える状態にしておくことが、見習いの身を守ります。条文は2026年10月10日にe-Gov法令検索で確認しました。自分の現場の扱いは、会社の安全担当や労働基準監督署にご確認ください。

(出典:労働安全衛生法59・61・119・120条/同法施行令20条10号/労働安全衛生規則36条3号・325条/特定化学物質障害予防規則38条の21。いずれもe-Gov法令検索の現行条文。時間数は厚生労働省「別表5(別紙)」特別教育の科目と時間の表)

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