一人親方の施工実績のまとめ方|1万2000件と書いて実際は1800件、課徴金は2069万円

「施工実績12,000件突破」。自社サイトの「うちの強み」というページにそう書いた会社がありました。消費者庁が調べたところ、実際の契約件数は1800件程度でした。令和8年3月17日、課徴金納付命令。金額は2,069万円です。同じ日、「施工実績10,000件の信頼」と書いた別の会社にも命令が出ています。こちらは469万円でした。

結論からお伝えすると、施工実績は数える書式が先にあり、外に出した瞬間に別の法律がかかります。そして根拠を出すために与えられる時間は、原則15日しかありません。写真の枚数を増やす前に、数え方と出し方を決めておく話です。

施工実績をまとめる4つの順番。工事経歴書の形で1行にする、直前3年の工事施工金額を出す、写真を1行に3枚ひもづける、件数は出さず範囲で書く。

数える書式は、国がすでに決めています

建設業法第6条第1項は、許可申請書に添付する書類として第1号に工事経歴書、第2号に直前3年の各事業年度における工事施工金額を記載した書面を挙げています(e-Gov法令検索・2026年9月10日確認)。さらに第11条第2項で、許可業者はこの2つを毎事業年度経過後4か月以内に提出しなければなりません。毎年です。

許可を取っていない一人親方にこの提出義務はありませんが、書式を借りる価値はあります。工事経歴書は、工事名・発注者・現場の所在地・請負代金の額・工期を1件1行で並べる形になっています。これを普段からつけていれば、許可を取る年に3年分を思い出す作業が消えます。

実績を「件数」でしか持っていない人は、ここでつまずきます。件数は数え方で膨らみます。1棟5部屋を1件と数えるか5件と数えるか、応援で入った現場を自分の実績に入れるか。工事経歴書の形なら、1行が1契約なので迷いません。

誰に見せるかで、かかる法律が変わります

景品表示法第5条は「事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない」と定め、第1号で一般消費者に対し実際のものより著しく優良であると示す表示を禁じています。

この「一般消費者に対し」が線引きです。

  • 元請け・管理会社に渡す営業資料:相手は事業者です。景品表示法第5条の対象ではありません。ただし数字が違えば信用を失いますし、契約後は建設業法の話になります
  • 自分のホームページ・チラシ・Googleビジネスプロフィール:大家さんや施主が見ます。一般消費者向けの表示です。ここに書いた件数と写真が、第5条第1号の対象になります

直請けをやるかどうかで、同じ実績の扱いが変わるということです。管理会社への直接営業と直請けの違いは一人親方が管理会社・不動産会社と直接取引するには|相手を名簿で探す方法と、直請けで変わる3つにまとめています。

根拠を出す時間は原則15日しかありません

景品表示法第7条第2項に、こういう仕組みがあります。内閣総理大臣は、表示が第5条第1号に該当するか判断するため必要があると認めるときは、期間を定めて、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。そして資料を提出しないときは、その表示は第5条第1号に該当する表示とみなす。不実証広告規制と呼ばれるものです。

この「期間」は、同法施行規則(平成28年内閣府令第6号)第7条第2項により原則として求めた日から15日後です。消費者庁が公表している運用指針(不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針)は、延長について次のように書いています。

「新たな又は追加的な試験・調査を実施する必要があるなどの理由は、正当な事由とは認められない」

つまり、「これから数え直します」は通りません。件数を書いた日に根拠がなければ、15日で用意できる保証はありません。ここが写真の話より先に来る理由です。

課徴金はどう計算されるのか?

