一人親方がケガで休むときの備え|労災の休業補償は4日目からで、最初の3日は誰も払いません

結論からお伝えすると、一人親方が業務上のケガで休んだとき、お金が入りはじめるのは休んだ日の4日目からです。最初の3日は1円も出ません。雇われている職人にはこの3日分を払う相手がいますが、一人親方にはいません。そしてケガをしたあとに給付の額を上げることはできません。備えの中身は、ケガをする前の3月にほぼ決まっています。

休んだ日に入るお金をまとめた図。最初の3日は出ない、休んで4日目から60パーセント、申請すれば20パーセントが乗る、日額の変更は3月2日から31日、滞納した月は出ないことがある、業務外の病気は対象外。

4日目から、という線は条文に書いてある

休業補償給付は、労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のため労働することができないために賃金を受けない日の第四日目から支給するものとし、その額は、一日につき給付基礎日額の百分の六十に相当する額とする(労働者災害補償保険法14条1項)

一人親方の特別加入は、団体を「適用事業及びその事業主」とみなし、加入者を「その適用事業に使用される労働者とみなす」という組み立てです(同法35条1項1号・3号)。だから14条の「労働者」に読み込まれ、4日目からという線もそのまま自分にかかります。

60%ではなく80%になる仕組み

実際に振り込まれる額は60%ではありません。もうひとつ、省令に基づく給付が乗ります。

休業特別支給金は(略)療養のため労働することができないために賃金を受けない日の第四日目から当該労働者に対し、その申請に基づいて支給するものとし、その額は、一日につき休業給付基礎日額の百分の二十に相当する額とする(労働者災害補償保険特別支給金支給規則3条1項)

60%と20%で、合わせて1日あたり給付基礎日額の80%です。ただし特別支給金は「その申請に基づいて」と書かれています。休業補償給付の請求書と同じ様式で申請する運用ですが、出さなければ20%分は入りません。

では、最初の3日は誰が払うのか?

雇われている職人の場合、この3日分にも払う相手がいます。

労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない(労働基準法76条1項)

労災保険から給付が行われるべき期間は、使用者が補償の責を免れます(同法84条1項)。しかし待期の3日間は労災保険から給付が出ないので、免責が働かず、使用者の義務が残ります。だから雇われている人は3日目までも平均賃金の60%を受け取れます。

76条の主語は「使用者は」です。一人親方には使用者がいないので、この条文には義務者が存在しません。3日分は、法律の側に払う人がいない。これが一人親方の休業補償のいちばん薄いところです。

あわせて覚えておくことがあります。労基法の災害補償は「業務上」の負傷・疾病を対象にしています(同法75条1項)。通勤中のケガは労基法の災害補償の対象外なので、雇われていても3日分は出ません。一人親方の特別加入では通勤災害も給付の対象になりますが、そこも4日目からです。何が守られる行為なのかは一人親方が独立後に組む1週間の型で扱いました。

給付基礎日額を1段上げると、休んだ月にいくら変わるのか

給付基礎日額は3,500円から25,000円まで16段階で、申請に基づいて労働局長が決定します。建設の事業の第2種特別加入保険料率は17/1000です(出典:厚生労働省「特別加入制度のしおり(一人親方その他の自営業者用)」表4・表5)。

業務上のケガで30日休んだ場合を、2つの日額で並べます。給付が出るのは4日目からなので、対象は27日です。

  • 給付基礎日額3,500円…年間保険料21,709円。1日2,800円(80%)で27日分=75,600円
  • 給付基礎日額10,000円…年間保険料62,050円。1日8,000円(80%)で27日分=216,000円

年間の保険料の差は40,341円、30日休んだときの給付の差は140,400円です。1か月休むだけで、保険料の差は埋まります。日額を低く申請しているのは、保険料を下げるかわりに、休んだ日の手取りを下げているのと同じです。

ケガをしたあとでは、日額を上げられない

ここが期限の話です。しおりには、変更の手続きについてこう書かれています。

災害発生前に申請することが前提になります。給付基礎日額変更申請書を提出する前に災害が発生している場合は、当年度の給付基礎日額変更は認められません(同しおり)

変更申請ができるのは3月2日から3月31日まで(翌年度から適用)と、労働保険の年度更新期間中(当年度に適用)です。ケガをしてから慌てて出しても間に合いません。今の自分の日額がいくらなのか分からない人は、加入している団体に今日聞いてください。日額は保険料の領収書や加入証に書かれています。

もうひとつ、滞納にも条文があります。事故が第2種特別加入保険料の滞納期間中に生じたときは、政府は保険給付の全部または一部を行わないことができます(労災保険法35条1項7号)。団体の会費を止めた月に落ちるのは、労災そのものです。

給付基礎日額3,500円と10,000円を比べた図。3,500円は年間保険料21,709円で1日2,800円、27日分で75,600円。10,000円は年間保険料62,050円で1日8,000円、27日分で216,000円。

業務外の病気は、労災では1円も出ない

インフルエンザ、腰の慢性的な痛み、休日の事故。これらは業務上の負傷・疾病ではないので、労災保険の休業補償給付は出ません。では健康保険側から出るのか。ここに国民健康保険の特徴があります。

市町村及び組合は、前項の保険給付のほか、条例又は規約の定めるところにより、傷病手当金の支給その他の保険給付を行うことができる(国民健康保険法58条2項)

「行うことができる」です。会社の健康保険では法律上の義務として支給される傷病手当金が、国民健康保険では任意給付になっています。市町村国保でこれを条例に置いている例はごく限られます。一方、国民健康保険組合は「規約の定めるところにより」実施できる立場なので、組合によっては傷病手当金があります。加入先を選ぶ段階で、ここを見ておく価値があります国民健康保険と建設国保、どちらが得か一人親方が入る団体と組合の選び方)。

都合の悪いことも書いておきます

労災の特別加入は「休んだ日の収入」と「治療費」を見る制度で、それ以外は見ていません。壊した物の賠償は1円も出ません(一人親方の賠償の備え)。そして80%という数字は給付基礎日額の80%であって、実際の売上の80%ではありません。日額10,000円で申請している人の実際の1日の粗利がそれより大きければ、その差は埋まりません。

民間の所得補償の保険や共済で上を足す方法もありますが、そちらは告知や免責期間の条件が商品ごとに違います。まず公的なほうの日額を適正にしてから、足りない分を考える順番にしてください。

休みが工事の進み方に与える影響は、頼む側からも見えています(大家が工期を延ばされたときに聞くこと)。連絡の順番を先に決めておくと、休んだ日に現場が止まりません。

まとめ

  1. 休業補償給付は4日目から、給付基礎日額の60%(労災保険法14条1項)
  2. 休業特別支給金20%は申請に基づく。出さなければ入らない(特別支給金支給規則3条1項)
  3. 最初の3日は、雇われなら使用者が60%を払う(労基法76条1項・84条1項)。一人親方には義務者がいない
  4. 日額3,500円と10,000円では、30日休んだときに140,400円ちがう
  5. 日額の変更は3月2日から3月31日か年度更新期間中。災害発生前の申請が前提
  6. 業務外の病気は労災の対象外。国保の傷病手当金は任意給付(国民健康保険法58条2項)

労災の給付の可否や金額は、個々の事情で判断が変わります。加入と請求の手続きは、加入している特別加入団体と所轄の労働基準監督署でご確認ください。傷病手当金の有無は、市町村の国保担当窓口か加入している国保組合にお問い合わせください。

実際に休んだ人がどう回したのかは、話を聞いてみるのが早いです。相談・雑談のフォーラムで聞いてみてください。使い方はこちらにまとめてあります。

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