一人親方が連絡手段を使い分ける基準|電話・メール・LINEで変わるのは速さではなく義務です

結論からお伝えすると、電話・メール・LINEは速さで選ぶものではありません。どの手段で声をかけ、どの手段で申込みを受けたかによって、付いてくる義務が変わります。ただし、変わるのは相手が個人の施主のときだけです。元請けや管理会社、大家さんが相手なら、ここで書く義務はすべて外れます。

まず、相手を2つに分ける

特定商取引法26条1項1号は、申込みをした人や契約する人が「営業のために若しくは営業として」締結する契約を、訪問販売・通信販売・電話勧誘販売の規定から丸ごと外しています。

  • 外れる相手:元請けの工務店、リフォーム会社、管理会社、賃貸経営をしている大家さん
  • 外れない相手:自分が住んでいる家の工事を頼んでくる個人

職人ハンターを読んでいる方の仕事は、前者が大半だと思います。それでも後者が混ざった瞬間に、連絡手段の選び方が効いてきます。

こちらから電話をかけたときに付く4つ。名乗るのは4項目、二度目はかけられない、書面を2通出す、取り消せるのは8日

こちらから電話をかけて、あとでメールで契約したら

特定商取引法2条3項の「電話勧誘販売」は、電話をかけ(または政令で定める方法で電話をかけさせ)、その電話で契約の勧誘をして、そのあと郵便等によって申込みを受けるか契約を締結することを指します。

ここでいう「郵便等」には、メールやファクス、郵送が入ります。つまり、電話で話をつけて、あとからメールで「これでお願いします」と返してもらった——この形が電話勧誘販売です。

同じ電話でも、そのあと相手の家に行ってその場で契約書を交わせば、それは訪問販売のほうに入ります。こちらは一人親方が初回の問い合わせに返すときに書いたとおりです。

電話は、名乗る項目が1つ多い

訪問販売のほうは3条で、①事業者の氏名または名称 ②勧誘目的である旨 ③商品や役務の種類、の3つを勧誘の前に告げよと定めています。

電話勧誘販売は16条で、これに「その勧誘を行う者の氏名」が足されます。会社名だけでなく、電話をかけている本人の名前を先に名乗れ、ということです。一人親方なら同じ名前になりますが、応援を頼んだ人に電話をかけさせるなら、その人の名前が要ります。

断られたあとに、もう一度かけると

17条は、契約を締結しない旨の意思を表示した人に対して、重ねて勧誘することを禁じています。訪問販売の3条の2第2項と同じ内容です。

「また来月あたり電話してみるか」が、相手によっては違反になります。断られた相手への追いかけ方は一人親方の営業フォローは何日おきかのほうに整理してあります。

こちらから電話をかけた場合と相手から問い合わせが来た場合の比較。前者は電話勧誘販売、後者は通信販売で撤回の規定がない

相手から問い合わせが来て、メールで契約したら

この場合は2条2項の「通信販売」です。定義は、郵便等によって申込みを受けて行う販売や役務の提供のうち、電話勧誘販売に該当しないもの。こちらから電話をかけていないので、通信販売の側に落ちます。

そして通信販売には、クーリング・オフの規定がありません。15条の3の返品制度はありますが、条文をそのまま読むと対象は「商品又は特定権利」で、役務は入っていません。工事は役務です。

「ネットや問い合わせフォームから来た仕事は8日で解約されるのでは」と身構える必要はない、ということです。逆に言えば、相手から先に問い合わせてもらう形は、こちらの手続きがいちばん軽くなります。

書面を出さないと、罰則まで付いています

電話勧誘販売では、申込みを受けたら遅滞なく申込書面を(18条1項)、契約を結んだら契約書面を(19条1項)交付しなければなりません。記載する事項は、役務の種類、対価、支払の時期と方法、提供時期、そして24条1項による申込みの撤回・解除に関する事項などです。

その8日は、19条1項の書面を受け取った日から起算します(18条1項の書面を先に受け取っていればその日から)。書面を渡すまで、8日のカウントは始まりません。出し忘れると期限が切れないまま残ります。

書面を交付しなかったとき、または必要な記載を欠いた書面や虚偽の記載のある書面を交付したときは、71条1号により6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(併科もあり)です。

LINEはどこに入るのか?

手段としては「郵便等」の側に入りますが、それとは別に、LINEのトークは建設業法19条の契約書面にはなりません。この点は一人親方がLINEで受ける仕事で詳しく書いています。

都合の悪いことも書いておきます

  • ここで扱った義務はすべて対個人の話です。元請け相手の連絡手段は、特定商取引法ではなく建設業法と契約の話になります
  • 相手が個人でも、どこまでが「営業のために」に当たるかは事案ごとの判断です。自宅の一部を貸している人などは線が微妙です。迷ったら消費生活センターや弁護士に確かめてください
  • 「電話をかけさせる」方法は政令で定められています。こちらから連絡を促す文面を出すときは、その内容も確かめてください

まとめ|手段を決める順番

相手が事業者なら、速さで選んで構いません。相手が個人なら、①相手から問い合わせてもらう ②こちらから電話をかけたなら、名乗る4項目を先に言い、書面を必ず出す ③断られたらそこで止める——この3つです。

言った言わないを避ける書き方そのものは、発注する側にも同じ悩みがあります。退去時に「聞いていない」と言われないための伝え方は、立場を入れ替えて読むと使えます。

条文は2026年9月15日時点のe-Gov法令検索で確認したものです。個別の判断は専門家にご確認ください。

\ 最新情報をチェック /