職人が独立前に取る資格の選び方|名乗れる肩書きと、名乗ると罰金になる肩書き
結論からお伝えすると、独立前に取る資格は「腕が上がるか」ではなく「名乗れるか」「書類に載るか」で選ぶと外しません。技能士は法律で守られた名前で、持っていない人が名乗ると30万円以下の罰金です。そして、独立してからでは取りにくくなる資格がはっきり1つあります。登録基幹技能者です。

「技能士」は、勝手に名乗れない名前です
職業能力開発促進法50条を、順に読んでみます。
- 1項:技能検定に合格した者は、技能士と称することができる
- 2項:技能士と称するときは、合格した職種および等級を表示して行うものとし、合格していない職種または等級を表示してはならない
- 3項:2項に違反したとき、厚生労働大臣は2年以内の期間を定めて名称の使用停止を命ずることができる
- 4項:技能士でない者は、技能士という名称を用いてはならない
そして同法102条8号が、この4項違反を30万円以下の罰金と定めています。7号は、使用停止を命じられた期間中に名乗った場合で、こちらも同じ30万円以下の罰金です。
気をつけたいのは2項のほうです。持っている資格でも、書き方を間違えると引っかかります。2級なのに「1級技能士」と書く。内装仕上げ施工で受かったのに「表装技能士」と書く。どちらも「合格していない職種又は等級を表示」に当たります。名刺やホームページに書くときは、合格証に書かれているとおりの職種名と作業名を写すのが安全です。
では「熟練工」「◯◯のプロ」は名乗ってよいのか?
これらの言葉に、名称を制限する法律はありません。名前が守られているのは、法律が「称することができる」と書いた肩書きだけです。
ただし、資格があるように見せる書き方は別の問題になり得ます。実態と違う表示は景品表示法の対象になることがあるので、「1級相当」「技能士レベル」のような書き方は避けるのが無難です。ここは表示の中身で判断が分かれるところなので、迷ったら消費者庁や弁護士へご確認ください。
独立してからでは、取りにくくなる資格がある
登録基幹技能者です。建設業法施行規則18条の3第2項2号に出てくる「工事現場において基幹的な役割を担うために必要な技能に関する講習」で、経営事項審査の技術的能力として数えられます。
受講の基本要件は、次の3つです(出典:一般財団法人建設業振興基金「登録基幹技能者 受講資格」)。
- その職種で10年以上の実務経験
- そのうち3年以上の職長経験(登録鳶・土工基幹技能者は職長経験8年以上)
- 実施機関が定める資格等の保有(1級技能士、施工管理技士など)
内装仕上工事の場合、3つ目は「内装仕上げ施工」(鋼製下地工事・ボード仕上げ工事・プラスチック系床仕上げ工事・カーペット系床仕上げ工事・カーテン工事・木質系床仕上げ工事・化粧フィルム工事)または「表装」職種・壁装作業の1級技能士、もしくは1級建築施工管理技士・2級建築施工管理技士(仕上げ)です。
ここで効いてくるのが2つ目の「職長経験3年」です。一人で動く一人親方は、職長として名簿に載る機会そのものが減ります。会社にいるうちに職長を任されているなら、それは資格の材料が貯まっている状態です。
お金の面でも、雇われているうちのほうが有利です
登録内装仕上工事基幹技能者講習は3日間、受講手数料は33,000円(税込・テキスト代含む)です。この講習は厚生労働省の人材開発支援助成金(建設労働者技能実習コース)の助成対象になっていますが、案内にはこう書かれています。「助成対象者は、企業及び受講者本人が『雇用保険の被保険者』です」(出典:一般社団法人全国建設室内工事業協会「登録内装仕上工事基幹技能者について」)。
一人親方は雇用保険の被保険者ではないので、この助成の外に出ます。資格取得の費用が戻る制度が独立で使えなくなる話は職人が資格を取るとき国からお金は戻るのか|独立すると使えなくなる制度にまとめてあります。同じ構図が、こちらの助成金でも起きます。
資格が「書類に載る」とはどういうことか
登録基幹技能者には、もう一段の効き目があります。平成30年4月1日から、主任技術者の要件を満たす者として認められました(平成29年国土交通省令第67号、平成30年国土交通省告示第435号。出典:国土交通省北陸地方整備局「登録基幹技能者講習修了証の取扱いについて」)。
主任技術者になる道は、ふつうは10年の実務経験を証明するか、決められた国家資格を取るかです(見習いから独立まで何年かかるのか|実務10年は、いちばん遠い道です)。登録基幹技能者の修了証は、その証明を1枚で済ませられる書類になったということです。組む相手の会社から見れば、あなたを配置できる現場が増えます。

結局、何から取るのか
- 1級技能士。名乗れて、登録基幹技能者の入口にもなる。受検の順番は見習い職人が取る資格の順番|半年・1年目・2年目で何から取るかを
- 職長・安全衛生責任者教育。職長経験を積む前提になる
- 登録基幹技能者。会社にいるうち、助成が使えるうちに
逆に、独立後でも取れるものは急ぎません。特別教育や技能講習は、必要になった現場の直前でも間に合います。急ぐのは「雇われている状態」が条件になっているものだけです。
発注する側から見た資格の線引きは、大家が自分で直してよい範囲はどこまでか|壁の中のコンセント交換は資格が要りますにも書かれています。受ける側と発注する側で、見ている場所が違うのが分かります。
受講要件や助成の条件は職種と年度で変わります。申し込む前に、自分の種目の実施機関と、都道府県の労働局・ハローワークへご確認ください。


