見習いが先に覚える安全のルール|8項目は省令で決まっていて、罰金は本人にも来ます

結論からお伝えすると、見習いが先に覚える安全のルールは、先輩の口ぐせではなく省令で8つの項目が決まっています。労働安全衛生規則35条1項です。そして2024年4月1日から、この教育を業種で省略できる仕組みそのものが条文から消えました。

初日に現場ではなく事務所の会議室へ通され、テキストを1冊渡されて1時間ほど座らされる。あれは「新人だから一応やっておくか」ではなく、やらないと会社が50万円以下の罰金を科されうる手続きです。

初日に教わること。労働安全衛生規則35条1項が定める項目のうち、道具と材料の危険性、身につける物の性能、手順、始める前の点検、整理と片付けを並べた図

雇い入れた日に教える項目は、8つに決まっている

根拠は労働安全衛生法59条1項です。「事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない」。この「厚生労働省令」が労働安全衛生規則35条で、1項に次の8号が並んでいます。

  1. 機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること
  2. 安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること
  3. 作業手順に関すること
  4. 作業開始時の点検に関すること
  5. 当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること
  6. 整理、整頓及び清潔の保持に関すること
  7. 事故時等における応急措置及び退避に関すること
  8. 前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項

内装でいえば、1号がカッターと電動工具と接着剤、2号が脚立と保護めがねと防じんマスク、4号が朝いちばんに刃と電源を見る話にあたります。6号の「整理、整頓及び清潔の保持」が安全教育の項目に入っているのは、片付けが人柄の問題ではなく安全の項目だからです。

条文は「雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したとき」と書いています。職種を変わったときにも、もう一度この8項目が必要になります。内装から解体の応援に長く入るような変更は、条文上は「作業内容の変更」です。

「うちの業種は省略できる」は、もう成り立たない

2024年3月31日まで、35条1項には次のただし書きがありました。

「ただし、令第二条第三号に掲げる業種の事業場の労働者については、第一号から第四号までの事項についての教育を省略することができる。」

このただし書きは、2024年4月1日に削除されました(公布は2023年3月14日、e-Gov法令検索で改正前後を突き合わせた2026年9月20日時点の条文)。1号から4号は、機械の危険性・保護具・作業手順・作業開始時の点検です。いちばん現場に近い4つが、業種によっては省かれていたわけです。

ここで通説がひとつずれています。省略できたのは労働安全衛生法施行令2条3号の「その他の業種」で、建設業は同条1号です。つまり内装も電気も設備も、もともと1号から4号を省略できる側にいたことは一度もありません。「昔は簡単だった」という言い方は、建設の現場については事実ではありません。2024年の改正で変わったのは、事務や小売など他業種の扱いのほうです。

省略してよいのは「もう知っている人」だけ

いまの35条にも省略の規定は残っています。2項です。「事業者は、前項各号に掲げる事項の全部又は一部に関し十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該事項についての教育を省略することができる」。

省略の条件は業種ではなくその人がすでに知っているかどうかに置き換わりました。同業から移ってきた経験者なら一部を飛ばせますが、未経験の見習いは条文上どこにも当てはまりません。初日に何も教わらずいきなり現場へ連れて行かれたなら、それは省略ではなく未実施です。

罰金を払うのは誰か。会社は労働安全衛生法59条1項違反、働く人本人は同法26条違反で、いずれも120条1号により50万円以下の罰金になることを左右で比べた図

罰金を払うのは、会社だけではない

ここがいちばん知られていません。労働安全衛生法26条は、こう書いています。

「労働者及び労働者と同一の場所において仕事の作業に従事する労働者以外の作業従事者は、事業者が第二十条から第二十五条まで及び前条第一項の規定に基づき講ずる措置に応じて、必要な事項を守らなければならない。」

名宛人が事業者ではなく労働者本人です。そして同法120条1号は、59条1項違反と並べて26条違反も挙げ、どちらも50万円以下の罰金としています。安全帯を使えという措置が講じられているのに使わない、立入禁止の区画に入る。条文の上では、これは会社の落ち度ではなく本人の違反です。

もうひとつ、26条は「労働者と同一の場所において仕事の作業に従事する労働者以外の作業従事者」も名指ししています。雇われていない一人親方も、この義務の側に入っています。「自分は個人事業主だから会社のルールは関係ない」は通りません。

特別教育とは何が違うのか

混ざりやすいので分けておきます。雇入れ時教育は59条1項で、全員が、雇われた日に受けるものです。特別教育は59条3項で、「危険又は有害な業務」に就くときだけ受けます。対象の業務は労働安全衛生規則36条に列挙されていて、研削といしの取替え、アーク溶接、低圧の充電電路の敷設や修理などが並びます。

費用や順番は見習い職人の特別教育の受け方と費用|玉掛け・高所作業車・足場見習い職人が取る資格の順番|半年・1年目・2年目で何から取るかで扱っています。高さの基準そのものは未経験で高所が苦手な人に向く職種|法律の「高所」は2メートルからにまとめました。

初日に自分で確かめる3つ

  • 8項目のうち、どれを受けたか。会社は教育の記録を残していることが多いので、署名した書類の控えを見せてもらう
  • 自分の作業に特別教育が要るか。要るなら、受けるまでその作業には就けない
  • 保護具を誰が用意するか。2号は「保護具の性能及びこれらの取扱い方法」なので、性能の説明がないまま渡された防じんマスクは、教育が終わっていないのと同じです

何も教わらないまま数日が過ぎたなら、責める前に一度聞いてみてください。「35条の雇入れ時教育、いつやりますか」。この一言が出る見習いを、雑に扱う現場はほとんどありません。ルールを知っていることは、その日から身を守ります。

同じ悩みや、ほかの職種の初日の進み方は相談・雑談の掲示板でも話されています。

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