単価交渉の言い方
結論からお伝えすると、単価交渉で必要なのは言い方の工夫ではなく、①数量と実績の材料、②切り出す時期、③断られたときの代替案の3つです。この3つが揃っていれば、言い方は多少下手でも通ります。逆に揃っていなければ、丁寧に頼んでも動きません。
材料費も燃料代も上がっているのに単価が3年据え置き、という状況はよく聞きます。ではどう切り出すか、というところを具体的に見ていきます。
先に、断られた言い方から
言った内容は間違っていません。それでも通らなかったパターンです。
- 「生活が厳しいので上げてください」と伝えた。相手にとって判断の材料にならず、検討すると言われたまま半年経った
- 繁忙期の真ん中に切り出した。工程が詰まっている時期で、相手は「今は無理」としか言えなかった
- 一度に2割の値上げを求めた。金額の根拠を示していなかったため、社内で通せないと断られた
- 他社の単価表を見せた。条件が違う数字だったため「うちとは工事が違う」で終わった
- 売上の9割をその1社に頼っていた。断られた時点で引く選択しかなかった
最後の1件が本質です。単価交渉で通るかどうかは、話し方より先に、切られても困らない状態かどうかで決まっています。交渉術を覚えるより、取引先を1社増やすほうが単価には効きます。
切り出す前に揃える材料
| 材料 | 具体的に用意するもの |
|---|---|
| 自分の施工量 | 1日あたりの数量、直近1年の対応件数、他の職人より早い工程 |
| コストの変化 | 材料・燃料・保険・車の維持費が何割上がったか。領収書ベースで |
| 実績の記録 | 施工前後の写真、手直しの発生件数、遅れた回数 |
| 断られない工夫 | 数量をまとめて受ける、緊急対応に応じる、日程を優先で空ける |
| 逃げ道 | ほかに動いている取引先が1社以上あること |
幅としては、一度の交渉で通りやすいのは5〜10%程度です。2割を一度に求めると、担当者が社内で通せません。仮に日当2万円が1割上がれば2千円、月20日で4万円、年間で48万円になります。小さく通して積み上げるほうが現実的です。
単価の水準そのものは、地域・職種・数量・時期によって大きく変わります。他の人の金額を持ち込んでも「条件が違う」で終わるので、材料は自分の施工量と自分のコストで組むほうが確実です。
実際の言い方
| 通りにくい | 通りやすい |
|---|---|
| 安すぎるので上げてください | 材料と燃料で1割ほど負担が増えています。単価を◯円に見直していただけないでしょうか |
| 他はもっと出しています | 1日◯㎡で入れています。この量で受けられる形にしたいので、単価の相談をさせてください |
| 無理なら受けられません | この単価で続けるなら、日程を絞る形になります。どちらがご都合に合いますか |
| すぐに上げてください | 来期からで構いません。次の期の予算を組むタイミングでご検討いただけますか |
言い切らずに問いの形で終える、というのが共通点です。右側は、どれも相手に選択肢を残しています。金額を1つ提示して「はい・いいえ」だけを求めると、断られたときに次がありません。時期についても、繁忙期の直前や期の変わり目の2〜3か月前を選ぶと検討に乗りやすくなります。
断られたら、どうするのか?
1回で決まらないのが普通です。断られた時点で終わりにしないための手が3つあります。
- 金額ではなく条件で取る。交通費の実費精算、駐車場代の負担、支払サイトを1か月早める。手取りは同じように増える
- 受ける範囲を変える。遠方を外す、緊急対応を減らす。単価が同じでも1時間あたりの実額は上がる
- 期限を置く。「次の期にもう一度お願いします」と伝えて、半年後に同じ材料で出し直す
なお、単価は当事者の合意で決まるものですが、一方的な引き下げや支払いの遅れで困っている場合は事情が違います。判断が難しいところなので、弁護士や建設業の取引に関する相談窓口に確認してください。自分で結論を出す前に聞いておくほうが早いです。
取引先を増やす動きは、交渉の前に済ませておく仕事です。頼まれる側だけでなく頼む側の事情も知っておくと材料になります。急に人手が足りないとき、応援職人を最短で見つける方法もあわせてご覧ください。
まとめ
やることは4つです。材料を揃える。時期を選ぶ。5〜10%で小さく通す。断られたら条件で取る。この4つが単価交渉の実務です。交渉の前にやるべきことがあるとすれば、取引先をもう1社持つことです。そこが決まっていれば、言い方はあとから何とでもなります。逆に1社に寄ったままでは、どんな言い方でも通りにくいままです。


