一人親方が元請けを1社に絞るか増やすか|6か月続くと相手に予告義務が付く

結論からお伝えすると、元請けを増やすか1社に絞るかは、法律の側から見ると通説と逆の答えが出ます。取引が1社と長く続くほど、その元請けに課される義務は増えていきます。段が変わるのは「1か月」と「6か月」の2か所です。分散させて1社あたりの期間を短くすると、この義務の外へ自分から出ることになります。

本数を決める前に、まず自分の取引が今どちらの側にいるのかを数えてください。

「1社に依存するな」は、どこから出てきた話か

元請けを増やすべきだという助言は、ほぼ例外なく入金の側から語られます。1社が止まれば売上が全部止まる、支払いが遅れたときに逃げ場がない、単価を下げられても断れない。どれも本当のことで、資金繰りの話としては正しいものです。

ただしこれは「相手が倒れたとき、自分がどれだけ困るか」を測っているだけで、相手が自分に対して何をしてはいけないかは数えていません。そちらは2024年11月1日に施行されたフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が別の物差しで決めています。

この法律でいう「特定受託事業者」は、同法2条1項1号で「個人であって、従業員を使用しないもの」と定義されています。人を雇っていない一人親方は、そのまま当てはまります。

取引が続くほど元請けに付く義務。支払いは受領から60日以内、1か月以上で5つの禁止行為、6か月以上で配慮の義務と30日前の予告、予告後は理由の開示請求。

1か月と6か月で、相手に付く義務が変わる

まず、期間に関係なく全部の取引に付くものがあります。同法4条1項は、報酬の支払期日を「給付を受領した日から起算して六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において」定めなければならないとしています。条文には「検査をするかどうかを問わず」と書かれているので、検収待ちは理由になりません。

元請けがさらに上から受けた仕事を回してくる再委託の場合は、同条3項でもっと短くなります。元の発注者から元請けへの支払期日から起算して30日以内です。ただしこれは、再委託である旨と元の発注者の名前、元の支払期日を明示された場合に限られます。

ここから先が、期間で段が変わる部分です。

1か月以上続くと、5つの禁止行為が付く

同法5条1項は、「政令で定める期間以上の期間行うもの」の業務委託について、次の行為を禁じています。政令で定める期間は、同法施行令1条で1月と決められています。

  • 職人側に落ち度がないのに、仕上げたものの受け取りを拒むこと
  • 職人側に落ち度がないのに、報酬を減らすこと
  • 職人側に落ち度がないのに、受け取ったあとで引き取らせること
  • 同じような仕事に通常支払われる対価に比べて著しく低い報酬を不当に定めること
  • 正当な理由なく、自分の指定する物を強制して買わせ、役務を強制して使わせること

4つ目が、いわゆる買いたたきです。単発で1回だけ受けた仕事には、この5つが付きません。同じ元請けと1か月以上続けて、はじめて条文の対象になります。

6か月以上続くと「継続的業務委託」になる

同法13条1項は、業務委託のうち政令で定める期間以上のものを「継続的業務委託」と名付けています。この政令の期間は、施行令3条で6月です。契約の更新で通算6か月以上になる場合も含みます。

継続的業務委託になると、2つのことが起きます。

1つは13条1項で、妊娠・出産・育児・介護と両立できるよう、申出に応じて必要な配慮をしなければならないことになります。6か月に届かない取引では、同条2項で「配慮をするよう努めなければならない」という努力義務にとどまります。義務と努力義務の差が、6か月という1本の線で付いています。

もう1つが16条です。

「更新しないだけ」でも予告が要るのか

要ります。同法16条1項は、継続的業務委託に係る契約の解除をしようとする場合には、少なくとも30日前までに予告しなければならないと定めていますが、この「解除」には条文自身のかっこ書きで「契約期間の満了後に更新しない場合を含む」と書かれています。

現場では、来月から声がかからなくなって終わり、という切れ方をすることがあります。6か月以上続いた元請けがそれをやると、条文の上では予告義務の話になります。災害その他やむを得ない事由がある場合などは除かれますが、それは厚生労働省令で定める場合に限られます。

さらに16条2項で、予告された日から契約が満了する日までの間に、職人の側から解除の理由の開示を請求できます。請求されたら、相手は遅滞なく開示しなければなりません。「合わなかったから」で終わらせずに済む条文が、すでに用意されています。

分散させると、この段から自分で降りることになる

ここが、はじめに書いた「通説と逆」の中身です。

元請けを3社に散らし、1社あたりの取引が数か月ずつで入れ替わる形にすると、どの1社とも6か月に届かないため、16条の予告義務は付きません。短い付き合いを繰り返して1か月に届かない相手が混じれば、5条の5つの禁止行為もその相手には付きません。入金が止まる範囲は確かに狭くなりますが、法律が用意した保護は薄くなります。

逆に1社に集中していると、別の条文が近づいてきます。独占禁止法2条9項5号の優越的地位の濫用です。取引を他に替えられない状態そのものが、相手を優越的地位に立たせる方向に働きます。「集中しているから弱い」と「集中しているから守られる」は、同時に成り立ちます。

複数に散らした場合と同じ元請けが6か月続く場合の比較。散らすと16条の予告義務が付かず、続くと解除も不更新も30日前予告と理由の請求が付く。

数えるのは社数ではなく、1社あたりの月数

フリーランス法は、元請けを何社持つべきかを1文字も書いていません。書いてあるのは、1社との取引がどれだけ続いているかだけです。だとすれば、手元で数えるべき数字も社数ではありません。

  1. 元請けごとに、最初に仕事を受けた日と直近に受けた日を並べる
  2. そのあいだが1か月を超えているかを見る(5条の対象かどうか)
  3. 次に6か月を超えているかを見る(13条・16条の対象かどうか)
  4. 6か月を超えている相手が1社もないなら、予告義務のある取引をいま持っていないということです
  5. そのうえで、売上のうち1社が占める割合を出す。ここではじめて資金繰りの話に戻る

断続的に声がかかる相手は、判断が分かれます。契約の更新によって通算で期間以上になる場合も含むと条文にはありますが、都度の発注が別々の契約と読めるのか一続きと読めるのかは、条件によって変わります。ここは自分で決めずに、都道府県の労働局か、フリーランス・トラブル110番のような公的な相談窓口で、契約書と発注の履歴を見せて確認してください。

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発注する側がこの分散をどう見ているかは、職人に直接頼むとオーナー側に来る3つの役目|築古アパートで元請を外す前に確かめることが反対側から書いています。相手の事情が分かると、交渉の言葉が変わります。

元請けとの付き合い方で迷っていることがあれば、仕事を探している人の掲示板で聞いてみてください。同じ立場の職人が、実際にどう散らしているかを書き込んでいます。

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