一人親方が材料費の値上がり分を単価に乗せる伝え方|2026年に上がった資材と上がっていない資材

ホームセンターのレジで、パテとコーキングと替刃を買ってレシートを見て手が止まる。半年前と同じ買い方をしているのに、金額だけが上がっている。それでも元請けから提示される単価は、去年と同じ数字のまま——値上げの話を切り出せずにいる一人親方は少なくありません。

結論からお伝えすると、「材料が上がったので単価を上げてください」という言い方は、いちばん通りにくい伝え方です。理由は単純で、資材は全部が上がっているわけではないからです。上がっているものを名指しし、自分が実際に払っている分を数字にして出す。この2段階にするだけで、話の通り方が変わります。

2026年7月速報で大きく上がった資材と上がり方が小さい資材。非鉄金属40.6パーセント増、石油石炭17.5パーセント増に対し、鉄鋼は1.7パーセント増、金属製品は1.5パーセント増。

2026年、何が上がっていて、何が上がっていないのか

公表されている統計で確認できます。日本銀行の企業物価指数(2026年7月速報・2026年8月13日公表/2020年平均=100)では、国内企業物価の総平均は135.8、前年同月比+7.2%です。品目別に見ると、内訳はかなりばらついています。

  • 非鉄金属 256.1(前年同月比 +40.6%)——銅線、配線器具まわり
  • 石油・石炭製品 181.5(+17.5%)——燃料、溶剤、シンナー系
  • 化学製品 127.8(+12.9%)——接着剤、シーリング、塗料の原料
  • プラスチック製品 127.7(+9.1%)——養生材、フィルム、シート類
  • 木材・木製品 147.9(+8.3%)——下地材、合板、集成材
  • 窯業・土石製品 145.1(+4.9%)——石膏ボード、タイル、セメント系
  • 鉄鋼 146.0(+1.7%)
  • 金属製品 136.4(+1.5%)——上がり方がいちばん小さい

ここが常識と食い違うところです。「資材が全部、同じように上がっている」は事実ではありません。非鉄金属が+40.6%なのに対し、金属製品は+1.5%、鉄鋼は+1.7%。同じ「資材」でも、前年比の開きは20倍以上あります。資材の動きを見ている元請けに「材料が全部上がったので」と一括りに言うと、その一言で話の信用が落ちます。上がっているのは非鉄金属・石油系・化学系・木材。そこを名指しするほうが強いのはそのためです。

数字を扱ううえで、もう1つ知っておいてほしいことがあります。速報値は後から訂正されます。この記事で以前使っていた2026年6月分の鉄鋼は、速報の時点で前年同月比-0.4%でしたが、7月分の公表資料では6月分が+0.3%に訂正されています(日本銀行の資料では訂正値に「r」が付きます)。マイナスかプラスかが入れ替わる程度の幅は、ふつうに起きます。交渉の場で1か月分の数字だけを根拠にすると、こういうところで足をすくわれます。使うのは最新の月、そして「速報値です」と一言添える。これだけで十分です。

この指数は毎月更新され、次回は9月中旬に公表される予定です。数字を使うときはそのつど最新の月を確認し、「◯年◯月時点」と添えて話してください(本記事の数値は2026年8月24日時点で公表されている最新のもの=2026年7月速報です)。

手間請けなら材料費は関係ない、ではない

「材料は元請け持ちだから関係ない」と考える方がいますが、手間請けでも自分の財布から出ているものがあります。

  • パテ、コーキング、接着剤、テープ類(化学製品+14.4%の影響を受ける)
  • 養生材、マスカー、ビニール(プラスチック製品+7.3%)
  • カッターの替刃、ローラー、刷毛などの消耗品
  • 現場までのガソリン代と高速代(石油・石炭製品+22.8%)
  • 残材を自分で処分している場合の処分費

まずやることは、交渉ではなく集計です。直近3か月のレシートを現場数で割ってみてください。「1現場あたりの自腹が◯円増えた」という数字が出れば、それがそのまま交渉の材料になります。感覚で「最近きつい」と言うのと、実額を出すのとでは相手の受け取り方がまったく違います。

値上げを伝える順番。続けたい意思、上がった品目の名指し、1現場あたりの実額、1つの数字、代案の5段階。

どう伝えれば通るのか?

伝える順番には型があります。値上げの数字を先に出さないことが要点です。

  1. これまでどおり続ける意思を先に言う。「来期も引き続きお願いしたいと思っています」から入る。値上げの話は、取引をやめる話ではないと最初に示す
  2. 上がっている項目を名指しする。「接着剤とコーキング、それと養生材が上がっていて」と品目で言う。「材料費全般」と言わない
  3. 自腹の実額を出す。「1現場あたりの消耗品と燃料で、去年より◯円増えています」
  4. 希望する条件を、幅ではなく1つの数字で出す。「1㎡あたり◯円でお願いできませんか」。幅で出すと必ず下限で決まります
  5. 単価以外の選択肢も置く。「単価が難しければ、養生材を支給していただく形でも助かります」。相手が社内で通しやすい形を用意しておくと、ゼロ回答になりにくい

言い方そのものは単価交渉の言い方に詳しくまとめています。工事の途中で発生した分については追加工事が出たときの伝え方と請求を参照してください。

そもそも今の単価が水準を下回っていないか

値上げを考える前に、現在の単価が下限を割っていないかを確認しておくべきです。

賃貸の原状回復で入る量産クロスの手間請けは1㎡500円が下限です。ネット上には「300〜450円」と書かれた記事が今も残っていますが、あれは10年ほど前の水準です。応援は1日25,000円程度が標準、多能工であれば1日40,000円、またはそれ以上になります。

いま500円を下回っているなら、それは「値上げ交渉」ではなく水準に戻す話です。詳しくは原状回復工事の単価相場手間請けの単価はどう決まるか、人工での計算は人工単価の相場と計算方法をご覧ください。

言っても取り合ってもらえないときは

一般的には、資材価格や労務費の上昇分について協議に応じないまま一方的に据え置くことは、取引の適正化という観点から問題になり得ます。ただし、どこからが問題になるかは契約の形(請負か常用か)や取引の実態で変わり、制度の要件も改正されることがあります。自己判断せず、次の窓口で確認してください。

  • 取引条件の相談——公正取引委員会、中小企業庁の相談窓口(下請かけこみ寺)
  • 建設工事の取引——国土交通省の地方整備局、都道府県の建設業担当課

相談の前に、見積書・請求書・やり取りの記録を残しておいてください。口頭のやり取りしかない状態では、どの窓口でも動きにくくなります。

まとめ

材料費の転嫁は、粘り強さではなく材料の精度で決まります。上がっている品目を名指しし(非鉄金属+40.6%、石油系+17.5%、化学系+12.9%、木材+8.3%)、自分が払っている増加分を1現場あたりの実額で出す。この形にすれば、相手も社内で説明できます。

実際にどう切り出して、どう返されたか。同じ交渉をしている職人のやり取りは相談・雑談の掲示板にも出ています。使い方ははじめての方へをご覧ください。

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