一人親方が入る団体と組合の選び方|2つ入っても労災は二重には出ない

加入案内の紙を開くと、いちばん上に「組合」と書いてあります。ところが次の行には「労災保険特別加入団体」とあり、その下に「国民健康保険組合」の申込欄が続く。1枚の紙の中に、性質のちがう名前が2つも3つも並んでいることがあります。会費は月いくら、と書いてあるのはたいてい最後の1行だけです。

結論からお伝えすると、一人親方が「組合」と呼んでいるものは、根拠になっている法律が3つに分かれています。どれも会費を払って入るので同じに見えますが、掛け持ちできるものと、掛け持ちしても意味がないものがあります。ここを分けずに選ぶと、毎月払っているのに使えない、という形になります。

一人親方が入る組合は3種類。労災の特別加入団体(労災保険法35条)、国民健康保険組合(国民健康保険法13条)、労働組合(労働組合法3条)で根拠法が違うことを示した図

「組合」と呼ばれているものは、法律が3つに分かれている

職人が声をかけられる「組合」「団体」は、おおむね次の3つのどれかです。

  • 労災保険の特別加入団体……労働者災害補償保険法35条。ケガの補償を受けるための入り口
  • 国民健康保険組合(いわゆる建設国保)……国民健康保険法13条。病気やケガの医療費のための保険者
  • 労働組合……労働組合法。同法3条は労働者を「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者」と定めています

1つの団体がこの3つのうち2つを兼ねていることは珍しくありません。だから紙が1枚で済んでいます。ただし兼ねていても、制度としては別々に成立しています。片方をやめても、もう片方は自動では切れません。

労災の団体は、2つ入っても二重には出ない

いちばん誤解されているのがここです。労災保険法35条1項は、団体が申請して政府の承認を受けると、その団体を「適用事業およびその事業主」とみなし、構成員である一人親方を「その事業に使用される労働者とみなす」と定めています。つまり、団体が事業主の役をやることで、労働者ではない人に労災を通しているわけです。

そのうえで、同条2項がこう続きます。

一の団体に係る第三十三条第三号から第五号までに掲げる者として前項第三号の規定により労働者とみなされている者は、同一の種類の事業又は同一の種類の作業に関しては、他の団体に関し重ねて同号の規定により労働者とみなされることはない(労働者災害補償保険法35条2項)

読み替えると、同じ職種で2つの特別加入団体に入っても、2つめは労災としては効いていません。会費だけが2つ引き落とされます。付き合いで2つ入っている、という話が現場で出たら、この条文を見てもらってください。

なお、建設の一人親方が入る「事業の種類」は、施行規則46条の17第2号に書かれています。「土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、原状回復、修理、変更、破壊若しくは解体又はその準備の事業」。原状回復が条文にそのまま出てくるので、内装で食べている人もここに入ります。

給付基礎日額は厚生労働大臣が定める範囲から選ぶ形で(同法35条1項6号)、保険料はその日額に連動します。中身は一人親方の労災保険(特別加入)はどうすべきかで扱っています。

建設国保は、住んでいる場所で入れる組合が決まる

国民健康保険組合のほうは、選択肢が住所で切られます。国民健康保険法13条1項は、組合を「同種の事業又は業務に従事する者で当該組合の地区内に住所を有するものを組合員として組織する」と定めています。同条2項で、その地区は1つ以上の市町村の区域によるとされています。

つまり「知り合いに勧められた組合」が、自分の住んでいる市町村を地区に含んでいなければ、そもそも入れません。引っ越しで地区から出た場合も同じ問題が起きます。加入前に、地区の一覧に自分の市町村があるかを見てください。

掛け持ちもできません。同条3項は、他の組合が行う国民健康保険の被保険者である者は組合員となることができない、としています。市町村の国保と建設国保を両方持つ、という形にもなりません。どちらが安いかは所得と家族構成で逆転するので、国民健康保険と建設国保、どちらが得かで比べ方を出しています。

会費だけの団体かどうかは、どこで見分けるのか?

特別加入団体には、法令上やらなければならないことがあります。労災保険法施行規則46条の23第2項は、申請しようとする団体はあらかじめ「業務災害の防止に関し、当該団体が講ずべき措置及びこれらの者が守るべき事項を定めなければならない」としています。しかも同条3項で、その中身を書いた書類を申請書に添えることになっています。

だから、次の3つはどの団体にも必ず存在します。窓口で聞いて出てこないなら、それ自体が答えです。

  1. 定款または規約(46条の23第3項1号)
  2. 業務災害の防止に関する措置と、加入者が守る事項を書いた書類(同項2号)
  3. 承認を受けている都道府県労働局(申請は団体の主たる事務所を管轄する労働基準監督署長を経由して労働局長へ出します。46条の23第1項)

会費の額よりも、事故が起きたときに誰が動くかのほうが効きます。年に一度も安全の話が来ない団体と、健診や講習の案内が届く団体では、同じ会費でも中身が違います。

団体を移ると、いま治療中のケガはどうなるのか?

ここは条文がはっきり守っています。労災保険法35条5項は、特別加入している者の「保険給付を受ける権利は、…第一項の団体から脱退することによつて変更されない」と定めています。加入していた期間に起きた業務災害の給付は、団体を抜けても、そのまま続きます。

ただし、抜けた後に起きたケガは対象外です。乗り換えるときは、新しい団体の加入日が前の団体の脱退日の翌日になるように合わせてください。1日でも空くと、その日は無保険です。手続きの締めは団体ごとに違うので、先に新しい側の加入日を確認してから、古い側に脱退を伝える順番が安全です。

団体の掛け持ちの可否を比べた図。同じ職種の労災団体と国保組合は重ねられない。労災団体と国保組合、労働組合は別々に持てる

選ぶときに見る順番

  1. 自分の市町村が地区に入っているか(国保組合。ここで候補がかなり絞れます)
  2. すでに同じ職種の特別加入団体に入っていないか(入っていれば2つめは効きません)
  3. 業務災害の防止に関する書類を出せるか(施行規則46条の23第2項)
  4. 事故のときの連絡先と、書類を誰が書くか
  5. 会費と、給付基礎日額に応じた保険料の合計額

会費を最後に置いているのは、順番を逆にすると1と2で落ちる団体を選んでしまうからです。

なお、労災・健康保険・税の扱いは個別の事情で変わります。加入の可否や保険料の実額は、団体の窓口、都道府県労働局、市区町村の国保窓口、税務署など公的な窓口で確認してください。一般的な考え方として読んでいただければと思います。

発注する側がこの仕組みをどう見ているかを知っておくと、話が早くなります。職人に直接頼むとオーナー側に来る3つの役目は、元請けを外して直接頼むときに発注者側へ移る責任を整理したものです。

乗り換えたときの実際の手続きは、相談・雑談の掲示板で聞いてみてください。地区の話は、同じ市町村の人の答えがいちばん早く届きます。

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