第8条第1項は、第5条違反のうち優良誤認・有利誤認について、課徴金対象期間に取引をした当該商品または役務の売上額に100分の3を乗じた額の納付を命じなければならない、と定めています。売上ではなく利益に対してではありません。売上額の3%です。

対象期間は違反行為をした期間で、やめた後も最長6か月分が加わり、全体で3年を超えるときは末日から遡って3年間です(第8条第2項)。算定額が150万円未満のときは命じられません(同項ただし書)。3%で150万円になる売上額は5,000万円です。10年以内に確定した課徴金納付命令を受けていると、3%が4.5%になります(第8条第5項)。

冒頭の2,069万円は、この3%を積んだ結果です。一人親方の売上規模なら150万円の下限に届かないことが多く、実際に飛んでくるのは第7条第1項の措置命令です。措置命令は違反行為がすでになくなっていても出せると、同項に明記されています。

2026年8月31日公表の件数を見ておく

消費者庁は2026年8月31日に「景品表示法に基づく法的措置件数の推移及び措置事件の概要(令和8年7月31日現在)」を公表しました。平成27年度から令和8年7月31日までの累計です。

  • 国の措置命令:378件(令和7年度13件、令和8年度は7月末までに4件)
  • 課徴金納付命令:133件
  • 確約計画の認定:9件(令和6年10月1日施行の改正で導入された制度)
  • 都道府県等による措置命令:64件。うち東京17件、大阪14件、埼玉13件

埼玉13件は、都道府県の中で東京・大阪に次ぐ3番目です。県の窓口も動いているので、国の話だから遠いとは言えません。公表資料の件数表示の事案は、いずれも「実際の件数を大きく下回る」という同じ形です。件数を出さずに範囲で書き、根拠を工事経歴書の形で持っておけば、この形にはなりません。

現場写真を載せる前に見る点の対比。建物の外観は著作権法46条により原則そのまま載せられる一方、表札や車のナンバー、顔が分かる人、室内の承諾、加工の程度は載せる前に確かめる。

写真は、建物の権利より先に人と表札を見る

現場写真をサイトに載せるとき、建物そのものは大きな問題になりにくいです。著作権法第10条第1項第5号は建築の著作物を著作物に挙げていますが、同法第46条は屋外に恒常的に設置された美術の著作物または建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず利用することができると定めています。除かれるのは彫刻の増製、建築により複製する場合、屋外に恒常的に設置するための複製、専ら複製物の販売を目的とする場合の4つです。写真に撮って載せるのは、どれにも当たりません。

気をつけるのは別のところです。

  • 表札・郵便物・車のナンバー。特定の個人が分かる情報です
  • 。作業員でも通行人でも、顔が分かる形は避けます
  • 施主の承諾。室内の写真は建物の外観と違い、暮らしの中が写ります。撮る前に一言もらってください

撮り方そのものは一人親方が次の仕事につながる現場写真を撮る手順|同じ位置から3枚、時間は2分に、サイトに載せる前に見る条文は一人親方がホームページを作る前に見る5点|許可がないと「建設業者」とは書けないにあります。写真の加工がどこから不当表示になるかは、発注側の記事募集写真は「実物より明るく」でいい|やっていい撮り方と、不当表示になる加工が同じ景品表示法の話を扱っています。

まとめ方の順番

  1. 工事経歴書の形で1件1行にする。工事名・発注者・所在地・請負代金・工期。建設業法第6条第1項第1号の書式を借りる
  2. 件数は数えず、範囲で書く。数字を出すなら、その根拠が15日で出せる形で手元にあるか確かめる(景品表示法第7条第2項)
  3. 写真は同じ工事に紐付ける。1行に対して着工前・施工中・完成の3枚。表の行と写真がつながっていないと根拠になりません
  4. 相手で出し方を分ける。元請けには工事経歴書の形、一般消費者向けには範囲と写真

景品表示法の当てはめは表示の全体から判断されます。自分の書き方が優良誤認にあたるかどうかは、消費者庁の表示対策課や都道府県の景品表示法の窓口に確認してください。ここでは一般的な整理としてお読みください。

実績を何件と書いているか、根拠をどう持っているか。職種で数え方がまるで違うところです。仕事を探している人の掲示板で、実際の数え方を聞いてみてください。

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