一人親方が営業に持っていく資料は何枚か|相手の帳簿に載る項目をそのまま1枚目に置く
管理会社の応接室。渡したクリアファイルは7枚入っていた。会社案内、施工写真の一覧、資格証の写し、料金表、あいさつ文、地図、それに手書きのチラシ。担当者は最初の1枚をめくって、2枚目で止めた。「これ、いただいていいですか」と言われたのは3枚目の資格証だけで、残りは机の上に置いたまま話が終わった。
結論からお伝えすると、営業資料の枚数は自分の言いたいことでは決まりません。相手が法令で書き残さなければならない項目が決まっているので、その項目に答える紙だけが手元に残ります。数えると、受注前に必要なのは実質2枚です。多く持っていくほど、残る紙の割合は下がります。

渡した紙のうち、相手が残すものは決まっている
建設業法第40条の3は、建設業者に対し、営業所ごとに帳簿を備え、その帳簿と「営業に関する図書」を保存することを義務づけています(e-Gov法令検索・2026年9月10日確認)。義務があるのは許可を受けた建設業者です。許可のない一人親方にこの義務はありませんが、相手の元請けが許可業者なら、あなたのことを帳簿に書きます。
書く中身は建設業法施行規則第26条第1項第4号で、下請契約について次のように決まっています。
- イ:請け負わせた建設工事の名称と工事現場の所在地
- ロ:下請契約を締結した年月日、下請負人の商号または名称および住所、下請負人が建設業者であるときはその者の許可番号
- ハ:完成を確認する検査を完了した年月日と、引渡しを受けた年月日
保存期間は施行規則第28条第1項で、工事の目的物を引き渡したとき(契約に基づく債権債務が消滅した場合はその消滅時)から5年間です。発注者と結んだ住宅の新築工事にかかるものは10年間になります。
つまり、屋号・住所・許可番号は必ず相手の帳簿に転記される項目です。名刺の裏に小さく書いてある会社は、担当者が入力するときに探すことになります。1枚目に大きく並べておくと、その手間がなくなります。
10年残る「営業に関する図書」は、下請け側だと2つだけ
帳簿より長く残るものがあります。施行規則第26条第5項が定める「営業に関する図書」で、保存期間は同規則第28条第2項により引渡しから10年間です。挙がっているのは5つです。
- 完成図(目的物の完成時の状況を表した図)
- 工事内容に関する発注者との打合せ記録。請負契約の当事者が相互に交付したものに限る
- 施工体系図
- 建設業法第20条第1項の材料費等記載見積書を作成したときは、その見積書
- 契約締結の前に必要に応じて作成した、その見積書の内容に関する注文者との打合せ記録
ここで第26条第5項は、誰が何を残すかを3つに分けています。
- 施工体制台帳を作成する元請け:第1号から第5号まで(5つ全部)
- 発注者から直接請け負った建設業者(上記を除く):第1号・第2号・第4号・第5号
- これら以外の建設業者、つまり下請けとして入る側:第4号と第5号だけ
下請け側に10年の保存義務があるのは、材料費等記載見積書と、その見積書についての打合せ記録の2つです。逆に言えば、この2つは相手の側でも10年残ります。営業でつくる紙のうち、いちばん長く生き残るのは会社案内ではなく見積書と、その見積りについて交わしたやりとりの記録だということになります。
第2号に「相互に交付したものに限る」と書いてあるところが実務では効きます。口頭で伝えた条件、こちらから一方的に送っただけのメモは、この図書に入りません。打合せのあとに「今日決まったこと」を1枚にしてメールで送り、相手からも返してもらう。それだけで残る記録になります。見積書そのものの組み立て方は一人親方の見積書の書き方|「一式」を材料費・労務費・必要経費に分ける手順にまとめています。
屋号と住所は、労働基準監督署にも出ていきます
もう一か所、屋号と住所が書かれる場所があります。労働安全衛生規則第664条第1項です。特定元方事業者は、作業の開始後遅滞なく、次の事項を所轄の労働基準監督署長に報告しなければなりません。第2号に「関係請負人の事業の種類並びに当該事業場の名称及び所在地」が入っています。
建設業法の帳簿と、安衛則の報告。制度は別ですが、聞かれる項目は同じです。屋号・住所・やっている工事の種類。この3つを1枚目にまとめておけば、両方で使えます。入場前に元請けから求められる書類一式は一人親方が元請けから求められる書類一式|2026年の法改正で増えた安全衛生の対応にありますが、こちらは受注が決まったあとの話で、営業の段階とは別です。

2枚目に何を書くか?
建設業法第24条の2に、こういう条文があります。「元請負人は、その請け負つた建設工事を施工するために必要な工程の細目、作業方法その他元請負人において定めるべき事項を定めようとするときは、あらかじめ、下請負人の意見をきかなければならない」。
意見を聞く義務が元請け側にある、ということは、聞かれる前提で用意しておくと話が早いということです。2枚目に入れるのは、これに答えられる内容です。
- 1日に進める量。クロスなら何平米、床なら何平米。工程を引くのは相手なので、数字がないと組めません
- 他業者との前後関係。自分の前に終わっていないと入れない工程、自分のあとに来る工程
- 受けない範囲。下地補修まで含むのか、廃材の処分は別か。ここを先に出すと、あとで揉めません
料金表を2枚目にしないのは、条件で段が変わるからです。めくりの有無、下地の状態、処分費の扱いで金額が動くものを1枚の表にすると、そのまま値切りの材料になります。見積前に決めることは一人親方が見積もりを出す前に決める4つ|手間請けか材工か・めくり・下地処理・ゴミ処理で扱っています。
結局、何枚か
受注前に持っていくのは2枚です。
- 1枚目:屋号・氏名・住所・連絡先・許可番号(あれば)・請けられる工事の種類・対応エリア。相手の帳簿と安衛則の報告に転記される項目をそのまま並べる
- 2枚目:1日に進める量、前後の工程、受けない範囲。第24条の2で意見を聞かれる立場だから用意する
資格証の写しと施工実績は、この2枚には入れません。資格証は入場前に求められるもので、受注前に渡しても保管先がありません。施工実績は数字の出し方に別の法律がかかるため、まとめ方を先に決める必要があります。発注側が見積りの内訳をどう見ているかは原状回復の見積りが「一式」で来たら|大家が内訳を請求できる根拠と、自分の義務から読めます。
帳簿と図書の保存義務は、相手が許可業者かどうかで変わります。自分の書類がどこまで求められるかは、都道府県の建設業許可の窓口や所轄の労働基準監督署に確認してください。ここでは一般的な整理としてお読みください。
営業で何枚持っていって、実際に何枚残ったか。会社の規模で答えが違うところです。仕事を探している人の掲示板で、実際に置いてきた紙の枚数を聞いてみてください。


