一人親方も建退共に入れるのか|10月の強化月間と、必要経費にならない掛金
9月18日、厚生労働省が報道発表を出した。10月の1か月間を、中小企業退職金共済制度の加入促進強化月間にするという内容で、建設業の現場には「建退共現場標識」の掲示を要請する、とも書いてある。現場の門に貼ってあるあの緑の標識のことだ。あれは元請の話で、こちらには関係ない——そう思っている一人親方は多い。
結論からお伝えすると、一人親方も建設業退職金共済(建退共)に入れます。ただし1人では入れず、任意組合を通す形になります。そして自分で掛けた分は必要経費になりません。小規模企業共済と同じつもりで考えると、ここでつまずきます。
10月1日から31日が強化月間
今回の発表によると、実施期間は令和8年10月1日から10月31日までの1か月間。主催は独立行政法人勤労者退職金共済機構、後援は厚生労働省です。期間中は個別相談や説明会が行われ、市役所やハローワークなどへのポスター掲示、事業主団体を通じたパンフレット配布が行われます。令和8年6月末時点で、約55万の中小企業が加入しているとされています。
中小企業退職金共済法2条4項は、特定業種を「建設業その他従業員の相当数が、通常、当該業種に属する多数の事業の間を移動してこれらの事業の事業主に雇用される業種」と定義しています。会社を移りながら働くのが普通だから、会社ごとではなく業界全体で退職金を積む。建退共はその考え方の制度です。

一人親方は、どうやって入るのか?
制度の被共済者は、本来は事業主に雇用される人です。建退共の案内は、大工・左官・とび職の親方のように、あるときは事業主、あるときは技能者の立場に立つ一人親方がいることを認めたうえで、こう説明しています。
一人親方が集まって任意組合をつくり、機構がその規約を認定したとき、その任意組合を事業主とみなし、個々の親方をその任意組合に雇われる労働者とみなすことで制度を適用する、と。
入り方は2つです。新しく任意組合を結成するなら、任意組合認定申請書に規約と業務方法書を添えて都道府県支部へ。既存の任意組合に加わるなら、支部に問い合わせて組合を紹介してもらいます。法人の代表者、あるいは役員報酬を受けている人は加入できません。法人化を考えている人は順番に注意してください(一人親方の年金と将来の備え)。
掛金が必要経費にならない、という落とし穴
ここが一番の分かれ目です。建退共の案内は、税法上の取扱いを2つに分けて書いています。
- 共済契約者に雇用されて掛金納付を受けた場合:通常の従業員と同じ。掛金相当額は一人親方の給与所得には含まれず、納めた側は損金または必要経費になる
- 一人親方として就労し、任意組合から掛金納付を受けた場合:掛金は自ら負担することになるが、事業主が自分に掛けたものとして、必要経費とはならない
掛金が全額所得控除になる制度と混同されがちですが、建退共の自己負担分はそうではありません。節税を目当てに入る制度ではない、ということです。経費にできるものの整理は一人親方の確定申告|経費にできるものにまとめています。
元請に納めてもらえる道もある
建退共の案内には、一人親方として就労した場合でも、元請から掛金の納付について承諾されたときは、元請に対し任意組合から申請することで掛金の納付を受けることができると書かれています。ただし同じ箇所に「必ずしも全ての元請による掛金の納付が保証されているものではありません」とも添えられています。
公共工事を受ける元請にとって、建退共への加入と履行は経営事項審査にも関わる話です。話を持ちかける余地はありますが、確約されたものではありません。

退職金が出る条件と、出ない場合
退職金は、特定の会社をやめたときではなく建設業で働かなくなったときに請求します。掛金納付された日数の合計が12月(21日分を1か月と換算)以上あることが条件です。
掛金日額は320円。そして案内には、掛金納付月数が12月以上24月未満の場合、退職金の額は掛金納付額の3割から5割程度になる、と書かれています。短い期間でやめると元本を割ります。
納付の数え方にも独特の決まりがあります。同一の事業主に雇用された1日の労働時間が8時間を超えたときは、超えた部分につき8時間を単位として1日分を加算する。21時から翌9時まで働いた場合は2日分です。また同じ日に複数の事業主に雇われた場合は、それぞれの事業主が納付します。
都合の悪いことも書いておきます
- ひとりでは入れません。任意組合の結成か、既存組合への加入が前提です
- すでに中退共・清退共・林退共の被共済者になっている人は重複加入できません(掛金を引き継いで移動することは可能です)
- 掛金日額320円で12か月納めた場合の納付額は数万円の規模です。これだけで老後の備えになる金額ではありません
- 税務の取扱いは、一般的には上記のとおりですが、実際の申告では税務署か税理士に確認してください
任意組合の探し方は都道府県支部が窓口です。組合選びで迷ったら、相談・雑談の掲示板で聞いてみてください。
(出典:厚生労働省「10月は中小企業退職金共済制度の加入促進強化月間」令和8年9月18日/独立行政法人勤労者退職金共済機構 建設業退職金共済事業本部の各案内ページ/中小企業退職金共済法はe-Gov法令検索の現行条文。いずれも2026年9月19日時点)


