一人親方が独立後に組む1週間の型|労災が守るのは時間ではなく、5つの行為
結論からお伝えすると、一人親方の1週間は「現場に出る日を並べる」だけでは組めません。理由は2つあります。ひとつは、勤めのときに自分を止めてくれていた条文が、独立した日から効かなくなること。もうひとつは、労災の特別加入が守っているのが「働いている時間」ではなく、あらかじめ決められた5つの行為だからです。ここを知らずに週を組むと、いちばん働いている時間帯が保険の外に出ます。
独立した日から、止めてくれる条文がなくなる
労働基準法9条は、この法律の「労働者」をこう定めています。
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう(労働基準法9条)
労働時間の上限を決めた32条(休憩を除き1週間40時間、1日8時間)も、休日を決めた35条(毎週少なくとも1回、または4週間を通じ4日以上)も、主語は「使用者は、労働者に」です。一人親方は賃金を払われる立場ではないので、この2つの条文は自分には向いていません。
見習いのときに「今日はもう上がれ」と言われていたのは、親方の親切だけではありませんでした。職人の休みは週にどれくらい取れるのかで扱った週1日という線も、雇われている人に向けたものです。

労災が守るのは「時間」ではなく5つの行為
建設業の一人親方は、団体を通じて労災保険に特別加入できます(労働者災害補償保険法33条3号・35条)。対象になる事業の種類は施行規則46条の17第2号で、条文には「土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、原状回復、修理、変更、破壊若しくは解体又はその準備の事業」と、原状回復が名指しで入っています。
問題はその次です。厚生労働省の「特別加入制度のしおり(一人親方その他の自営業者用)」は、保険給付の対象が「加入者ごとに一定の業務を行っていた場合に限られています」と書き、建設業の一人親方等について次の5つを挙げています。
- 請負契約に直接必要な行為を行う場合
- 請負工事現場における作業およびこれに直接附帯する行為を行う場合
- 請負契約に基づくものであることが明らかな作業を自家内作業場において行う場合
- 請負工事に関する機械や製品を運搬する作業(手工具類程度のものを携行して通勤する場合を除く)およびこれに直接附帯する行為を行う場合
- 突発事故(台風、火災など)により予定外に緊急の出勤を行う場合
(出典:厚生労働省「特別加入制度のしおり(一人親方その他の自営業者用)」)
読み方を変えると、こうなります。加入していれば1日中守られる、ではありません。その時間に自分が何をしていたかで分かれます。1番の「請負契約に直接必要な行為」には、見積りや現場での打ち合わせが入ります。3番は自宅ではなく自家内作業場での作業です。加工場を持っている人の作業台は、ここに乗ります。
腰道具だけで現場へ向かう朝は、どちらに入るのか?
4番のかっこ書きを、もう一度読んでください。「手工具類程度のものを携行して通勤する場合を除く」とあります。つまり腰道具だけ持って現場へ向かう朝は、4番の「運搬する作業」には入りません。
では守られないのか。そこは別のところで拾われます。同じ資料は通勤災害について「一般の労働者の場合と同様に取り扱われます」とし、保護の対象外になる一人親方等として個人タクシー業者・個人貨物運送業者と漁船による自営漁業者だけを挙げています。建設業の一人親方はこの除外に入っていません。
逆に、材料や機械を積んで走る日は4番の側です。同じ道を同じ車で走っていても、荷台に何を積んでいるかで入口が変わります。
この5つは、法令の本文には書かれていない
探しても条文には出てきません。認定のしかたを決めているのは省令の一行です。
法第三十三条各号に掲げる者に係る業務災害、複数業務要因災害及び通勤災害の認定は、厚生労働省労働基準局長が定める基準によつて行う(労働者災害補償保険法施行規則46条の26)
基準そのものは法令ではなく行政の側にあり、公表されている形はさきほどのしおりです。だから「条文を読んでも出てこない」のは当然で、加入するときに渡される資料が実質の基準書になります。団体を替えても中身は同じです。団体選びそのものは一人親方が入る団体と組合の選び方で整理しています。

1週間を「行為」で割ると、こう並ぶ
5つの行為に合わせて週を割ると、置き場所が決まります。ひとつの型として挙げます。
- 現場に出る日(4日)…2番。作業と、その直接附帯する行為
- 段取りと見積りの半日…1番。現場調査、打ち合わせ、見積りの作成
- 材料を積んで走る半日…4番。仕入れと搬入をここに寄せる
- 加工場での作業…3番。作業場を持っているなら、下ごしらえをここに集める
- 請求と帳簿の時間…どこにも入りません。だからいちばん後ろに置かれ、いちばん飛びます
最後の1行が、この記事でお伝えしたいところです。請求と記帳は、労災の5つの行為のどこにも当てはまりません。保険の外だから危険という話ではなく、制度の側から見て「その時間は仕事として数えられていない」ということです。誰も催促しないので、独立して最初に落ちるのがここになります。落としたときに何が起きるかは一人親方が独立1年目に払うお金のカレンダーにまとめました。
人を1日でも使うと、枠が変わる
一人親方の入口は、法33条3号の「労働者を使用しないで行うことを常態とする者」です。忙しくなって人を雇い始めると、この枠から外れます。週の組み方を変える前に、加入の形が変わっていないかを確かめてください。呼び名と制度の対応関係は一人親方と個人事業主は何が違うのかで分けています。
もうひとつ。週の型は自分だけでは決まりません。元請けが工期をどう見ているかで、段取りの日が動きます。発注する側が工期の遅れをどう見ているかは、工期を延ばされたときに聞くことに大家さん側の視点が出ています。相手が何を気にしているかが分かると、段取りの半日を週のどこに置くかが決めやすくなります。
まとめ
- 労働時間の上限(労基法32条)と週1日の休日(35条)は、9条の「労働者」に向けた条文です。独立すると自分には効きません
- 一人親方の労災は全時間が対象になるのではなく、5つの行為に限られます。範囲は法令の本文になく、認定は厚生労働省労働基準局長の基準によります(施行規則46条の26)
- 請求と帳簿は5つのどこにも入りません。だから週の型に先に書き込んでおく
一般的にはこの5つが範囲とされていますが、実際の適用や給付の判断は加入団体と所轄の労働基準監督署によります。自分の作業がどこに入るのかは、加入団体か労働基準監督署に確認してください。
週の型は人によって違います。現場4日で回している人、3日にして加工場を厚くしている人、それぞれ理由があります。どう割っているかを相談・雑談の掲示板で聞いてみてください。同じ職種の人の型が、いちばん参考になります。


