一人親方が夜や休みの日に呼ばれたら|割増は後から請求せず、先に書いてもらう

木曜の15時に電話が鳴る。「土曜、入れませんか。日中は店を開けているので、閉店後の20時から。そのぶんは見ますから」。そのぶん、がいくらなのかは言われていない。

結論からお伝えすると、請負で受ける一人親方に「夜間は何割増」という法律の定めはありません。割増は、あとから請求するものではなく、受ける前に条件として書いてもらうものです。国が公共建築工事で使っている積算のやり方も、まさにそういう構造になっています。そしてもう一つ、そもそも夜に作業してよい時間かどうかを先に確かめる必要があります。

夜間や休日の仕事を受ける前に決める4つの図。何時から何時までか、その日は法定休日か、いくら増えるかの計算、音の制限はどこから来るかを並べた図解

国の労務単価には、割増が入っていない

国土交通省大臣官房官庁営繕部の「公共建築工事積算基準等資料(令和8年改定)」に、こういう1項があります。公共工事設計労務単価は所定労働時間内8時間当たりの単価であり、時間外、深夜及び休日の労働についての割増賃金は含まれない

そのうえで、時間外と深夜については、施工時期・施工時間が制限され、割増賃金を見込む必要が設計図書に明示された場合に、次の式で労務費を算定するとしています。

労務費(総額)=労務単価+労務単価×K×割増すべき時間数

Kは割増賃金係数で、割増対象賃金比×8分の1×割増係数と定義され、当該年度の労務単価に載っている数値を使います。休日の労働については式が変わり、労務費(総額)=労務単価×K×割増すべき時間数となっています(先頭に「労務単価+」が付きません)。

ここで押さえるのは金額ではなく、「設計図書に明示された場合に」という条件です。国のやり方でも、夜間や休日の割増は、図面や条件書に書かれて初めて積算に乗ります。書かれていないものは、あとから足す性格の費用ではないのです。

休日はどの日を指すのか?

同じ資料は、休日の労働について「緊急時等、やむを得ず法定休日に作業を行い」と限定したうえで、法定休日とは使用者の定める週一回以上、もしくは4週間のうちに4日以上の休日とする、と労働基準法35条を引いています。さらに、やむを得ない場合に該当しない法定休日に作業して別の日を振替休日とした場合は適用しないとも書いています。

「土曜だから休日割増」ではありません。土曜が休日かどうかは、その事業場が何曜日を休みと決めているかで変わります。職人の休みの数え方は一人親方の休みは有給ではなく工期から作る|国の基準は雨で止まる日を0.7で見込んでいますにまとめています。

夜間や休日の割増の決まりがどこにあるかを比べた図。左は人を雇うときの労働基準法37条の割増率、右は請負で受けるときは契約の条件で決まることを並べた図解

人を連れていくなら、割増は法律の話になる

自分ひとりで請けるなら契約の話ですが、応援を「雇う」形にした瞬間に労働基準法37条が効きます。同条は、労働時間を延長し、または休日に労働させた場合、通常の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の割増賃金を支払わなければならないと定めています。延長した時間が1か月について60時間を超えた分は5割以上。さらに4項で、午後10時から午前5時までの労働には2割5分以上の割増が必要です。

自分が労働者側に寄っているかどうかの線引きは、一人親方が常用で入るときの拘束時間と残業|9月1日から監督署の指導が変わるで扱っています。

そもそも夜にやってよい作業かを先に見る

割増の前に確かめることがあります。騒音規制法2条3項は、特定建設作業を政令で定める作業としていて、施行令の別表第2に並ぶのは8種類だけです。くい打機、びょう打機、さく岩機、15キロワット以上の空気圧縮機、一定規模以上のコンクリートプラントとアスファルトプラント、80キロワット以上のバックホウ、70キロワット以上のトラクターショベル、40キロワット以上のブルドーザーです。内装の電動工具は、この8つのどれにも入りません。

特定建設作業に当たる場合は、告示の基準がかかります。別表第1号の区域では午後7時から翌日の午前7時まで禁止、1日10時間まで、連続6日まで、日曜日その他の休日は禁止。第2号の区域では午後10時から午前6時まで禁止、1日14時間まで。敷地の境界線で85デシベルを超えないこと、という基準もあります。振動規制法の別表第2は4種類で、手持式のブレーカーは除かれています

つまり内装工事そのものは、この法律では止まりません。止めるとしたら自治体の条例や、建物の管理規約・使用細則の側です。マンションで夜に音の出る作業ができないのは、法律ではなく規約であることがほとんどです。受ける前に管理会社へ確認してください。

受ける前に決める4つ

  1. 何時から何時までか(作業時間を書面に書いてもらう)
  2. その日は法定休日か(振替の有無も含めて)
  3. 割増の率と対象時間(深夜の起点も)
  4. 音の制限はどこから来るか(条例か、管理規約か)

都合の悪いことも書いておきます

  • ここで引いた積算のやり方は公共建築工事のもので、民間工事に強制されるものではありません。使えるのは「国はこう数えている」という材料としてです
  • 夜間の割増を取れても、拘束が伸びた分だけ翌日を空けることになり、手取りが増えるとは限りません
  • 条例の内容は自治体ごとに違います。一般的には市区町村の環境担当部署が窓口です

夜間や休日の条件の書き方で迷ったら、相談・雑談の掲示板で聞いてみてください。

(出典:国土交通省「公共建築工事積算基準等資料(令和8年改定)」令和8年3月11日国営積第16号/労働基準法・騒音規制法・振動規制法と各施行令はe-Gov法令検索の現行条文/環境省「特定建設作業に伴つて発生する騒音の規制に関する基準」昭和43年厚生省・建設省告示第1号。2026年9月19日時点)

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