一人親方が拾う㎡数の基本|0.5㎡以下の窓は引かない、が国の決めた数え方
元請けの拾いが38㎡、こちらの拾いが35㎡。3㎡合わない。電話で「そっち、窓引いてます?」と聞いたら「引いてない」と返ってきた。どちらかが間違っているのではなく、引くか引かないかのルールが違っただけでした。
結論からお伝えすると、数量の拾い方には国が明文で決めた基準があります。そこでは「開口部は1か所0.5㎡以下なら引かない」「壁の高さは天井高さで測る」「クロスの重ね代と床シートのロスは数量に入れない」と決まっています。つまり「実際に張った面積」と「拾いの数量」は、最初から一致しないのが正しい。ここを知らないと、合わない理由を探して毎回時間を使うことになります。
数量の数え方は、誰が決めているのか
公共建築数量積算基準といいます。国土交通省の官庁営繕部が所管し、令和5年3月8日の関係省庁連絡会議で改定が決まり、令和5年3月29日改定のものが最新です(PDFで公開されています)。
名前のとおり公共建築のための基準なので、民間工事に強制力はありません。ただし積算事務所も元請けの積算担当も、この形をもとに拾っています。だから、これを言葉として持っておくと話が早い。「うちのやり方」ではなく「基準ではこうなっている」と言えるからです。

壁と天井で、引くもの・引かないもの
基準は、仕上の数量を「躯体の設計寸法による面積から、建具類など開口部の内法寸法による面積を差し引いた面積」としています。ここから先が本題です。
- 開口部の面積が1か所あたり0.5㎡以下のときは、引かない。0.5㎡は、たとえば幅0.6m×高さ0.8m(0.48㎡)の小窓。これは面積から引きません
- 壁高さの計測長さは、設計図書の天井高さ。回り縁や見切りで実寸が下がっても、拾いは天井高さで測ります
- 梁の小口や柱の小口との取合による欠除も、1か所0.5㎡以下なら引かない
- 器具類による欠除も、1か所0.5㎡以下なら引かない。基準は衛生器具・電気器具・換気孔・配管・配線を名指ししています。コンセントもスイッチも換気扇も、面積から引かないのが原則です
- 幅木・回り縁・ボーダーは、面積0.5㎡以下、または高さもしくは幅が0.05m以下なら引かない。高さ5cm以下の幅木は、壁の面積から落とさない
- 凹凸が0.05m以下のものは、凹凸なしとして見付面積で数える
- 仕上代が0.05mを超えるときは、主仕上の表面の寸法で計測する
並べてみると、方向がはっきりしています。細かいものは引かない。その積み重ねで、拾いの数量は実際に張った面積より少し大きく出ます。これは水増しではなく、基準がそう決めているだけです。

では、材料のロスはどこで見るのか?
ここが今日いちばん大事なところです。基準は、ロスを数量に入れません。
- 「布張り、紙張り等の重ね代は計測の対象としない」=クロスのジョイントの重ね代は数量に入らない
- 「ビニール床シート、カーペット等の数量は、設計寸法による面積とする」=切り無駄は入らない。なお畳は枚数で数えます
- ボード類の目地は主仕上の構成部材で、原則として計測の対象としない
- 釘・金物類・モルタル・接着剤などの仕上補助材料も、原則として計測の対象としない
つまりロス率は「数量」ではなく「単価」に入れるしかない、という構造です。材料を自分で持つ材工の見積で、拾った㎡数だけで材料を発注すると必ず足りません。逆に手間請けなら、ロスは元請け持ちなので数量だけを見ればいい。一人親方が見積もりを出す前に決める4つ|手間請けか材工か・めくり・下地処理・ゴミ処理で先に決めておくべき理由が、ここにもあります。
金額でも見ておきます。賃貸の原状回復で量産クロスを手間請けする場合、1㎡500円が下限の水準です。3㎡の拾い違いは1,500円。1部屋なら飲める額ですが、月に10部屋やれば1万5千円、年で18万円になります。拾いは、単価交渉より先に効く。
床は0.3mを超えると壁になる
見落としやすいのが立上がりです。基準では内部床は建物内部の見下げ面で、床段違いの側面や階段の蹴上げは床に属します。ただし立上がり高さが0.3mを超える場合は、壁として扱うと書かれています。
上がり框まわりや段差の側面を、床の材料で拾うか壁で拾うかは、この0.3mで決まります。同じ場所を2人が別々に拾って合わないときは、たいていここです。
0.5㎡は共通ルールではない
もう一段だけ細かい話をします。石材だけは扱いが違い、開口部が1か所0.1㎡以下のときに欠除なしとされ、しかも仕上代0.05m以下でも仕上表面の寸法で計測すると定められています。
「0.5㎡以下は引かない」を全部の材種に当てはめると、石まわりでずれます。基準は材種ごとに特則を持っている、と覚えておいてください。
拾いが合わないときの切り出し方
「面積が違います」と言うと、水掛け論になります。合わせるべきは面積ではなく前提なので、次の4つを先に並べます。
- 開口部は何㎡から引いているか(0.5㎡なのか、全部引いているのか)
- 壁高さは天井高さか、実測か
- 幅木・回り縁を引いているか
- 器具まわりを引いているか
この4つを揃えると、たいていの差は消えます。残った差だけが、本当の拾い違いです。見積書に落とすところは一人親方の見積書の書き方|「一式」を材料費・労務費・必要経費に分ける手順に、単価そのものの水準は原状回復工事の単価相場|受けるべき水準の判断にまとめています。発注する側が同じ場所をどう見ているかは原状回復の見積書は「一式」の行から見る|築古アパートのオーナーが数量と単価で崩す3つの質問が参考になります。
拾いの考え方でつまずいたら、相談・雑談の掲示板で聞いてみてください。職種ごとにローカルな数え方があります。
出典:国土交通省「公共建築数量積算基準(令和5年改定)」(令和5年3月29日改定)


