一人親方に1年で来る期限|切れるのは資格ではなく、許可と登録のほうです

結論からお伝えすると、一人親方が1年でうっかり落とすのは、資格ではありません。技能講習や特別教育の修了証には、そもそも有効期限がありません。切れるのは、建設業許可(5年)建設キャリアアップシステムの登録、そして毎年決まった月に来る届出のほうです。ここを1枚の予定表にしておくと、あとから取り返しのつかないものが見えます。

一人親方に毎年くる期限を、所得税・消費税・労働保険・決算変更届・元請け提出書類の5つで並べた図

まず「切れないもの」から確認しておく

玉掛け、高所作業車、足場の組立て等の特別教育や技能講習。これらの修了証に、法令上の有効期限は定められていません。一度受ければ、その資格が失われることはありません。

混同しやすいのが、「職長は5年ごとに再教育を受けなければならない」という話です。根拠になっているのは労働安全衛生法19条の2で、条文はこうです。「事業者は……これらの者が従事する業務に関する能力の向上を図るための教育、講習等を行い、又はこれらを受ける機会を与えるように努めなければならない」。努力義務であって、期限を切った義務ではありません。厚生労働大臣が指針を公表する(同条2項)という組み立てです。

ただし、これは「受けなくてよい」という意味ではありません。元請けが安全書類として「◯年以内の受講」を求めてくることは実際にあります。法律の期限ではなく、取引先の要求として切れると考えておくのが実務に合います。

毎年、必ず来るもの

一人親方の1年で、日付が動かないものを並べます。

  • 3月15日:所得税の確定申告。消費税の申告期限は3月31日(インボイス登録をしている場合)
  • 6月1日から40日以内(=7月10日):労働保険の年度更新。人を雇っている場合です
  • 4月ごろ:労災保険の特別加入は、加入している団体の年度切り替えに合わせて更新の案内が来ます
  • 毎事業年度が終わってから4か月以内:建設業許可を持っているなら、決算変更届

労働保険の年度更新の根拠は、労働保険の保険料の徴収等に関する法律19条1項です。事業主は確定保険料の申告書を「次の保険年度の六月一日から四十日以内」に提出しなければならない、と書かれています。人を雇っていないなら、この期限は自分には来ません。逆に、初めて人を雇った年から来ます。

見落とされやすいのが最後の決算変更届です。建設業法11条2項は「許可に係る建設業者は、毎事業年度終了の時における……書類を、毎事業年度経過後四月以内に、国土交通大臣又は都道府県知事に提出しなければならない」と定めています。工事を1件も受けていない年でも出します。

そして、これを出さないことには罰則が付いています。建設業法50条1項2号。「第十一条第一項から第四項まで……の規定による書類を提出せず、又は虚偽の記載をしてこれを提出したとき」は、6月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。実務では指導が先に来ますが、条文の重さはこうなっています。

数年に一度、静かに切れるもの

建設業許可は5年。更新申請は満了の30日前まで

建設業法3条3項は「第一項の許可は、五年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によつて、その効力を失う」。そして建設業法施行規則5条が「許可の更新を受けようとする者は、有効期間満了の日の三十日前までに許可申請書を提出しなければならない」と受けています。

ここに、知っておくと気が楽になる条文が2つあります。

  • 3条4項:更新の申請をしていれば、満了日までに処分が出なくても、処分が出るまで従前の許可は効力を持ちます
  • 3条5項:更新されたときの有効期間は「従前の許可の有効期間の満了の日の翌日から起算する」。つまり早めに出しても、5年が削られることはありません

早く出して損はなく、遅れると失効する。片側にしかリスクがない期限です。

建設キャリアアップシステムは、事業者登録が5年

運営元の説明では、事業者登録の有効期限は5年間で、登録が完了した日から5年後の登録月末までとされています。更新手続きは有効期限の6か月前から可能で、遅くとも1か月前までの申請が案内されています。有効期限までに更新申請をしないと、システムが使えなくなります(出典:建設キャリアアップシステム「事業者更新手続きの流れと方法」/「CCUSについて」)。

技能者のカードのほうは、よく「10年」と言われますが、正確には違います。運営元の記載は「カード有効期間は発行日から発行9年経過後最初の誕生日まで」。申請時に60歳以上なら14年目の誕生日まで、本人確認書類を出していない人は2年目の誕生日までです。誕生日で切れるので、人によって残り月数が1年近く違います。

資格は切れないのに、点数だけ切れるものがある

もうひとつ、期限の付き方が独特なものがあります。建設業法施行規則18条の3第3項2号ロは、経営事項審査で評価される「建設業の経理に関する業務の責任者」について、登録経理試験の合格者を「合格した日の属する年度の翌年度の開始の日から起算して五年を経過しないもの」と定めています。

合格そのものは消えません。消えるのは、審査で点になる期間のほうです。5年を過ぎたら、登録経理講習を受け直すと再びカウントされます(同号ハ)。登録基幹技能者の講習修了証にも、実施機関が更新講習を用意しています。

毎年くる期限と数年で切れる期限を左右で比べた図。左は所得税や労働保険、右は建設業許可と登録の有効期間

更新を忘れたら、どうなるのか?

建設業許可は、失効すると更新ではなく新規の取り直しになります。手数料も、書類も、新規と同じです。500万円未満の工事しか受けないなら許可は要りませんが(軽微な建設工事)、失効した状態で500万円以上を受けると無許可営業になります。

建設キャリアアップシステムのほうは、期限が切れると使えなくなります。就業履歴の蓄積が止まるので、能力評価のレベル判定に必要な日数も積み上がりません。

どちらも、誰かが止めてくれるわけではありません。通知は来ますが、届く先はシステムに登録したメールアドレスです。

1年の予定表は、この順で作る

  1. 毎年動かないものを先に書く(3月15日・3月31日・7月10日・決算月+4か月)
  2. 数年で切れるものを、満了日そのものではなく「その2か月前」で書き込む(許可・システムの登録)
  3. 元請けが求める書類の期限を最後に足す(保険証・特別加入の証明・健康診断の日付)

お金の期限を月ごとに並べたものは一人親方が独立1年目に払うお金のカレンダー|きついのは1年目ではなく2年目に、初めて人を雇うときの届出は一人親方が初めて人を雇うとき|10日以内に出す届が2つあるにまとめてあります。建物側の「何年に1回」を発注する立場から見た例としては、アパートの消防設備点検は業者に頼むしかないのか|大家の報告は3年に1回ですも参考になります。

税や許可の個別の判断は、所轄の税務署、都道府県の建設業許可担当窓口へご確認ください。ここに書いたのは、条文と運営元の公表に書かれている期限そのものです。

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