一人親方の休みは有給ではなく工期から作る|国の基準は雨で止まる日を0.7で見込んでいます
結論からお伝えすると、一人親方に有給休暇は1日も付きません。年次有給休暇は「使用者は(略)労働者に対して」与える制度で(労働基準法39条1項)、雇われていない人には向いていない条文です。ですから休みは、休暇制度からではなく工期の側から作ることになります。そして工期には、国が作って実施を勧告している基準があり、そこには雨で止まる日も猛暑で止まる日も日数として書き込んでよいと書かれています。

休みの出どころは、契約の工期にしかない
勤めているあいだ、休みは3つの条文が守っていました。1日8時間・週40時間の労働時間(労基法32条)、毎週1回の休日(同35条)、そして年次有給休暇(同39条)です。どれも主語は「使用者は」で、独立した日から自分には効かなくなります。雇われている側の休みの線については職人の休みは週にどれくらい取れるのかと現場の昼休みは何分と決まっているのかで扱いました。
代わりに効いてくるのが、請負契約の工期です。建設業法は令和6年の改正で、工期についての条文を2つに分けました。
注文者は、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない。
建設業者は、その請け負う建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない(建設業法19条の5)
1項は頼む側、2項は受ける側です。2項は2025年12月12日に施行された新しい規定で、「安くて早くやります」を売りにすること自体が禁止の対象に入りました。
国の基準は「下請人を含む」と書いてある
「通常必要と認められる期間」は法律に書かれていません。中身は中央建設業審議会が作る基準に置かれています。同審議会は建設工事の工期および労務費に関する基準を作成し、その実施を勧告することができると定められています(建設業法34条2項)。これに基づく「工期に関する基準」(令和2年7月20日決定、令和6年3月27日最終改定)の適用範囲はこうです。
本基準の適用範囲は、公共工事・民間工事を問わず(略)あらゆる建設工事及び発注者・受注者(下請人を含む)を対象とする
下請人を含むと書かれています。一人親方が二次三次の下請でも、この基準の対象です。基準は週休2日についてもはっきり書いています。
建設業に携わる全ての人にとって建設業をより魅力的なものとしていくためには、他産業と同じように、建設業の担い手一人ひとりが週休2日(4週8休)を確保できるようにしていくことが必要である
「担い手一人ひとり」です。労働者に限っていません。
雨と猛暑は、あらかじめ日数で見込んでよい
基準の第2章は、工期全般にわたって考慮すべき事項の1番目に自然要因を置いています。ここに数字が入っています。
- 降雨日・降雪日…国土交通省発注の土木工事では、施工に必要な実日数に雨休率を乗じた日数を「降雨日」として設定する。雨休率は地域ごとの数値のほか0.7を用いることも可
- 猛暑日…夏期の暑さ指数が31以上の場合の不稼働を考慮する。国交省発注の土木工事では、午前8時から午後5時までで暑さ指数が31以上となる時間を集計し、1日8時間として日数換算して作業不能日に算入する
- 河川の出水期における作業制限、寒冷・多雪地域における冬期休止期間
この0.7は工事の種類も規模も違う土木工事の例ですから、内装や設備の工事にそのまま当てはめる数字ではありません。大事なのは「雨で止まる日を工期に入れてよい」という考え方が、国の基準に書いてあることです。雨で止まった日を自分の休みで埋めているなら、それは工期の側で見込まれていなかった、という話になります。暑さ指数そのものの扱いは一人親方は熱中症対策の義務化の対象なのかで扱いました。
休みを増やすと、収入は減るのか?
ここが職人にとっていちばん切実なところです。基準は、この点にも一文を置いています。
建設業における週休2日の確保に当たっては、日給月給制の技能労働者等の処遇水準の確保に十分留意し、十分な工期の確保や交代勤務制の実施等に必要となる経費を請負代金の額に適正に反映した上で(略)適切な賃金水準の確保等を図ることが必要である
「必要となる経費を請負代金の額に適正に反映した上で」です。休みを増やすなら代金に乗せる、という順番が基準に書かれています。見積りを出すときに、稼働日と休みの日を分けて書いておくと、この話ができるようになります。「4週8休で組むと日数がこれだけ増えます」と1行入れるだけで、値段の話が工期の話に変わります。

短すぎる工期は、どこへ持っていくのか
基準の第6章に、行き先が書かれています。
建設業に係る法令違反行為の疑義情報を受け付ける駆け込みホットラインが各地方整備局等に設置されており、締結された請負契約が、本基準等を踏まえて著しく短い工期に該当すると考えられる場合には、発注者、受注者、元請負人、下請負人問わず、適宜相談することが可能である
行政が動く先も条文にあります。著しく短い工期の契約を締結したと判断された場合、許可行政庁は発注者に勧告でき、勧告に従わないときはその旨を公表できます(建設業法19条の6第2項・3項)。
都合の悪いことも書いておきます
この勧告には金額の下限があります。
法第十九条の六第二項の政令で定める金額は、五百万円とする。ただし、当該請負契約に係る建設工事が建築一式工事である場合においては、千五百万円とする(建設業法施行令5条の8)
つまり禁止(19条の5)に金額の下限はないのに、発注者への勧告(19条の6第2項)は500万円以上、建築一式なら1,500万円以上に限られます。一人親方が受ける30万円の内装工事は、禁止の対象ではあっても、この勧告の対象にはなりません。
もうひとつ。19条の5第2項の主語は「建設業者」です。建設業法の「建設業者」は許可を受けて建設業を営む者を指すので、許可を持たない一人親方は、この2項の禁止の対象ではありません(呼び名で変わるものの整理は一人親方と個人事業主は何が違うのかにあります)。逆に、許可を持っている元請が2項に違反した場合は、建設業法28条1項の指示や同条3項の営業停止の対象になり得ます。
そして基準は勧告であって、罰則のある義務ではありません。持ち出せば必ず通るものではありません。それでも、話を「無理です」から「この基準ではこう見込みます」に変えられるだけの重さはあります。頼む側にも工期の遅れは見えています(大家が工期を延ばされたときに聞くこと)。
まとめ
- 年次有給休暇は「使用者は労働者に」の制度(労基法39条1項)。一人親方には付かない
- 著しく短い工期は、頼む側も受ける側も禁止(建設業法19条の5第1項・第2項)。2項は2025年12月12日施行
- 工期に関する基準は「発注者・受注者(下請人を含む)」が対象。週休2日は「担い手一人ひとり」と書かれている
- 雨で止まる日は雨休率0.7、猛暑は暑さ指数31以上を1日8時間換算で作業不能日に入れる例が示されている
- 休みを増やす経費は「請負代金の額に適正に反映した上で」と基準に書かれている
- 相談先は駆け込みホットライン。ただし発注者への勧告は500万円以上(建築一式1,500万円以上)に限られる
個別の契約が「著しく短い工期」に当たるかどうかは、工事の内容と条件で判断が変わります。実際の相談は、各地方整備局の駆け込みホットラインか、許可を受けた都道府県の建設業担当窓口でご確認ください。
工期の交渉をどう切り出したか、実際のやり方は人によって違います。相談・雑談のフォーラムで聞いてみてください。使い方はこちらにまとめてあります。


