未経験が見る職人の求人|社会保険がない会社は、法律で入らなくてよい形がある
結論からお伝えすると、社会保険が「ない」会社が、全部ルール違反というわけではありません。職人の世界でひとくちに社会保険と呼ばれているものは、中身が4つに分かれていて、入る条件が1つずつ違います。会社の形と人数によっては、法律の上で健康保険と厚生年金に入らなくてよい会社が実際にあります。逆に、どんな会社でも例外なく付いていなければおかしいものもあります。
面接で「社保はどうなっていますか」と一括りに聞くと、「うちは日給に乗せてるから」で話が終わり、何が無いのかは分からないままです。分けて聞けば、その場で答えが出ます。

ひとくちに社会保険と言っても、中身は4つある
求人票の「加入保険」の欄に並ぶのは、次の4つです。
- 労災保険……仕事中・通勤中のケガや病気
- 雇用保険……辞めたあとの失業給付、資格を取るときの給付
- 健康保険……病院にかかるときの保険証
- 厚生年金……国民年金に上乗せされる年金
前の2つを労働保険、後ろの2つを社会保険と呼び分けることがあります。混ざると話が通じなくなるので、以下は4つのまま扱います。決まり方の仕組みそのものが違うと考えてください。
健康保険と厚生年金は「適用事業所」かどうかで決まる
健康保険法3条3項と厚生年金保険法6条1項は、どの事業所が対象になるかを、ほぼ同じ形で並べています。要点は2つです。
- 法人の事業所は、常時従業員を使用していれば対象(健康保険法3条3項2号、厚生年金保険法6条1項2号)。株式会社・合同会社なら、社長1人でも該当します
- 個人経営の事業所は、決められた業種で常時5人以上を使っていれば対象(同3項1号、同1項1号)。この業種の並びのロに「土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業」と書かれています
建設の仕事はこのロにそのまま当てはまります。つまり個人経営で、常時使っている従業員が4人以下の会社は、健康保険と厚生年金の強制加入の対象にならないということです。「〇〇工務店」という屋号で親方と職人が数人という形は珍しくありません。そこに社会保険が無いのは、隠しているのではなく条文の外にいる状態です。
対象外でも入る道はあります。健康保険法31条1項と厚生年金保険法6条3項に、厚生労働大臣の認可を受けて適用事業所になれる仕組みがあり、申請には働いている人の2分の1以上の同意が要ります(同31条2項、同6条4項)。4人以下でも入っている会社があるのは、この条文があるからです。
(出典:e-Gov法令検索「健康保険法」3条3項・31条、「厚生年金保険法」6条・2026年8月29日時点の現行条文)
労災と雇用保険は、会社の形に関係ない
ここが分かれ目です。労働者災害補償保険法3条1項は「労働者を使用する事業を適用事業とする」とだけ書いています。人数の条件も、法人か個人かの条件もありません。人を1人でも雇っていれば、労災は付いていなければおかしいということです。
雇用保険法5条1項も「労働者が雇用される事業を適用事業とする」と同じ形です。ただしこちらは働く側に条件があり、6条1号・2号で週の所定労働時間が20時間未満の人と、同じ事業主のもとで31日以上雇われる見込みがない人は対象外とされています。週5日フルタイムで入るなら、この除外には当たりません。
求人票の加入保険欄に労災の名前が無い、あるいは面接で「うちは労災も無い」と言われたなら、それは会社の規模の話ではありません。求人票の欄の読み方は未経験が職人の求人票で見る5項目にまとめています。
(出典:e-Gov法令検索「労働者災害補償保険法」3条、「雇用保険法」5条・6条・2026年8月29日時点の現行条文)
「社会保険がない会社は建設業許可が取れない」は本当か?
よく聞く話ですが、条文を開くと言い方が違います。建設業許可の基準は建設業法7条にあり、その1号を受けた建設業法施行規則7条2号が、次の3つを並べています。
- イ 健康保険法3条3項に規定する適用事業所に該当する全ての営業所について、届書を提出した者であること
- ロ 厚生年金保険法6条1項に規定する適用事業所に該当する全ての営業所について、届書を提出した者であること
- ハ 雇用保険法5条1項に規定する適用事業の事業所に該当する全ての営業所について、届書を提出した者であること
読みどころは「適用事業所に該当する」が頭に付いていることです。イとロは、適用事業所でない営業所には届出のしようがありません。個人経営で従業員4人以下なら、健康保険と厚生年金に入っていなくてもこの基準は満たせるという読み方になります。
一方でハの雇用保険は、上に書いたとおり人を雇えば適用事業です。ここだけは会社の規模で逃げられません。「社会保険がないから許可が無い会社」ではなく、「入るべきものに入っていれば許可は取れる」というのが条文の形です。
(出典:e-Gov法令検索「建設業法」7条、「建設業法施行規則」7条・2026年8月29日時点の現行条文)

面接では、4つに分けて聞く
一括りにしないための聞き方です。順番もこのままで構いません。
- 労災は入っていますか……人を雇う会社なら例外がないところ。ここが濁るなら、他も見たほうがいい
- 雇用保険は入りますか……週20時間以上・31日以上の見込みで働くなら、対象になります
- 健康保険と厚生年金はどうなりますか……無い場合、次を続けて聞きます
- それは法人ですか、個人事業ですか。従業員は何人ですか……ここまで聞けば、条文のどこにいる会社かが分かります
4番まで聞くのは失礼ではありません。健康保険と厚生年金が無ければ、自分で国民健康保険と国民年金に入り、保険料は自分の財布から出ます。日給の額だけで比べると、この差が見えません。どちらを選ぶかは国民健康保険と建設国保、どちらが得か、会社そのものの見分け方は未経験で内装の会社を選ぶときの3点にまとめました。
まとめ
- 健康保険と厚生年金は、法人なら1人でも対象、個人経営なら常時5人以上で対象。建設の事業は条文に名指しで入っている
- 個人経営で4人以下なら強制ではなく、働く人の2分の1以上の同意で任意に入る道がある
- 労災は人を雇えば例外なし。雇用保険も週20時間以上・31日以上の見込みなら対象
- 建設業許可の基準は「適用事業所に該当する営業所について届出をしたか」。雇用保険だけは規模で逃げられない
- 面接では4つに分けて聞く。無い場合は法人か個人か、従業員は何人かまで
保険の加入手続きや、自分の場合にどれが対象になるかは、事業所の実態によって判断が変わります。一般的にはここに書いたとおりですが、実際の適用については年金事務所(健康保険・厚生年金)、労働基準監督署とハローワーク(労災・雇用保険)にご確認ください。許可の要件は都道府県の建設業許可の窓口が窓口になります。
同じところで引っかかった人の話は職人になりたい人の掲示板にも出ています。会社名は出さず、条件だけ書いて聞いてみてください。
※本記事は2026年8月29日時点の情報です。出典:e-Gov法令検索(健康保険法・厚生年金保険法・労働者災害補償保険法・雇用保険法・建設業法・建設業法施行規則、いずれも同日時点の現行条文)。


