一人親方に最低賃金は関係あるのか|埼玉は2026年10月から1196円、効くのは3つの場面
結論からお伝えすると、請負で仕事を受けている一人親方本人は、一般的には最低賃金法の対象になりません(労働者ではないため)。ただし「関係ない」で終わる話ではなく、①人を雇った日から ②働き方の実態が労働者と判断される場合 ③常用や応援の日当を時間に割って比べるときの3つの場面で、この金額が効いてきます。
2026年8月5日、埼玉地方最低賃金審議会が埼玉県最低賃金を時間額1,196円に引き上げるよう答申しました。現行は1,141円で、引上げ額は55円、引上げ率は4.82%。発効日は2026年10月1日と答申されています(出典:厚生労働省埼玉労働局「埼玉県最低賃金の改正を答申」2026年8月5日/2026年8月11日時点)。
この記事の時点ではまだ答申の段階で、異議申出に関する手続きを経て正式に改正されます。 金額と発効日は最終的に埼玉労働局の公示で確定します。

4年で209円上がっている
同じ資料に、埼玉県の推移が載っています。
- 令和4年度:987円
- 令和5年度:1,028円(+41円)
- 令和6年度:1,078円(+50円)
- 令和7年度:1,141円(+63円)
- 令和8年度:1,196円(+55円)
4年で209円、約21%です。今回の55円は、中央最低賃金審議会が2026年7月28日に示した目安(埼玉が属するAランクは54円)を1円上回るもので、埼玉が目安を上回るのは10年ぶりとされています。
建設業に「業種別の最低賃金」はあるのか?
都道府県ごとに、地域別とは別の特定最低賃金(業種別)が設定されている場合があります。埼玉県で設定されているのは非鉄金属製造業、電子部品・デバイス・電子回路/電気機械器具/情報通信機械器具製造業、輸送用機械器具製造業、光学機械器具・レンズ/時計・同部分品製造業、自動車小売業です。
建設業は入っていません。 つまり現場の職人を雇う場合に見るのは、地域別最低賃金=10月からの1,196円(見込み)ということになります。
人を雇った日から、使用者になる
見習いを1人入れる、息子さんに手伝ってもらって給料を払う。この時点で最低賃金の話は自分のこととして始まります。日給で払っていても、時間あたりに割り戻して判断されます。
- 所定労働時間が8時間なら、1,196円 × 8時間 = 9,568円。日給がこれを下回ると下回った分が問題になります
- 日給9,500円・実働8時間なら時間あたり1,187円。10月からは下回る計算になります
- 休憩を差し引いた実労働時間で見るため、朝の集合から片付けまでの拘束時間とは分けて考える必要があります
時間外や休日の割増、通勤手当の扱いなど、算入するもの・しないものには決まりがあります。一般的な考え方は上記のとおりですが、個別の判断は所轄の労働基準監督署または埼玉労働局(他県の現場なら各都道府県労働局)に確認してください。 社会保険の扱いは一人親方の社会保険はどうなるかにまとめています。
「請負だから関係ない」が通らなくなる場合
もう一つ知っておきたいのが、契約書の名前ではなく働き方の実態で判断されるという点です。指示を受ける度合い、時間や場所の拘束、道具を誰が用意しているか、他の現場を断れるかどうかといった要素で、実質的に労働者と扱われる場合があります。
これは自分に不利な話とは限りません。常用で長く同じ元請けに入っている人ほど、自分がどちらの立場で働いているのかを一度整理しておく価値があります。判断は個別の事情によるため、労働基準監督署や社会保険労務士など専門の窓口で確認するのが確実です。常用と手間請けの違いは常用と手間請け、どちらを選ぶかを参考にしてください。

日当を時間で割ってみると、何が見えるか
応援でひととおり任せられる職人の日当は1日25,000円程度が標準で、複数の工種をこなせる多能工なら4万円以上になります。25,000円を8時間で割ると1時間あたり約3,125円。10月からの最低賃金の約2.6倍です。
ただしこの2つは同じ物差しではありません。 請負の日当には、移動時間、段取り、道具の減耗、保険料、仕事がない日の分が入っています。雇われている人の時給と並べて「自分は高い」と考えるのは早すぎます。最低賃金は下限を知るための数字で、単価の根拠になる数字ではありません。 単価の組み立ては人工単価の相場と計算方法|何が含まれているかと応援を頼むときの伝え方と単価の決め方に分けて書いています。
10月まで2か月弱あります。人を使っている方は日給の割り戻しを1回確認しておく、これから雇う予定の方は募集の条件を決める前に見ておく。それだけで足ります。
雇うかどうか、常用で入るかどうかで迷っている方は相談・雑談の掲示板に同じ立場のやり取りがあります。


