一人親方の営業フォローは何日おきか|メールだけは送ってよい相手が4通りに決まっています

見積を出して10日。返事がない。3通目のメールを書きかけて、送信ボタンの手前で手が止まる。前の2通にも返事はなかった。もう一度送るなら何日空けるべきか、それとも送らないほうがいいのか。

結論からお伝えすると、間隔を何日にするかより先に決まっているものがあります。メールだけは、送ってよい相手が法律で4通りに限られていて、一度「送らないでください」と言われたらそこで止めるのが義務です。電話や訪問にはこの縛りがありません。まず相手を確かめ、そのあとで間隔を考えます。

メールには「何日おき」の前に決まっていることがある

根拠は特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)です。第2条第2号は、この法律がかかる「送信者」を「営利を目的とする団体及び営業を営む場合における個人」と書いています(e-Gov法令検索・2026年9月10日確認)。屋号だけで一人でやっている職人も、営業を営む個人です。会社でないから対象外、ということはありません。

対象になるメールは、同じ第2号で「自己又は他人の営業につき広告又は宣伝を行うための手段として送信をする電子メール」と定められています。ここが実務の分かれ目です。

  • 広告宣伝にあたる:「そろそろいかがですか」「来月なら手が空いています」「値段はもう少し勉強できます」
  • あたらない:頼まれた見積書を送る、工期の確認、請求書の送付

断られたあとの「フォロー」は、たいてい前者です。つまり法律の中に入ります。

特定電子メール法3条1項が定める、広告宣伝メールを送ってよい4通りの相手。同意を通知した相手、名刺で書面通知を受けた相手、取引関係にある元請け、アドレスを公表している会社。

送ってよい相手は、4通りしかありません

第3条第1項は、次に掲げる者以外に特定電子メールを送ってはならない、という書き方をしています。列挙されているのは4つです。

  1. あらかじめ、送ってよいと通知した者(第1号)
  2. 省令の定めるところにより自分のアドレスを通知した者(第2号)
  3. その広告宣伝にかかる営業を営む者と取引関係にある者(第3号)
  4. 省令の定めるところにより自分のアドレスを公表している団体、または営業を営む個人(第4号)

職人の営業で効いてくるのは第2号と第3号です。第2号の「省令の定めるところ」は、同法施行規則第2条が「書面により通知する方法」と定めています。名刺は書面です。現場で名刺を渡してもらえたなら、そのアドレスは第2号に当たります。逆に、名刺をもらっていない相手のアドレスを会社案内や紹介者から手に入れて送るのは、4つのどこにも入りません。

第3号の「取引関係にある者」は、一度でも仕事を請けた元請けです。取引が続いている相手なら、同意を取り直す必要はありません。

第4号は、ホームページに問い合わせ用のアドレスを載せている会社です。ただし施行規則第3条にただし書きがあり、アドレスと並べて「営業のメールはお断りします」と書いてある場合は第4号から外れます。フォームの下に小さく書かれていることがあるので、送る前にその1行を探してください。

断られたら、間隔の話はそこで終わります

第3条第3項は、第1項の4通りに当たる相手からでも、送らないよう求める通知を受けたときは、その意思に反して送ってはならないと定めています。取引関係にある元請けでも、名刺をもらった相手でも同じです。

見落としやすいのは、拒否の伝え方に決まった形式がないことです。施行規則第5条は、拒否の通知の方法を「送信をしないよう求める電子メールアドレスを明らかにして、電子メールの送信その他の任意の方法によって行う方法」としています。配信停止ボタンを押されたときだけではありません。電話口で「そのアドレスにはもう送らないでください」と言われた時点で成立します。

それでも送れる例外は施行規則第6条に3つあり、実務で使えるのは第1号です。契約の申込みをした人、または契約を結んだ人に、その申込み・内容・履行について知らせるメールの中で、広告や宣伝が付随的に行われる場合。頼まれた見積書を送る、工事の日程を知らせる。これは断られたあとでもできます。ただし「付随的に」がつく以上、本文が売り込みになっていれば例外から外れます。

拒否の通知を受けたあとに送れないメールと送れるメールの対比。売り込み文面は送れず、頼まれた見積書・工事の日程・請求書は、広告が付随的な場合に限り送れる。

では、電話や訪問は何日おきがいいのか?

特定電子メール法は「電子メールの送信」についての法律です(第2条第2号)。電話と訪問はこの法律の外にあり、間隔を定めた条文はありません。自分で決めることになります。

材料になるのは、法律ではなく相手の事情です。

  • 見積書に書いた有効期限。期限の前に一度、期限が切れる日に一度。理由のある連絡は「フォロー」に見えません
  • 相手の決裁のまわり方。管理会社は月末にオーナーへ報告する会社が多く、そこを外すと机の上で止まります
  • 断られた理由。金額で負けたなら、次の材料が揃うまで連絡しても中身がありません

負けたあと何を聞くかは一人親方が相見積もりで負けたときに聞くこと|「一番安いところに合わせて」は頼むほうが禁じられていますにまとめています。

送るメールに必ず入れる欄

第4条の表示義務と施行規則第9条を合わせると、広告宣伝のメールに表示しなければならないのは次の5つです。

  1. 送信者の氏名または名称(第4条第1号)
  2. 受信拒否の通知を受けるためのアドレス、またはURL(第4条第2号)
  3. その方法で受信拒否ができる旨(施行規則第9条第1号)。第2号の表示の直前または直後に置きます(施行規則第7条第1項第2号)
  4. 送信者の住所(施行規則第9条第2号)
  5. 苦情・問い合わせを受け付けられる電話番号、アドレスまたはURL(施行規則第9条第3号)

屋号と携帯番号だけの署名では足りません。抜けやすいのは住所と、受信拒否の宛先の2つです。署名を一度作り直せば済むので、先に直すほうが早いです。名刺と併せた整え方は一人親方が名刺とSNSにどこまで手をかけるか|先にやることの順番で扱っています。

なお第3条第2項は、第1号の同意をもらった場合に記録を残す義務を課しています。保存期間は施行規則第4条第2項で、最後に送った日から1か月です。

守らなかったときに何が起きるか

第7条により、総務大臣と内閣総理大臣は、第3条や第4条を守っていないと認めるときに、送信方法の改善に必要な措置を命ずることができます。この措置命令に違反したときの罰則は第34条第2号で、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金。法人の場合は第37条第1号により3,000万円以下の罰金が別に科されます。

一人親方が一度に大量送信することは少なく、いきなり命令が飛んでくる話ではありません。それでも、断られた相手に送り続けるのは法律が正面から禁じている行為です。回数を重ねる価値はありません。

初めての元請けと組む前に確認することは一人親方がはじめての元請けと組む前に確認する5つ|建設業法19条は許可がなくても効くに、連絡の日数を締切から考える発注側の見方は工事のお知らせは何日前に出すか|大家が法律の締切に頼れないのはここですにあります。

条文の当てはめは個別の事情で変わります。自分の送り方が第3条第1項のどれに当たるか判断がつかないときは、総務省の迷惑メール相談窓口や消費者庁の表示対策課など、公的な窓口に確認してください。ここでは一般的な整理としてお読みください。

断られたあと、どのくらいで連絡を戻したら仕事につながったか。地域と職種で差が出るところです。仕事を探している人の掲示板で、実際の間隔を聞いてみてください。

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