一人親方の社会保険はどうなるか
結論からお伝えすると、一人親方の社会保険の話がこじれる原因はひとつです。「社会保険」という言葉が、医療・年金・労災の3つを指してばらばらに使われていることです。元請けが言う社会保険と、役所が言う社会保険と、自分が心配している社会保険が別物のまま会話しているので、いつまでも結論が出ません。
まず3つに分けます。分けたうえで、自分がどこに入っていて、どこが空いているかを見れば話は5分で片づきます。
3つに分けて現状を確認する
| 種類 | 一人親方の場合どうなるか | 窓口 |
|---|---|---|
| 医療(健康保険) | 市区町村の国民健康保険、または建設業の国民健康保険組合 | 市区町村の国保担当、または組合の支部 |
| 年金 | 国民年金。上乗せは自分で選ぶ | 年金事務所、市区町村の年金の窓口 |
| 労災 | 雇われている立場ではないため対象外。特別加入という仕組みで任意に入る | 一人親方の団体、労働基準監督署 |
| 雇用保険 | 雇われている人のための制度なので対象にならない | 該当なし |
この表を一度書き出しておくと、元請けから何を聞かれても答えられます。現場で提出を求められるのは、たいてい医療と年金と労災の3つの加入状況です。
混乱の元は、会社に雇われている人が入る健康保険と厚生年金の組み合わせを指して「社会保険」と呼ぶ習慣があることです。この意味で使われると、一人親方は当てはまりません。だから「入っていない」と言われてしまう。呼び方の問題であって、無保険という意味ではありません。
先に、よくある失敗から
- 作業員名簿の保険の欄を空欄で出したところ、現場への入場を断られた
- 労災に入っているから健康保険は要らないと思っていた。仕事以外のけがで受診できず慌てた
- 元請けの言う社会保険を厚生年金のことだと受け取り、法人化しないと現場に入れないと思い込んでいた
- 国民年金を止めたまま数年経っていた。加入状況の確認を求められた段階で説明に困った
3つ目は誤解が誤解を呼んだ形です。ここでひっくり返しておきます。一人親方は社会保険に入れない、と言われることがありますが、正確には「入る制度が違う」だけです。入れないのではなく、国民健康保険と国民年金という別の入口から入っています。そこを説明できれば、たいていの場面は通ります。
なぜ現場で確認されるようになったのか
建設業では、働く人が保険に入っている状態を当たり前にする取り組みが進められてきました。その結果、元請けが下請けや一人親方の加入状況を確認する運用が広がっています。作業員名簿に加入状況を書く欄があるのも、建設キャリアアップシステムに保険の情報を登録する仕組みがあるのも、同じ流れの中の話です。
ですから、確認されるのは自分が疑われているからではありません。元請け側にも確認する義務に近い運用があるためです。求められたら証明を出せる状態にしておく、というのが今の前提になっています。証明の様式や必要な範囲は現場ごとに違うため、入場前に元請けに確認するのが確実です。
実は労働者に近い働き方をしていないか?
ここは目をつぶらずに書きます。名前が一人親方でも、働き方の中身が雇われている状態に近い場合があります。判断の目安になる点はいくつかあります。
- 始業と終業の時間を指定され、断る余地がない
- 作業の内容と手順を細かく指示され、自分の裁量がない
- 道具や材料をすべて相手が用意している
- 報酬が仕事の出来高ではなく、実質的に時間で決まっている
- 他の会社の仕事を受けることが認められていない
これらが当てはまる場合、制度上の扱いが変わる可能性があります。扱いが変わると、保険や労災の責任の所在も変わります。ただし判断は個別の事情によるもので、ここで断定はできません。心当たりのある方は労働基準監督署に相談してください。無料で相談できます。
最初にやる2つのこと
1つ目は、さきほどの表の自分の分を埋めることです。医療はどこ、年金はどこ、労災はどこ。空欄が残ったところが手を打つべき場所です。2つ目は、加入を証明する書類を1か所にまとめておくことです。保険証の写し、年金の納付の記録、労災の加入証明。この3点を車の中か事務所に置いておくだけで、現場で止まる時間がなくなります。
まとめ
3つに分ける、空欄を埋める、証明を3点まとめて持つ。これだけです。制度の内容と現場で求められる書類は変わることがあるため、医療は市区町村の国保担当か組合の支部、年金は年金事務所、労災は労働基準監督署か加入している団体で確認してください。
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