常用で働く職人の給料と残業|速報の「前年比1.2%減」は確報で1.6%増に変わった
結論からお伝えすると、8月に「建設業の給料が前年より下がった」という数字が出回りましたが、2026年8月24日に公表された確報でプラスに反転しました。速報の前年比マイナス1.2%が、確報ではプラス1.6%。金額では17,231円の差です。いっぽうで、速報でも確報でも変わらず減っていたものがあります。残業です。単価や日当の話をするとき、この2つを混ぜないほうがいい理由をまとめます。

速報と確報で、どこが動いたのか
厚生労働省の毎月勤労統計調査(事業所規模5人以上)の建設業・就業形態計、2026年6月分の数字です。左が速報(2026年8月5日公表)、右が確報(2026年8月24日公表)。
- 現金給与総額…607,369円(前年比−1.2%)→ 624,600円(+1.6%)
- 特別に支払われた給与…225,700円(−7.8%)→ 243,502円(−0.6%)
- きまって支給する給与…381,669円(+3.2%)→ 381,098円(+3.1%)
- 所定内給与…356,869円(+3.8%)→ 356,846円(+3.8%)
- 所定外給与(残業代)…24,800円(−4.1%)→ 24,252円(−6.2%)
- 総実労働時間…166.1時間(−0.5%)→ 165.6時間(−0.8%)
- 所定外労働時間(残業時間)…11.7時間(−4.1%)→ 11.5時間(−5.8%)
- 出勤日数…20.4日(前年差−0.2日・確報も同じ)
(出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026年6月分結果確報」2026年8月24日公表/同「2026年6月分結果速報」2026年8月5日公表)
動いた金額のほぼ全部が特別に支払われた給与、つまり賞与の枠です。速報は回答が集まりきる前に集計した数字で、6月は夏の賞与が入る月にあたります。集計が進むにつれて賞与の額が積み上がり、その結果、前年割れだった総額がプラスに変わりました。
数字が実感と合わないと感じたら、まず日付を見る
同じ月の同じ業種の数字が、3週間ちがう2つの発表で1万7千円ずれる。これは統計が間違っているのではなく、速報と確報の性質の違いです。「建設業の給料が下がった」という記事を読んだときは、その記事がどちらの発表を見て書いたものかを確かめる価値があります。2026年6月分については、8月上旬に書かれた記事の結論は、いま成り立ちません。
本当に減っているのは残業のほうです
反転しなかった数字が2つあります。所定外給与がマイナス6.2%、所定外労働時間がマイナス5.8%。速報より確報のほうが、下がり幅がさらに大きくなっています。
そのうえで、所定内給与はプラス3.8%です。組み合わせるとこうなります。
- 基本給に当たる部分は上がっている(所定内給与+3.8%)
- 残業そのものが減っている(残業時間−5.8%・月11.5時間)
- 出勤日数も前年より0.2日少ない(月20.4日)
月給で働いている人なら、これはそのまま「増えた」と読めます。ところが日給月給で入っている人は、月の手取りが「日当×出勤日数+残業代」で決まります。日当が3.8%上がっても、出勤日数が0.2日減り、残業が11.5時間まで落ちれば、手取りは前年と同じか下がることがあります。統計がプラスなのに実感がマイナスになる場所は、ここです。
この数字が「含んでいないもの」
単価の話に持っていく前に、枠を確かめておきます。
- 雇われている人の調査です。事業所規模5人以上の事業所に雇用されている労働者が対象で、請負で入る一人親方の報酬は入っていません
- 「建設業」全体の平均です。内装・塗装・電気・設備といった職種別の内訳ではありません
- 就業形態計にはパートタイムを含みます。一般労働者だけで見ると現金給与総額651,428円(+1.8%)・総実労働時間170.0時間・残業時間12.1時間(−5.5%)。パートタイム労働者だけなら143,608円(+2.8%)・86.4時間です
- 工事の請負金額ではありません。賃金として支払われた額であり、材料費・経費・利益はここに入りません
層の違う数字を並べると話が通じなくなります。日当や平米単価と、この現金給与総額を同じ文で比べないことをおすすめします。

交渉の材料として、どう使えるのか
「人手不足だから上げてほしい」は、相手にとって値上げの理由になりません。この確報から取り出せるのは、もう少し使いやすい形の事実です。
- 残業で稼ぐ形が縮んでいる…月の残業は11.5時間まで下がり、前年比で5.8%減。時間で埋める余地が減っているので、単価そのものを動かす話にしかならない
- 雇われている側の所定内は3.8%上がっている…社員として採る場合の相場が上がっているという事実は、請負の単価を据え置く理由を弱くする
- 出勤日数が前年より少ない…稼働日が減る前提で単価を組む、という言い方ができる
- いつ時点のどの発表かを添える…「2026年6月分・8月24日公表の確報」と言えるだけで、話の重さが変わる
なお、一人親方の報酬はこの統計の対象外です。自分の単価の根拠にするなら「同じ工事を社員でやらせた場合の賃金水準」という位置づけで持っていくのが、事実に合った使い方になります。
次に数字が動くのはいつか
公表の日は先に決まっていて、厚生労働省が予定表を出しています。次に来るのはこの3つです。
- 2026年7月分 速報…2026年9月8日
- 2026年7月分 確報…2026年9月28日
- 2026年 夏季賞与…2026年11月6日(賞与だけを切り出した集計)
(出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査(全国調査・地方調査)公表予定」・2026年8月26日時点)
夏の賞与が反映される6月・7月分は、速報と確報で振れ幅が大きくなりやすい月です。この時期の「前年比マイナス」は、確報を見るまで結論にしない。今回の6月分でわかったのは、それだけでも十分に使える読み方だということです。
常用で入るときの拘束時間と残業の扱いは一人親方が常用で入るときの拘束時間と残業、日給月給と月給の違いは未経験が職人の求人票で見る日給月給と月給の違いにまとめています。交渉の材料の集め方は一人親方が単価交渉に使う材料の集め方、最低賃金との関係は一人親方に最低賃金は関係あるのかを参照してください。
実際に今年の夏、手取りがどう動いたかは職種と地域で違います。職人の相談・雑談の掲示板で聞いてみてください。

