一人親方が原状回復を継続で受けるには|住宅は減っても貸主からの発注だけ増えています
退去の連絡が入ってから、鍵を受け取り、クロスと床を見て、翌週には次の募集が始まる。原状回復は、この繰り返しの中にあります。1件ずつ相見積もりに呼ばれるか、決まった相手として毎回声がかかるかで、1年の仕事量はまるごと変わります。
結論からお伝えすると、住宅のリフォーム市場は前年より縮んでいるのに、賃貸物件を持つオーナーからの発注だけは増えています。そして「継続で受ける」は気持ちの問題ではなく、契約書の作り方が法令の上で切り替わる話です。

9月10日に出た数字は、どこが増えてどこが減ったのか
国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査報告(令和8年度第1四半期受注分)」(2026年9月10日公表)によると、4〜6月の受注高の合計は5兆427億円で、前年同期比22.8%増でした。ところが内訳を開くと、住宅と非住宅で向きが逆です。
- 住宅:1兆807億円(前年同期比7.6%減)
- 非住宅建築物:3兆9,619億円(同34.9%増)
「リフォームは伸びている」という見出しは、非住宅の話でした。住宅は減っています。
住宅の中でも、発注する人によって向きが違う
同じ調査の表2-2は、住宅の受注高を発注者別に分けています。
- 居住者(自分が住んでいる家):6,574億円(前年同期比1.2%減)
- 非居住オーナー(貸している物件の持ち主):752億円(同3.5%増)。うち改装・改修は553億円で13.9%増
- 管理組合:1,476億円(同36.2%減)
- 公共:626億円(同2.0%増)
住宅全体が7.6%減るなかで、貸している人からの発注だけがプラスで、その中の改装・改修は2桁の伸びです。大規模修繕を動かす管理組合は逆に4割近く落ちています。
もう1つ、同じ調査の表1-3で住宅の業種別を見ると、職別工事業の受注高は2,071億円で29.8%減、受注件数も10.3%減。一方で建築工事業は4.6%増です。ただしこの調査が数えているのは「元請けとして受注した」工事だけなので、下請として入った分は入っていません。それでも、専門工事の側が元請として取る仕事は細っている、とは読めます。

継続で受けると、契約書の作り方はどう変わるのか?
ここからが実務です。建設業法19条1項は、請負契約で書面に記載すべき事項を15号まで並べています。1件ごとに全部を書いた契約書を交わすのは、原状回復のように小口で回数が多い仕事だと現実的ではありません。
そこで国土交通省「建設業法令遵守ガイドライン(第12版)」(令和8年1月)は、基本契約書と注文書・請書を分ける方法を認めています。
- 基本契約書に、19条1項の5号から15号(前払や出来形払の時期と方法、設計変更や中止のときの取り扱い、不可抗力、価格変動、第三者への賠償、検査と引渡しの時期、完成後の支払の時期と方法、契約不適合の責任、遅延利息や違約金、紛争の解決方法)を書いて、双方が署名または記名押印して交付する
- 注文書・請書には、19条1項の1号から4号(工事内容、請負代金の額、着手と完成の時期、施工しない日または時間帯の定め)を書く
- 注文書・請書には、そこに書いていない事項は基本契約書の定めによると明記する
つまり毎回のやり取りは、工事内容・金額・工期の4項目まで軽くできます。1件ごとの書類の中身は見積書・注文請書・納品書・請求書の使い分けにまとめています。
「反復継続的な取引実績」が条件に入っている
ガイドラインが引いている「注文書及び請書による契約の締結について」(平成12年6月29日建設省経建発第132号。最終改定 令和7年9月30日 国不建第81号)には、次の3つを全て満たせば注文書・請書への署名または記名押印は必ずしも必要ない、と書かれています。
- 注文者が消費者契約法2条1項の「消費者」でないこと
- 基本契約書の締結時に、対等なパートナーシップに基づく関係にあることを相互に確認すること
- 基本契約書の締結時に、両者の間において反復継続的な取引実績が蓄積されていることを相互に確認すること
「続けて受けている」という事実が、書類の手間を軽くする条件そのものになっています。逆に言えば、続いていない相手とはこの形を作れません。
基本契約書の印紙は、金額に関係なく4,000円
ここは見落とされがちです。基本契約書は印紙税法別表第一の第7号文書「継続的取引の基本となる契約書」に当たり、税額は1通につき4,000円です。工事の金額がいくらであっても一律です(国税庁タックスアンサーNo.7104。根拠法令は印紙税法別表第一の七、印紙税法通則3イ、印紙税法施行令26)。
ただし国税庁は、契約期間が3か月以内であり、かつ更新の定めのないものは除かれると書いています。単発の注文請書は第2号文書で金額により変わるので、どちらが得かは取引の本数で逆転します。印紙の扱いに迷ったら、契約書の文面を持って税務署に確認してください。
相手が見ている数字も知っておく
発注する側は、見積書の「一式」をどう崩すかを覚えはじめています。その視点は原状回復の見積りが「一式」で来たらを読むと分かります。内訳を先に出しておくほうが、結果として継続につながります。
元請を1社に絞るか増やすかという話は元請けを1社に絞るか増やすかに書きました。継続の形を作るときは、こちらも合わせて見てください。
基本契約書を実際に交わしている方の運用を、仕事を探している方の掲示板で聞かせてください。
出典:国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査報告(令和8年度第1四半期受注分)」2026年9月10日公表/同「建設業法令遵守ガイドライン(第12版)」令和8年1月/国税庁タックスアンサーNo.7104「継続的取引の基本となる契約書」(いずれも2026年9月13日確認)


