一人親方がチラシをまく前に|集合ポストまでの1歩で、10万円以下の罰金の条文に入ります

結論からお伝えすると、チラシで先に確かめるのは紙の中身ではなく、自分の足がどこまで入ったかです。同じ1枚を入れても、戸建ての門の外に立って入れるのと、集合住宅の入口を1歩越えて共用のポストまで進むのとでは、当てはまる条文が変わります。前者は何も起きません。後者は、条件がそろうと10万円以下の罰金が書いてある条文の話になります。

チラシを配る前に見る5点。門の外のポスト、入口を越えた先、入るなの掲示、声をかけられたとき、数字の根拠

紙の中身より先に、足の位置で決まります

ポスティングを「広告の話」だと思って始めると、まず中身を考えます。単価を載せるか、写真を入れるか、何枚刷るか。ところが実際にもめるのは、ほとんどが配っている最中の場所です。中身の話に入る前に、入ってよい線がどこに引かれているかを見ておきます。

線は大きく2本あります。刑法130条と、軽犯罪法1条です。罰の重さがひとけた違うので、分けて覚えておくと迷いません。

入口を越えた先は、刑法130条の話になります

刑法130条(住居侵入等)は、2026年9月12日時点の条文でこう書かれています。

「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金に処する。」

職人が読むときに効くのは、次の3つです。

  • 「人の看守する邸宅」。管理人や管理組合が管理している集合住宅の共用部分は、ここに入る場合があります。誰の家でもない通路だから自由、とはなりません
  • 「要求を受けたにもかかわらず……退去しなかった」。入った時点ではなく、出てくださいと言われてから居座ると、それだけで後段に当たります。声をかけられた瞬間に引き返せば、ここは踏みません
  • 罰は「三年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金」。懲役ではありません。解説記事には「3年以下の懲役」のまま残っているものがありますが、いまの条文は拘禁刑です

掲示があるだけの場所は、軽犯罪法のほうが近い

「チラシお断り」の紙が貼ってあるだけで、誰も出てこない。こちらは軽犯罪法1条32号が近い形です。

「入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入つた者」

罰は1条の柱書で拘留又は科料と決まっています。拘留は1日以上30日未満(刑法16条)、科料は1000円以上1万円未満(刑法17条)です。2条には、情状により刑を免除できること、逆に拘留と科料を併科できることも書かれています。

もっとも、同じ法律の4条には「国民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない」という一文があります。チラシ1枚で即座に何かが起きる、という話ではありません。効くのは、掲示を無視して続けたときです

電柱や塀に貼るのは、投函とは別の号です

ポストに入れるのと、貼るのは別に書かれています。軽犯罪法1条33号は「みだりに他人の家屋その他の工作物にはり札をし、若しくは他人の看板、禁札その他の標示物を取り除き、又はこれらの工作物若しくは標示物を汚した者」です。

現場の帰りに、塀や電柱へ1枚だけ貼っておく。この形は投函とは別の号で書かれている、と覚えておいてください。

チラシの中身にも、条文が1つ当たります

同じ軽犯罪法1条の34号です。「公衆に対して物を販売し、若しくは頒布し、又は役務を提供するにあたり、人を欺き、又は誤解させるような事実を挙げて広告をした者」。

つまり「どこよりも安い」「実績◯◯件」のような数字は、根拠を出せないなら書かないほうが安全です。数字を載せるなら、聞かれたときに出せる形で手元に置いておきます。撮ってある現場写真の枚数と日付があれば、それが一番早い根拠になります。

入口を越えた先は刑法130条、掲示があるだけの場所は軽犯罪法1条32号。罰の重さの比較

では、一人親方はどこなら配れるのか

迷わない順に並べると、こうなります。

  1. 道路から手が届く戸建てのポスト。門扉の外に出ているものが一番はっきりしています
  2. 掲示がなく、入口が開いている集合住宅の共用ポスト。ただし声をかけられたら、その場でやめて引き返します
  3. 管理会社に先に断ってから入る集合住宅。手間はかかりますが、これが一番もめません

逆に、オートロックの内側、「チラシお断り」の掲示がある建物、鍵のかかった門の内側は、枚数を稼ぐ場所ではありません。

刷る前に見る3か所

  1. 配る範囲を地図で先に決める。歩く前に、入れない建物を塗りつぶしておきます
  2. チラシに載せる数字の根拠を、手元にそろえる。34号はここに効きます
  3. 連絡先を、出られる番号にする。現場で出られない番号を載せると、反応があっても取りこぼします

正直に書くと、チラシは反応が出るまで時間がかかります。1回で結果を求めるなら、先に手を付ける先が他にあります。順番は一人親方が元請けに頼らず仕事を取る5つのルート|どれから手を付けるかにまとめました。地図に載る側の準備は一人親方がGoogleマップに載るとどう変わるか|自宅の住所を出さずに登録する方法が近い話です。

頼む側が見積のどこを見ているかを知っておくと、チラシに書く言葉も変わります。発注する側の視点は原状回復の見積りが「一式」で来たら|大家が内訳を請求できる根拠と、自分の義務が分かりやすい形です。

なお、ここに挙げた条文の当てはまり方は、建物の管理の形や掲示のしかたで変わります。判断に迷う建物があれば、管理会社か、必要に応じて弁護士など専門家に確認してください。

配ってみてどうだったか、どの地域でどれくらい戻ってきたか。同じことを試した職人の話は仕事を探している人の掲示板に集まっています。使い方ははじめての方へをご覧ください。

\ 最新情報をチェック /